seeDNAロゴアイコン 尿道下裂

概要

1. 概要

「尿道下裂」とは、陰茎の根本にある尿の出口が異常な位置にある先天性奇形の病気です。この病気にかかると、排尿時に尿が飛び散ることや、男性器が曲がることで膣内射精がうまくいかなくなることがあります。
欧米のデータによると、男児300人に1人程度が発症するとされています。遺伝性については明らかではありませんが、一部の患者では家族にも発症が見られることが報告されており、遺伝性の可能性もあります。
治療には、12歳で手術を行い、排尿や性生活が問題なく行えるようにすることを目的としています。
遺伝子検査により、ご自身の遺伝子タイプを調べて、「尿道下裂」の発症リスクを知ることは、早期対策に役立つことが期待されます。

2. 理論的根拠

オランダの研究チームは、ヨーロッパ系の前方および中間開口型の「尿道下裂」の患者436人と健常者のDNAを網羅的に解析したところ、尿道下裂の患者に多い一塩基多型(SNP)があることが分かりました。
その中のひとつがDNA領域「rs1934179」であり、X染色体に存在する遺伝子「DGKK」に関わる位置に存在していることが確認されました。(参考リンク1)
このDNA領域「rs1934179」は、白人の尿道下裂の患者166人と健常人のDNAデータの比較でも同様に、患者群に多い変異でした。(参考リンク2)
また、「尿道下裂」の患者466人と健常人の中国人のデータ402人でも同様の傾向があり、さらに中等症や重症の患者との関連も認めました。(参考リンク3)
DNA領域「rs1934179」には、「GG型」、「GA型」、「AA型」と3つの遺伝子型があり、日本人の遺伝子タイプは、「GG型」が54.3%、「GA型」が38.7%、「AA型」が6.9%であったことが分かりました。(参考リンク4)
また、このオランダの研究チームのサンプルでは、DNA領域「rs1934179」において、必ずしも発症するわけではないですが、Risk AlleleであるAを持つ「AA型」と「GA型」は、「尿道下裂」を発症しやすい傾向があることが示唆されました。
このように、尿道下裂は遺伝性の可能性も疑われており、「rs1934179」も影響を及ぼすDNA領域のひとつであることが示唆されています。

3. 作用機序

「rs1934179」というDNA領域は、X染色体上に存在し、遺伝子「DGKK」の発現に影響を与える領域に位置しています。
「DGKK」は、脂質のシグナル伝達に関与するジアシルグリセロールキナーゼという酵素を生成する遺伝子であり、その機能はまだ完全には解明されていません。
しかし、「DGKK」は精巣や胎盤で多く発現していることが知られており、複数の遺伝子解析の論文で「DGKK」と尿道下裂の関係性が報告されています。(参考リンク5)
尿道下裂の患者のDNAデータからは、「DGKK」の発現に関わる複数の一塩基多型(SNP)が確認されており、「rs1934179」は尿道下裂と関係があると考えられるDNA領域の1つです。
以上のように、DNA領域「rs1934179」はX番染色体上に存在し、「尿道下裂」のリスクに関係しており、注目を集めている一塩基多型の1つです。

遺伝子領域rs1934179において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

56.25% 37.50% 6.25%
  • GG56.25%
  • GA37.50%
  • AA6.25%

遺伝子領域rs1934179において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

42.89% 45.20% 11.91%
  • GG42.89%
  • GA45.20%
  • AA11.91%

遺伝子領域rs4554617において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

70.91% 26.59% 2.49%
  • AA70.91%
  • AC26.59%
  • CC2.49%

遺伝子領域rs4554617において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

41.22% 45.97% 12.82%
  • AA41.22%
  • AC45.97%
  • CC12.82%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:尿道下裂

体表的なDNA領域:尿道下裂

尿道下裂 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs1934179です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • GG

    56.3
    %
  • GA

    37.5
    %
  • AA

    6.3
    %

他に、尿道下裂に関わる遺伝子領域はrs4554617があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです

  • AA

    70.9
    %
  • AC

    26.6
    %
  • CC

    2.5
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 DGKK
関連遺伝子 DGKK

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 DGKK
  • 参考リンク : 2011 Jan、Loes F M van der Zandenと研究グループがNat Genet に発表したCommon variants in DGKK are strongly associated with risk of hypospadiasという研究によると尿道下裂 に関連するrs1934179の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 DGKK
  • 参考リンク : 2014 Sep、Frank Gellerと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide association analyses identify variants in developmental genes associated with hypospadiasという研究によると尿道下裂 に関連するrs4554617の関連性が認められました。