ケガのしやすさ
- ケガのしやすさはESR1遺伝子(rs2234693)による筋肉のやわらかさと深く関係し、遺伝子型で個人差があります。
- CCタイプの人は筋肉がやわらかくケガをしにくい傾向がある一方、TTタイプは筋肉がかたくケガをしやすいです。
- 遺伝子型に関係なく、適切なストレッチ・準備運動でケガを予防できます。
概要
【概要】 スポーツで起こる筋肉のケガの中で、よく見られるのが肉離れです。肉離れは、筋肉の線維(細い糸のような部分)が裂けたり切れたりして起こります。 肉離れが起こりやすくなる原因の一つに、筋肉がかたい(柔軟性が低い)ことがあります。
【特徴】 筋肉がかたいと衝撃をうまく吸収できず、ダメージが大きくなると考えられています。 実は、筋肉のやわらかさには、生まれ持ったDNAがある程度影響することが分かっています。 日本の順天堂大学スポーツ健康科学研究科の調査で、ESR1という遺伝子の特定のタイプが、筋肉のやわらかさに大きく影響することが報告されています。
【メカニズム】 遺伝子検査で自分の遺伝子タイプを調べて、生まれつきの筋肉のやわらかさの傾向を確かめてみませんか? 検査の根拠 ESR1遺伝子のタイプによって筋肉のやわらかさに差があることが、日本の順天堂大学の研究で分かりました。 (参考リンク1) この遺伝子の中の特定の場所は「rs2234693」と呼ばれ、3つの遺伝子型があります。 このうち、CCタイプの人は筋肉がやわらかく、CTタイプの人はやや柔らかい傾向があります。 日本人での遺伝子タイプの割合は、CTタイプが最も多く48.7%、TTタイプが33.6%、CCタイプが最も少なく17.7%です。 (参考リンク2) CCまたはCTタイプの人は筋肉がやわらかいため、ケガをしにくい可能性があります。一方、TTタイプの人は筋肉がかたい傾向があるため、ケガをしやすいと考えられています。 しかし、筋肉がやわらかいタイプでも、準備運動をしなければケガをすることがあります。反対に、前もって対策をすればケガを防ぎやすくなります。 そのため、自分の筋肉のやわらかさを知っておくと、ストレッチやトレーニングの種類や時間を考え、自分に合ったケガの予防方法を選ぶことができます。 その結果、筋肉のケガをしにくくなり、安全に運動を楽しめる可能性があります。 遺伝子の働き ESR1(エストロゲン受容体1)遺伝子は、筋肉のやわらかさに関係する遺伝子の1つで、ヒトの24種類の染色体のうち、6番染色体にあります。 この遺伝子は、女性の子宮や卵巣だけでなく、全身の筋肉でも広く働いています。 筋肉がかたくなる理由の一つは、コラーゲン(体の組織を支えるたんぱく質)でできた組織が多く作られることです。ESR1にくっつく女性ホルモンのエストロゲンには、このコラーゲンが作られるのをおさえる働きがあります。 さらに、エストロゲンには、炎症をおさえる働きや、体のサビつき(酸化)を防ぐ働きなど、筋肉を守る働きがある可能性があります。
【科学的根拠】 実際に、ノースカロライナ大学の応用生理学研究所から、エストロゲンが多いと、有酸素運動のあとに増える「クレアチンキナーゼ」(筋肉が傷ついたときに血液中に増える酵素)の増加がおさえられることが報告されています。 (参考リンク3) このように、「rs2234693」は、筋肉のやわらかさという生まれ持った特徴にも関係する、注目されている遺伝子の個人差(一塩基多型)の一つです。
ケガのしやすさとは何か
ケガのしやすさとは、筋肉のやわらかさや遺伝子型によって変わる、ケガのしやすさの個人差のことです。スポーツでの筋肉のケガでは肉離れが最も多く、筋肉の線維が裂けたり切れたりして起こります。
なぜ筋肉のやわらかさがケガに影響するのか
筋肉がかたいと、運動したときの衝撃を十分に吸収できず、筋肉の線維に大きな負担がかかります。順天堂大学スポーツ健康科学研究科の調査により、ESR1遺伝子のrs2234693領域が筋肉のやわらかさに影響することが報告されています(参考リンク1)。
遺伝子型と筋肉のやわらかさの関係
rs2234693にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があり、やわらかさに次のような差があります。
| 遺伝子型 | 筋肉のやわらかさ | ケガのしやすさ | 日本人の割合 |
|---|---|---|---|
| CCタイプ | やわらかい | 低い | 17.8% |
| TCタイプ | やや柔らかいです。 | やや低い | 48.8% |
| TTタイプ | かたい傾向 | 高い | 33.2% |
日本人ではTCタイプが48.8%と最も多く、TTタイプが33.2%、CCタイプが17.8%を占めます(参考リンク2)。
ケガを予防するための具体的な対策
CCまたはTCタイプの人は筋肉がやわらかく、ケガをしにくい傾向がありますが、準備運動をしなければ、遺伝子型に関係なくケガをしやすくなります。
- 運動前の準備運動:筋肉の温度を上げ、一時的にやわらかくします。
- ストレッチの習慣化:止まって伸ばすストレッチと、動きながら伸ばすストレッチを組み合わせた毎日のケアです。
- 自分に合ったトレーニング:遺伝子型に合わせて柔軟トレーニングの強さ・時間を調整
自分の筋肉のやわらかさを知っておくと、ストレッチやトレーニングの種類・時間を自分に合わせて選び、ケガの予防方法を工夫できます。
遺伝子とケガのしやすさの関連
ESR1遺伝子の働きとは
ESR1(エストロゲン受容体1)遺伝子は、ヒトの6番染色体にあり、筋肉のやわらかさに関わる大切な遺伝子です。
- 女性の子宮・卵巣だけでなく、全身の筋肉で広く働きます。
- エストロゲンとくっつき、コラーゲンが作られるのをおさえるして筋肉のやわらかさを保ちます。
- 炎症をおさえ、酸化を防ぐ働きで筋肉を守ります。
ノースカロライナ大学応用生理学研究所の研究では、エストロゲンが多いと、有酸素運動のあとのクレアチンキナーゼ(筋肉が傷ついたときに増える酵素)の増加がおさえられることが報告されています(参考リンク3)。
日本人と世界の遺伝子型の割合の比較(rs2234693)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TTタイプ | 33.2% | 30.3% |
| TCタイプ | 48.8% | 49.4% |
| CCタイプ | 17.8% | 20.1% |
検査の根拠
代表的なDNA領域:ケガのしやすさ
ケガのしやすさ に最も強く影響するDNA領域は、rs2234693です。 日本でのそれぞれの遺伝子タイプの割合は下記のとおりです。
- TT
33.2 % - TC
48.8 % - CC
17.8 %
検査の根拠
順天堂大学スポーツ健康科学研究科のKumagaiらの研究で、ESR1遺伝子のrs2234693というDNA領域が筋肉のやわらかさに影響することが分かりました。CCタイプの人は筋肉がやわらかく、TCタイプはやや柔らかい傾向があります。TTタイプの人は筋肉がかたい傾向があり、ケガをしやすいと考えられています(参考リンク1)。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | ESR1 |
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よくある質問
Q1. ケガのしやすさと遺伝子の関係とは?
ESR1遺伝子のDNA領域rs2234693の遺伝子型が筋肉のやわらかさに影響し、ケガのしやすさに関係します。CCタイプの人は筋肉がやわらかく、ケガをしにくい傾向があります(参考リンク1)。
Q2. なぜ筋肉のやわらかさがケガのしやすさに影響するのか?
筋肉がかたいと衝撃を吸収しにくく、肉離れなどのケガが起こりやすくなります。ESR1遺伝子から作られるエストロゲン受容体(エストロゲンを受け取るたんぱく質)は、コラーゲンが作られるのをおさえ、筋肉のやわらかさを保つ役割があります。
Q3. 遺伝子型による筋肉のやわらかさの違いは?
rs2234693にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があります。CCタイプは筋肉がやわらかく、TCタイプはやや柔らかい傾向があります。日本人ではTCタイプが48.8%と最も多く、CCタイプは17.8%です(参考リンク2)。
Q4. ケガを予防するためにどうすればよいか?
遺伝子型に関係なく、適切なストレッチや準備運動でケガをしにくくできます。TTタイプの人は、準備運動と柔軟トレーニングを特にていねいに行うのがおすすめです。
Q5. ESR1遺伝子はどのような働きをするのか?
ESR1(エストロゲン受容体1)遺伝子は6番染色体にあり、全身の筋肉で広く働いています。エストロゲンとくっついてコラーゲンが作られるのをおさえ、炎症をおさえる働きや酸化を防ぐ働きで筋肉を守ります(参考リンク3)。