いぼ痔
概要
1. 概要
いぼ痔(痔核)は、肛門内粘膜下と肛門皮膚の深部にある血管や結合組織など(肛門クッション)が徐々に大きくなることによって出血や痔が出る病気です。内痔核は肛門よりも腸側にでき、外痔核は肛門よりも皮膚側にできます。(参考リンク 1)
有病率は海外で4.4%から13.3%と言われており、慢性便秘や食物繊維の摂取不足などの生活習慣が原因です。支持組織が弱まるために起こるという説が有力で、加齢や遺伝的な素因も報告されています。(参考リンク 1、2)
治療は生活習慣の改善から薬物療法、重症例には外科的治療があります。遺伝子検査を行うことで、ご自身のDNAタイプがどのような傾向をもっているかについて確認することもできます。
2. 理論的根拠
スペイン、オーストリア、スウェーデン、ドイツ、デンマーク、ノルウェーなどの国々に拠点を置く研究チームが、遺伝子データを使用した研究を行いました。
この研究では、痔を持つ患者と健常者含め約100万人の遺伝子データを分析しました。その結果、いくつかの痔と関連するDNA領域が同定されました。
最も相関が高いDNA領域の1つに「rs7994724」があることが分かりました。このDNA領域「rs7994724」には「GG」、「GA」、「AA」という3つの遺伝子型があり、日本人の分布は98.3%が「GG」、1.7%が「GA」、0.0001%が「AA」です。(参考リンク 3)
一部の報告では、Risk Alleleである「A」の遺伝子型の人ほど痔のリスクが高いとされており、「GA」と「AA」の遺伝子型がより高いリスクを持つ可能性があることが示唆されました。
3. 作用機序
DNA領域「rs7994724」は、13番染色体に位置し、遺伝子「DLEU7」の上流に位置するSNVのため、遺伝子「DLEU7」との関わりが指摘されています。
遺伝子「DLEU7」は、タンパク質を作り出す遺伝子ですが、そのタンパク質の働きはまだ解明されていません。
慢性リンパ球性白血病で、遺伝子「DLEU7」の発現が低下することは報告されていますが、その詳しいメカニズムの解明されておらず、痔との関連についてもまだ報告はありません。(参考リンク 4)
しかし、「痔」には血管の拡張や血栓形成、周囲の結合組織や筋肉の機能、神経による腸管蠕動(体外へ便やガスを排出するといった自立的な腸管の動きのこと)などといったたくさんの要因が関与しているため、遺伝子「DLEU7」も何らかの形で関与している可能性があり、今後の解明が期待されます。
現在、13番染色体に存在するDNA領域「rs7994724」は、「痔」のリスクに関係し、注目されている一塩基多型の一つです。
遺伝子領域rs7994724において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA0.02%
- AG2.84%
- GG97.14%
遺伝子領域rs7994724において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA11.79%
- AG45.10%
- GG43.11%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:いぼ痔
体表的なDNA領域:いぼ痔
いぼ痔 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs7994724です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
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AA
0.0% -
AG
2.8% -
GG
97.1%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | DLEU1 |
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参考文献
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関連遺伝子 DLEU1
- 参考リンク : 2021 Apr、Tenghao Zhengと研究グループがGut に発表したGenome-wide analysis of 944 133 individuals provides insights into the etiology of haemorrhoidal diseaseという研究によるといぼ痔 に関連するrs7994724の関連性が認められました。