seeDNAロゴアイコン 高トリグリセリド血症

概要

1. 概要

脂質の代謝に問題がある場合、遺伝子による影響も指摘され、「原発性脂質異常症」と呼ばれ、頻度は約100人あたり1~2人程度と考えられています。
「脂質異常症」を放置すると、血管の壁に脂肪分がたまり、動脈硬化につながり、血管がかたくなると脳梗塞や心筋梗塞などのリスクがあるため、治療が必要です。
治療は、まずは動脈硬化の原因となる脂質を減らした食事に変更することや、運動によって余分な脂肪分や糖分を消費することから始めます。それでも改善が得られない場合は、薬剤治療を行います。日々の習慣や早期からの治療によって、「脂質異常症」は改善が見込め、脳梗塞や心筋梗塞といった死に関わる病気のリスクを減らすことができます。
そのため、遺伝子検査によりご自身の遺伝子タイプを調べて、脂質異常症の中でも血液中にトリグリセリド(中性脂肪)が多く存在する「高トリグリセリド血症」の発症リスクを知ることは、早期発見・早期治療に役立つことが期待されます。

2. 理論的根拠

高トリグリセリド血症は、メキシコ人の間でよく見られる疾患であり、国のデータによると31.5%が患っています。これに対し、アメリカ、メキシコ、フィンランドの研究チームは、複数の遺伝子データを用いて高トリグリセリド血症の遺伝子研究を行いました。6,073人の参加者から4,400人を選別し、2つのDNA解析を行いました。
1つ目のDNA解析では、563,599個の遺伝子多型を対象に高トリグリセリド血症と関連の強い遺伝子の型について解析が行われました。2つ目のDNA解析では、1つ目のDNA解析で高トリグリセリド血症と関連が強いと考えられた1,326個の遺伝子の型について、別の解析手法を用いて再度解析が行われました。
その結果、DNA領域「rs9949617」の遺伝子型が高トリグリセリド血症と関連があることが示されました。(参考リンク 1)
DNA領域「rs9949617」には、「CC型」、「CT型」、「TT型」の3つの遺伝子型があり、日本人の遺伝子タイプは「CC型」が56.6%、「CT型」が40.7%、「TT型」が2.7%となっています。(参考リンク 2,3)報告によると、Risk Alleleである「T」が高トリグリセリド血症のリスクがやや高いため、日本人の「CT型」や「TT型」は比較的リスクが高いとされています。
脂質異常症は、血清コレステロール値が220mg/dl以上、あるいは血清トリグリセリド(中性脂肪)値が150mg/dl以上の場合に診断されます。脂質異常症では、血中脂質やタンパク質が多くなるため、脂質の代謝に問題があることや、他の原因や疾患に影響を受けたりすることもあります。

3. 作用機序

DNA領域「rs9949617」は、18番染色体上に位置しており、「TMEM241」という遺伝子と関連していることが指摘されています。この「TMEM241」遺伝子は、細胞内の1つのゴルジ体に存在し、糖を含む物質を生成する役割があり、哺乳類の生体システムに必要な糖ヌクレオチド(糖分の一種)の輸送にも関わっていると考えられています。(参考リンク 4)
ただし、「TMEM241」が脂質異常症にどのように関わるかについては、正確なメカニズムが明らかにされていません。しかしながら、細胞内のゴルジ体は糖タンパク質や脂質の生成に関わっていることから、糖ヌクレオチドの輸送に関わる「TMEM241」が不調となった場合、脂質の一種である「トリグリセリド」の制御がうまく機能しなくなる可能性があると考えられています。
このことから、18番染色体上のDNA領域「rs9949617」は、脂質異常症のリスクに関連する一塩基多型の1つとして注目されています。

遺伝子領域rs9949617において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

59.91% 34.98% 5.11%
  • CC59.91%
  • CT34.98%
  • TT5.11%

遺伝子領域rs9949617において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

68.18% 28.78% 3.04%
  • CC68.18%
  • CT28.78%
  • TT3.04%

遺伝子領域rs964184において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

10.38% 43.67% 45.95%
  • GG10.38%
  • GC43.67%
  • CC45.95%

遺伝子領域rs964184において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

2.20% 25.27% 72.53%
  • GG2.20%
  • GC25.27%
  • CC72.53%

遺伝子領域rs306890において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

58.38% 36.05% 5.57%
  • TT58.38%
  • TC36.05%
  • CC5.57%

遺伝子領域rs306890において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

52.88% 39.68% 7.44%
  • TT52.88%
  • TC39.68%
  • CC7.44%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:高トリグリセリド血症

体表的なDNA領域:高トリグリセリド血症

高トリグリセリド血症 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs9949617です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • CC

    59.9
    %
  • CT

    35.0
    %
  • TT

    5.1
    %

他に、高トリグリセリド血症に関わる遺伝子領域はrs964184があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです

  • GG

    10.4
    %
  • GC

    43.7
    %
  • CC

    46.0
    %

他に、高トリグリセリド血症に関わる遺伝子領域はrs306890があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです

  • TT

    58.4
    %
  • TC

    36.1
    %
  • CC

    5.6
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 TMEM241
関連遺伝子 ZPR1
関連遺伝子 SPRY3

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 TMEM241
  • 参考リンク : 2013 May、Daphna Weissglas-Volkovと研究グループがJ Med Genet に発表したGenomic study in Mexicans identifies a new locus for triglycerides and refines European lipid lociという研究によると高トリグリセリド血症 に関連するrs9949617の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 ZPR1
  • 参考リンク : 2014 Jun、Arthur Koと研究グループがNat Commun に発表したAmerindian-specific regions under positive selection harbour new lipid variants in Latinosという研究によると高トリグリセリド血症 に関連するrs964184の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 SPRY3
  • 参考リンク : 2018 Mar、Thomas J Hoffmannと研究グループがNat Genet に発表したA large electronic-health-record-based genome-wide study of serum lipidsという研究によると高トリグリセリド血症 に関連するrs306890の関連性が認められました。