甲状腺機能亢進症
- 甲状腺機能亢進症はチロキシンが出すぎることで代謝が異常に活発になるホルモンの病気で、頻脈・体重減少・汗が多く出るなどの症状を起こします。
- DNA領域rs225014のT型を持つ人は発症リスクが高い傾向にあることがグライフスヴァルト大学の研究で判明しました。
- 抗甲状腺薬・放射性ヨウ素療法・外科手術など複数の治療法があり、早く見つけて適切に治療すれば症状をおさえることができます。
概要
【疾患の概要】 甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの一つであるチロキシンが出すぎることで起こる、ホルモンの病気(内分泌疾患)です。 この病気では、体の代謝(エネルギーを使うはたらき)が活発になりすぎて、さまざまな症状が現れます。
【症状と特徴】 主な症状は、心拍数が増える(頻脈)、体重が減る、食欲が増える、神経が過敏になる、手が震えるなどです。 また、暑さに弱くなり、汗を多くかく傾向も見られます。 特に、首の前が腫れて見える甲状腺腫も、この病気の特徴的な症状の一つです。 チロキシンが出すぎると、使うエネルギーが増え、体のはたらきが速くなります。 その影響で骨がこわれやすくなり、骨粗鬆症(骨がもろくなる病気)のリスクが高まったり、女性では月経不順が起こったりすることもあります。 心臓にも大きな影響があり、不整脈や心房細動(心臓のリズムが乱れる病気)などの合併症が起こる可能性があります。
【治療と注意点】 甲状腺機能亢進症は、毎日の生活や体全体の健康に大きな影響を与えるため、チロキシンの量を測って早めに見つけることが大切です。 治療では、チロキシンが作られすぎるのをおさえ、体の代謝を整えて、全身への影響を減らすことを目指します。
【遺伝的リスク】 グライフスヴァルト大学医学部のTeumerらの研究により、甲状腺機能亢進症へのかかりやすさが、rs225014というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはTT,TC,CCの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、甲状腺機能亢進症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
甲状腺機能亢進症とは何か
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの一つであるチロキシンが出すぎることで、体の代謝(エネルギーを使うはたらき)が異常に活発になる、ホルモンの病気(内分泌疾患)です。一般の人の中でこの病気がある人の割合は約1.2%とされ、女性は男性の約5〜10倍発症しやすいとされています。
甲状腺機能亢進症の原因とメカニズム
チロキシンが出すぎると、使うエネルギーが増え、体のはたらき全体が速くなります。主な原因は以下のとおりです。
- バセドウ病(グレーブス病):全体の約60〜80%を占める自己免疫疾患(免疫が自分の体を攻撃してしまう病気)で、免疫が誤って作る抗体が甲状腺を刺激します。
- 機能性甲状腺結節:甲状腺の一部が勝手にホルモンを作ります。
- 甲状腺炎:炎症によって、たまっていたホルモンが一時的に出ます。
- 遺伝子の影響:DNA領域rs225014のT型がリスクに関係しています。
甲状腺機能亢進症の主な症状
症状はチロキシンが出すぎることによる代謝の高まりが原因で、以下が代表的です。
- 心拍数の増加(頻脈)・動悸
- 体重減少(食欲が増えているのに)
- 汗が多い・暑さに弱いです。
- 手指の震え・神経が過敏になります。
- 甲状腺腫(首の腫れ)
- 女性の月経不順
甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の違い
| 比較項目 | 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺機能低下症 |
|---|---|---|
| ホルモン | 過剰分泌 | 分泌不足 |
| 代謝 | 活発(速い) | 低下(ゆっくり) |
| 体重 | 減少 | 増加 |
| 心拍数 | 頻脈(増える) | 徐脈(減る) |
| 体温感覚 | 暑がり・汗が多いです。 | 寒がり・冷え |
| 精神状態 | 不安・イライラ | 気分の落ち込み・だるさ |
甲状腺機能亢進症の合併症リスク
きちんと治療しないと、以下の合併症を起こす可能性があります。
- 不整脈・心房細動(心臓に負担がかかる)
- 骨粗鬆症(骨がこわれやすくなる)
- 甲状腺クリーゼ(命に関わる急な悪化、死亡率約10〜30%)
- 眼球突出(バセドウ病による目の症状)
治療法
以下の3つの治療法が主に用いられます。
- 抗甲状腺薬:メチマゾール・プロピルチオウラシル(ホルモンが作られるのをおさえる)です。
- 放射性ヨウ素療法:甲状腺の細胞をねらってこわす
- 外科手術:甲状腺の全摘出または部分摘出です。
遺伝子と甲状腺機能亢進症の関連
DNA領域rs225014と発症リスクの関係
グライフスヴァルト大学医学部のTeumerらの研究により、DNA領域rs225014が甲状腺機能亢進症へのかかりやすさと関係していることが分かりました。
- rs225014にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型が存在します。
- T型を持つ遺伝子型の人は、甲状腺機能亢進症のリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs225014)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 33.2% | 39.3% |
| TC型 | 48.8% | 46.7% |
| CC型 | 17.8% | 13.8% |
検査の理論的な根拠
代表的なDNA領域:甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症に最も強く影響するDNA領域は、rs225014です。 日本人での遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- TT
33.2 % - TC
48.8 % - CC
17.8 %
検査の根拠
グライフスヴァルト大学医学部のTeumerらの研究により、甲状腺機能亢進症へのかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人の遺伝情報全体(ゲノム)の中には、rs225014という場所があり、そこにはTとCの2種類のタイプがあります。Tタイプを持つ人は、甲状腺機能亢進症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | DIO2 |
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よくある質問
Q1. 甲状腺機能亢進症とは何ですか?
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモン(チロキシン)が出すぎることで、体の代謝が異常に活発になるホルモンの病気(内分泌疾患)です。頻脈・体重減少・汗が多く出る・手の震えなどの症状を起こし、女性は男性より約5〜10倍発症しやすい病気です。
Q2. 甲状腺機能亢進症の原因は何ですか?
最も一般的な原因はバセドウ病(グレーブス病)で、全体の約60〜80%を占めます。その他、機能性甲状腺結節(ホルモンを勝手に作るしこり)や甲状腺炎も原因となります。遺伝子の影響としてDNA領域rs225014のT型が発症リスクに関係しています。
Q3. 甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の違いは?
甲状腺機能亢進症はホルモン過剰で代謝が活発になりすぎ、体重減少・頻脈・発汗が起こります。一方、甲状腺機能低下症はホルモン不足で代謝が低下し、体重増加・だるさ・寒がりの症状が現れます。
Q4. 遺伝子検査で甲状腺機能亢進症のリスクは分かりますか?
DNA領域rs225014の遺伝子型を調べることで、甲状腺機能亢進症へのかかりやすさの傾向を知ることができます。T型を持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが、Teumerらの研究で分かっています。
Q5. 甲状腺機能亢進症の治療法は?
治療は抗甲状腺薬(メチマゾール、プロピルチオウラシル)による薬の治療が、最初に選ばれる方法です。他に放射性ヨウ素療法や外科的甲状腺摘出術があり、症状の重さや原因に合わせて選ばれます。