善玉コレステロール値
- 善玉コレステロールは血管の壁の余分なコレステロールを回収し、動脈硬化を防ぐ脂質の一種です。
- DNA領域rs7323893のT型を持つ人は善玉コレステロールの値が高い傾向にあることが研究で判明しました。
- 有酸素運動・禁煙・適正体重の維持によって善玉コレステロールの値をよくすることができます。
概要
【疾患の概要】 高密度リポタンパクコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれ、心臓や血管の健康に大切な役割を果たします。 善玉コレステロールは、血液の中にある余分なコレステロールを回収して運び出すことで、血管の健康を支えます。
【症状と特徴】 善玉コレステロールの値と、アポリポタンパクA1(善玉コレステロールの粒をつくる主なタンパク質)の量を測ると、血液中の脂質のバランスが分かり、心臓病や脳卒中のリスクを知る手がかりになります。
【治療と注意点】 アポリポタンパクA1は善玉コレステロールの粒の主な成分で、体の中のコレステロールを肝臓へ運ぶのに欠かせません。 そのため、血管にプラーク(コレステロールなどのかたまり)がたまったり、炎症が起きたりするのを防ぎ、動脈硬化を防ぐはたらきに関わっています。 善玉コレステロールが高いと、心臓や血管の病気のリスクが低くなる傾向があります。 これは、善玉コレステロールが血管からコレステロールを回収し、肝臓へ運んで処理するためです。 そのため、善玉コレステロールの値とアポリポタンパクA1の量を測ると、余分なコレステロールを肝臓へ戻すしくみ(逆コレステロール輸送)がどのくらいうまく働いているかを知る手がかりになります。 医療の現場では、これらの数値を知ることが心臓病の治療や予防に役立ちます。 善玉コレステロールを増やし、心臓や血管の状態をよくするための治療を行うときにも、大切な情報になります。 値が高いと体を守る方向にはたらくと考えられ、低いと病気のリスクを高める要因とされるため、生活習慣の見直しなど適切な対策が必要です。
【遺伝的リスク】 モントリオール心臓研究所のLettreらの研究により、善玉コレステロールの値がrs7323893というDNA領域と関係していることが明らかになりました。 このDNA領域にはTT、TC、CCの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、善玉コレステロールの値が高い傾向にあることが分かりました。
善玉コレステロールとは何か
善玉コレステロール(正式には高密度リポタンパクコレステロール)は、血管の壁にたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓へ運ぶコレステロールです。心臓や血管の病気のリスクを下げることに直接つながる、大切な脂質の目安です。
善玉コレステロールの役割とは?
善玉コレステロールは「逆コレステロール輸送」と呼ばれる、余分なコレステロールを肝臓へ戻すしくみを担っています。具体的には、次の3つのはたらきがあります。
- コレステロール回収:血管の壁にたまった余分なコレステロールを回収します。
- 肝臓への輸送:回収したコレステロールを肝臓に運び、胆汁酸(消化を助ける液の成分)として体の外へ出します。
- 動脈硬化を防ぐはたらき:血管にプラーク(コレステロールなどのかたまり)がたまるのや炎症を防ぎ、動脈硬化が進むのをおさえます。
善玉コレステロールの基準値
日本動脈硬化学会が定める基準値は以下のとおりです。
| 区分 | 基準値 | 判定 |
|---|---|---|
| 善玉コレステロールが少ない状態 | 40mg/dL未満 | 動脈硬化のリスクを高める要因 |
| 正常範囲(男性) | 40〜80mg/dL | 正常 |
| 正常範囲(女性) | 40〜90mg/dL | 正常 |
| 善玉コレステロールが高い | 100mg/dL以上 | 体を守る(心臓や血管の病気のリスクが下がる) |
アポリポタンパクA1との関係
アポリポタンパクA1は善玉コレステロールの粒の主成分であり、余分なコレステロールを肝臓へ戻すしくみ(逆コレステロール輸送)がどれだけうまく働くかを左右します。
- アポリポタンパクA1は、善玉コレステロールの粒の形を安定させます。
- アポリポタンパクA1が、血管の壁からコレステロールを引き抜くはたらきを助けます。
- アポリポタンパクA1の量が多いほど、心臓や血管の病気が起こるリスクが低いです。
善玉コレステロールが高いとなぜ良いのか?
善玉コレステロールが高い人ほど、心臓や血管の病気のリスクが下がります。理由は、善玉コレステロールが血管からコレステロールを効率よく回収し、肝臓で処理して体の外へ出すためです。
フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)のデータによると、善玉コレステロールが1mg/dL上がるごとに、冠動脈疾患(心臓に血液を送る血管の病気)のリスクが男性で約2%、女性で約3%下がると報告されています。
善玉コレステロールと悪玉コレステロールの違い
| 比較項目 | 高密度リポタンパクコレステロール | 低密度リポタンパクコレステロール |
|---|---|---|
| 通称 | 善玉コレステロール | 悪玉コレステロール |
| 役割 | コレステロールを回収して運び出す | コレステロールを体の各組織に運びます。 |
| 心臓や血管への影響 | 高いと体を守ります。 | 高いと病気のリスクが上がります。 |
| 理想的な数値 | 40mg/dL以上 | 120mg/dL未満 |
| 改善のための対策 | 有酸素運動・禁煙 | 食事の見直し・コレステロールを下げる薬(スタチン) |
善玉コレステロールを上げる方法
以下の生活習慣が、善玉コレステロールの値をよくするのに効果的です。
- 有酸素運動:1日30分以上のウォーキングやジョギングを週5日以上行うと、善玉コレステロールが平均5〜10%上がります。
- 禁煙:喫煙は善玉コレステロールを下げる大きな原因で、禁煙すると約5mg/dL上がることが期待できます。
- 適正体重の維持:体重を3kg減らすごとに、善玉コレステロールが約1mg/dL上がるという報告があります。
- 食事の改善:オリーブオイル・ナッツ類・青魚(魚の油に含まれるエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸)をとると、善玉コレステロールを上げるのに役立ちます。
遺伝子と善玉コレステロール値の関係
DNA領域rs7323893と善玉コレステロールの値の関係
モントリオール心臓研究所のLettreらの研究により、DNA領域rs7323893が善玉コレステロールの値と関係していることが明らかになりました。
- rs7323893にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型が存在します。
- T型を持つ遺伝子型の人は善玉コレステロールの値が高い傾向にあります。
日本人における遺伝子型分布(rs7323893)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 99.9% | 98.6% |
| TC型 | 0.1%以下 | 1.3% |
| CC型 | 0.1%以下 | 0.1%以下 |
日本人ではTT型が99.9%を占めており、ほとんどの人が善玉コレステロールの値が高い傾向を示すT型を持っています。
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:善玉コレステロール値
善玉コレステロールの値に最も強く影響するDNA領域は、rs7323893です。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- TT
99.9 % - TC
0.1%以下 - CC
0.1%以下
他に、善玉コレステロールの値に関わるDNA領域として、rs77947762があります。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- GG
99.9 % - GA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
他に、善玉コレステロールの値に関わるDNA領域として、rs99780があります。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- CC
44.6 % - CT
44.3 % - TT
11.0 %
他に、善玉コレステロールの値に関わるDNA領域として、rs9987289があります。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- AA
0.1%以下 - AG
1.9 % - GG
98.0 %
他に、善玉コレステロールの値に関わるDNA領域として、rs149615216があります。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- CC
99.9 % - CT
0.1%以下 - TT
0.1%以下
他に、善玉コレステロールの値に関わるDNA領域として、rs41292412があります。 日本での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- CC
99.9 % - CT
0.1%以下 - TT
0.1%以下
検査の根拠
モントリオール心臓研究所のLettreらの研究により、善玉コレステロールの値が遺伝子と関係していることが明らかになりました。人間のDNAには、rs7323893という場所があり、そこにはTとCの2種類のタイプがあります。Tタイプを持つ人は、善玉コレステロールの値が高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図の模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | TET1P1 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | LINC01630 |
| 関連遺伝子 | FADS2 |
| 関連遺伝子 | PPP1R3B-DT |
| 関連遺伝子 | LIPG |
| 関連遺伝子 | MIR3591 |
よくある質問
Q1. 善玉コレステロールとは何ですか?
善玉コレステロール(高密度リポタンパクコレステロール)は、血管の壁にたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓へ運ぶ脂質です。動脈硬化を防ぐのに大切な役割を持ち、心臓や血管の病気のリスクを下げることにつながります。
Q2. 善玉コレステロールの基準値はどのくらいですか?
日本動脈硬化学会の基準では、善玉コレステロールが40mg/dL未満だと「脂質異常症(善玉コレステロールが少ないタイプ)」と診断されます。男性40〜80mg/dL、女性40〜90mg/dLが正常範囲とされています。
Q3. 善玉コレステロールと遺伝子の関係は?
モントリオール心臓研究所のLettreらの研究により、DNA領域rs7323893が善玉コレステロールの値に関連していることが分かりました。T型を持つ遺伝子型の人は、善玉コレステロールの値が高い傾向にあります。
Q4. 善玉コレステロールを上げる方法は?
有酸素運動(1日30分以上のウォーキングやジョギング)を週5日以上行うことで、善玉コレステロールが平均5〜10%上がるとされています。禁煙すると約5mg/dL上がることが期待できます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2011 Feb., Guillaume Lettre, PLoS Genet
- 参考リンク2 : 2020 Mar., Tom G Richardson, PLoS Med
- 参考リンク3 : 2021 Dec., Ruifang Li-Gao, Diabetes
- 参考リンク4 : 2016 Jun., Symen Ligthart, BMC Genomics
- 参考リンク5 : 2021 Oct., Saori Sakaue, Nat Genet
- 参考リンク6 : 2021 Dec., Sarah E Graham, Nature