高コレステロール血症(脂質異常症)
- 高コレステロール血症(脂質異常症)は血液中のコレステロール値が240mg/dL以上の状態で、動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中のリスクを高めます。
- DNA領域rs151330264のT型変異を持つ人は病気になるリスクが高い傾向にあることがミシガン大学の研究で判明しました。
- 適切な食事・運動・薬による治療により、血液中のコレステロール値を管理し、心臓や血管の病気のリスクを減らすことが可能です。
概要
【疾患の概要】 高コレステロール血症は、血液の中のコレステロールの量が多すぎる状態です。
【主な特徴と影響】 コレステロールは、細胞の膜やホルモンを作るのに必要な脂質(あぶら)です。しかし、多すぎると体にさまざまな問題を起こします。
【治療と注意点】 高コレステロール血症は、遺伝子の影響や、食生活、運動不足、肥満などの生活習慣によって起こります。 ふつうは体に目立った症状が出ないため、血液検査で総コレステロール値が240ミリグラム/デシリットル(mg/dL)以上のときに見つかります。 高コレステロール血症には、「悪玉」コレステロールが多い場合と、「善玉」コレステロールが少ない場合があります。 このバランスがくずれると、動脈の壁にコレステロールのかたまり(プラーク)ができて動脈硬化が起こり、心臓発作や脳卒中のリスクが高まります。 コレステロール値がとても高い人では、目の周りやひじ、ひざ、腱などに、脂肪がたまってできる黄色いできもの(黄色腫)が現れることがあります。 早く見つけて、食事や運動、必要なときは薬で治療することが大切です。
【遺伝的リスク】 ミシガン大学のGrahamらの研究により、高コレステロール血症(脂質異常症)になるリスクがrs151330264というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはAA,AT,TTの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、高コレステロール血症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
高コレステロール血症(脂質異常症)とは何か
高コレステロール血症(脂質異常症)は、血液中のコレステロール値が基準値を超えて高くなっている病気です。総コレステロール値が240mg/dL以上で診断されます(1)。
高コレステロール血症の原因とメカニズム
コレステロールは、細胞の膜やホルモンを作るのに欠かせない脂質(あぶら)ですが、多すぎると体にさまざまな問題を起こします。
- 遺伝子の影響:家族性高コレステロール血症などの遺伝する病気、DNA領域rs151330264のT型変異です。
- 食生活:飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・コレステロールのとりすぎ
- 運動不足:善玉コレステロールを減らしてしまいます。
- 肥満:悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らしやすくします。
- 加齢・性別:閉経後の女性はコレステロール値が上がりやすい傾向があります。
高コレステロール血症の主な症状
高コレステロール血症は自覚症状がほとんどない「サイレントキラー(静かな殺し屋)」で、血液検査で見つかることがほとんどです。
- ふつうは体に目立った症状が出ません(無症状)。
- とても高い値の場合、黄色腫(目の周り・ひじ・ひざ・腱に脂肪がたまってできる黄色いできもの)が出ます。
- 角膜輪(黒目のまわりに白い輪ができる)
- 進むと動脈硬化によって胸の痛みや息切れが起こります。
悪玉コレステロールと善玉コレステロールの違い
| 比較項目 | 悪玉コレステロール | 善玉コレステロール |
|---|---|---|
| 役割 | 肝臓から全身へコレステロールを運びます。 | 余分なコレステロールを肝臓に回収します。 |
| 基準値 | 140mg/dL未満が正常 | 40mg/dL以上が正常 |
| 異常なときのリスク | 多いと動脈硬化のリスクが上がります。 | 少ないと動脈硬化のリスクが上がります。 |
| 動脈への影響 | かたまり(プラーク)ができ、血管が狭くなります。 | かたまり(プラーク)を除去し、血管を守ります。 |
| 改善方法 | 食事制限・スタチン系の薬 | 有酸素運動・禁煙 |
高コレステロール血症で起こりやすい病気
悪玉コレステロールが増えると、動脈の壁にコレステロールのかたまり(プラーク)ができ、次のような病気(合併症)を起こします。
- 動脈硬化:血管の壁が硬く、狭くなります。
- 心筋梗塞:心臓の血管(冠動脈)がつまり、心臓の筋肉が死んでしまいます。
- 脳卒中:脳の血管がつまったり、破れたりします。
- 末梢動脈疾患:手足の血流が悪くなります。
高コレステロール血症の予防と治療
早期発見と生活習慣の改善が治療の基本です。
- 食事療法:飽和脂肪酸を減らし、食物繊維や不飽和脂肪酸を積極的にとります。
- 運動療法:有酸素運動を週150分以上行います。
- 体重管理:体格指数(体重と身長から計算する肥満の目安)25未満の適正体重を保ちます。
- 禁煙:たばこは善玉コレステロールを減らします。
- 薬物療法:スタチン系の薬・エゼチミブなどの薬による治療
影響するおもな要因
コレステロール値は、次のような要因によって人それぞれ違います。
- 遺伝子の影響(DNA領域rs151330264などの遺伝子型)
- 食事内容(脂質の種類と量)
- 運動習慣の有無
- 体重・体格指数
- 年齢・性別
遺伝子と高コレステロール血症の関連
DNA領域rs151330264と病気のリスクの関係
ミシガン大学のGrahamらの研究(1)により、DNA領域rs151330264が高コレステロール血症(脂質異常症)になるリスクと関係していることが分かりました。
- rs151330264にはAA・AT・TTの3つの遺伝子型が存在します。
- T型変異を持つ遺伝子型(AT型・TT型)の人は、高コレステロール血症のリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs151330264)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| AA型 | 99.9% | 98.7% |
| AT型 | 0.1%以下 | 1.2% |
| TT型 | 0.1%以下 | 0.1%以下 |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:高コレステロール血症(脂質異常症)
高コレステロール血症(脂質異常症)に最も強く影響するDNA領域は、rs151330264です。 日本での遺伝子型ごとの人の割合は下記のとおりです。
- AA
99.9 % - AT
0.1%以下 - TT
0.1%以下
他に、高コレステロール血症(脂質異常症)に関わるDNA領域はrs7570971があります。 日本での遺伝子型ごとの人の割合は下記のとおりです。
- CC
0.1%以下 - CA
0.1%以下 - AA
99.9 %
他に、高コレステロール血症(脂質異常症)に関わるDNA領域はrs174570があります。 日本での遺伝子型ごとの人の割合は下記のとおりです。
- CC
44.6 % - CT
44.3 % - TT
11.0 %
他に、高コレステロール血症(脂質異常症)に関わるDNA領域はrs9987289があります。 日本での遺伝子型ごとの人の割合は下記のとおりです。
- AA
0.1%以下 - AG
1.9 % - GG
98.0 %
他に、高コレステロール血症(脂質異常症)に関わるDNA領域はrs149615216があります。 日本での遺伝子型ごとの人の割合は下記のとおりです。
- CC
99.9 % - CT
0.1%以下 - TT
0.1%以下
他に、高コレステロール血症(脂質異常症)に関わるDNA領域はrs1805081があります。 日本での遺伝子型ごとの人の割合は下記のとおりです。
- TT
54.8 % - TC
38.4 % - CC
6.7 %
他に、高コレステロール血症(脂質異常症)に関わるDNA領域はrs306890があります。 日本での遺伝子型ごとの人の割合は下記のとおりです。
- TT
58.3 % - TC
36.0 % - CC
5.5 %
検査の根拠
ミシガン大学のGrahamらの研究により、高コレステロール血症(脂質異常症)になるリスクが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs151330264という場所があり、そこにはAとTの2種類のタイプがあります。Tタイプを持つ人は、高コレステロール血症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | N4BP2L1 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | RAB3GAP1 |
| 関連遺伝子 | FADS2 |
| 関連遺伝子 | PPP1R3B-DT |
| 関連遺伝子 | LIPG |
| 関連遺伝子 | NPC1 |
| 関連遺伝子 | SPRY3 |
よくある質問
Q1. 高コレステロール血症(脂質異常症)とは何ですか?
高コレステロール血症(脂質異常症)は、血液中のコレステロール値が基準値(総コレステロール240mg/dL以上)を超えた状態です。悪玉コレステロールが増えたり、善玉コレステロールが減ったりすると、動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中のリスクが高まります(1)。
Q2. 高コレステロール血症の原因は何ですか?
おもな原因は遺伝子の影響、食生活(飽和脂肪酸・トランス脂肪酸のとりすぎ)、運動不足、肥満です。遺伝子の影響としては、DNA領域rs151330264のT型変異がリスクに関わっています。家族性高コレステロール血症は、親から子へ遺伝しやすい病気です(1)。
Q3. 遺伝子検査で高コレステロール血症のリスクは分かりますか?
DNA領域rs151330264の遺伝子型を調べることで、高コレステロール血症になりやすいかどうかの傾向を知ることができます。T型変異を持つ遺伝子型(AT型・TT型)の人はリスクが高い傾向にあることが、ミシガン大学のGrahamらの研究で分かっています(1)。
Q4. 高コレステロール血症を予防する方法はありますか?
食事の見直し(飽和脂肪酸を減らす・食物繊維をとる)、有酸素運動(週150分以上)、適正体重を保つこと、禁煙が効果的です。必要なときは、スタチン系の薬などによる治療も一緒に行います。早めに血液検査で見つけ、続けて管理することが大切です。
Q5. 高コレステロール血症と動脈硬化の関係は?
悪玉コレステロールが多くなりすぎると動脈の壁にコレステロールのかたまり(プラーク)が蓄積し、動脈硬化を起こします。動脈硬化が進むと血管が狭くなったりつまったりして、心筋梗塞や脳卒中など、心臓や血管の重い病気になるリスクが高まります。
参考文献
- 参考リンク1 : 2021 Dec., Sarah E Graham, Nature
- 参考リンク2 : 2010 Aug., Tanya M Teslovich, Nature
- 参考リンク3 : 2018 Nov., Derek Klarin, Nat Genet
- 参考リンク4 : 2009 Jan., Yurii S Aulchenko, Nat Genet
- 参考リンク5 : 2017 May., Cassandra N Spracklen, Hum Mol Genet
- 参考リンク6 : 2015 Jun., Ida Surakka, Nat Genet
- 参考リンク7 : 2011 Sep., Camilla Helene Sandholt, PLoS One
- 参考リンク8 : 2018 Mar., Thomas J Hoffmann, Nat Genet