不眠症
- 不眠症は、寝つけない・夜中に目が覚める・朝早く目が覚めることが特徴の睡眠の病気で、大人の約10〜15%が慢性不眠症にあてはまります。
- DNA領域rs1815739のTタイプを持つ人は、不眠症になるリスクが高い傾向があることが研究で分かりました。
- 認知行動療法(眠りについての考え方や行動を見直す治療法)と生活習慣の改善が、最も効果的な治療法としてすすめられています。
概要
【病気の概要】 不眠症は、十分に眠れなかったり、ぐっすり眠れなかったりして、昼間に疲れや集中力の低下を感じる状態です。 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうといった症状があります。
【治療と注意点】 不眠症の原因には、ストレスや不安、うつ病などの心の問題や、不規則な生活、カフェインやアルコールのとりすぎなどがあります。 また、痛みや呼吸の問題など、体の問題が原因になることもあります。 不眠症には3つのタイプがあり、短い期間で起こる急性不眠症、長く続く慢性不眠症、そして原因がはっきりしない原発性不眠症があります。 診断は、睡眠のパターンや生活習慣を確認したり、睡眠の検査をしたりして行います。 治療は原因に合わせて行い、認知行動療法(眠りについての考え方や行動を見直す治療法)や生活習慣の改善などが効果的です。 薬には、やめにくくなる(依存)おそれがあるため、短い期間だけ使うことがすすめられています。
【遺伝子とリスク】 アムステルダム自由大学のWatanabeらの研究により、不眠症になるリスクがrs1815739というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはTT、TC、CCの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、不眠症のリスクが高い傾向があることが分かりました。
不眠症とは何か
不眠症とは、寝つけない・夜中に目が覚める・朝早く目が覚めるのどれかが週3回以上、3か月以上続き、昼間のだるさや集中力の低下をともなう睡眠の病気です。大人の約10〜15%が慢性不眠症にあてはまるとされています(1)。
不眠症の原因としくみ
不眠症は、いくつかの原因が重なって起こります。主な原因は次のとおりです。
- 心の問題:ストレス・不安障害・うつ病などの心の問題が、眠りの質を下げます。
- 生活習慣:寝る時間がばらばら、カフェインやアルコールのとりすぎ、寝る前のスマートフォンの使用
- 体の問題:長く続く痛み、呼吸の病気(眠っている間に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群など)、むずむず脚症候群(脚がむずむずして眠れなくなる病気)
- 遺伝子の影響:DNA領域rs1815739のTタイプを持つ人はリスクが高い傾向があります(1)。
不眠症の主な症状
不眠症の症状は夜の睡眠の問題と昼間の生活への影響に分かれます。
- 布団に入って30分以上たっても眠れません(入眠困難)。
- 夜に2回以上目が覚め、また眠るまでに時間がかかります(中途覚醒)。
- 起きる予定の時刻より30分以上早く目が覚めます(早朝覚醒)。
- 昼間の強いだるさ・集中力の低下・イライラ
- 仕事や勉強の調子が落ちます。
不眠症の3つのタイプの違い
| 比較項目 | 急性不眠症 | 慢性不眠症 | 原発性不眠症 |
|---|---|---|---|
| 期間 | 3か月未満 | 3か月以上 | 長く続く |
| 原因 | ストレス・環境の変化 | 心の病気・体の病気 | 原因がはっきりしません。 |
| 患者の割合 | 約30〜35% | 約40% | 約25〜30% |
| 主な治療 | 原因を取りのぞく・生活の改善 | 認知行動療法+薬による治療 | 認知行動療法が中心 |
不眠症の改善方法と治療法
不眠症の治療は、原因に合わせて次の方法がすすめられています。
- 認知行動療法:眠りについての思い込みを直し、生活の行動パターンを整える治療法です。薬による治療よりも長く効果が続くことが確認されています。
- 眠りやすい生活習慣にする:毎日同じ時間に寝て起き、寝室の環境を整えます(温度16〜20℃、部屋を暗くする)。
- カフェイン・アルコールを控える:寝る前の6時間はカフェインをとらないようにします。
- 適度な運動:週3回以上、30分間の有酸素運動(ウォーキングなど)が眠りの質を良くするのに役立ちます。
- 薬による治療:短い期間だけ使うことがすすめられます(やめにくくなるおそれがあるため、長く使うのは基本的に避けます)。
不眠症の診断方法
次のような検査や確認で診断されます。
- 睡眠日誌(毎日の睡眠の記録)による睡眠パターンの確認
- ピッツバーグ睡眠質問票(眠りの質を質問に答えて点数にするもの)
- エプワース眠気尺度(昼間の眠気の強さを点数にするもの)
- 終夜睡眠ポリグラフ検査(ひと晩眠りながら、脳波や呼吸などを記録する検査)
- アクチグラフ検査(腕時計のような活動量計で、眠っている時間と起きている時間を記録する検査)
遺伝子と不眠症の関係
DNA領域rs1815739と不眠症のリスクの関係
アムステルダム自由大学のWatanabeらの研究(1)により、DNA領域rs1815739が不眠症になるリスクと関係していることが分かりました。
- rs1815739にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があります。
- Tを持つ遺伝子型の人は、不眠症のリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs1815739)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 23.5% | 18.5% |
| TC型 | 49.9% | 49.0% |
| CC型 | 26.4% | 32.3% |
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:不眠症
不眠症 に最も強く影響するDNA領域は、rs1815739です。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- TT
23.5 % - TC
49.9 % - CC
26.4 %
ほかに、不眠症に関わるDNA領域としてrs2624838があります。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- CC
23.5 % - CG
49.9 % - GG
26.4 %
ほかに、不眠症に関わるDNA領域としてrs9316619があります。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- TT
99.9 % - TC
0.1%以下 - CC
0.1%以下
ほかに、不眠症に関わるDNA領域としてrs1443914があります。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- TT
21.3 % - TC
49.7 % - CC
28.9 %
ほかに、不眠症に関わるDNA領域としてrs1378559があります。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- TT
44.1 % - TC
44.5 % - CC
11.2 %
検査の根拠
アムステルダム自由大学のWatanabeらの研究により、不眠症になるリスクが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAには、rs1815739という場所があり、そこにはTとCの2種類の違いがあります。Tタイプを持つ人は、不眠症のリスクが高い傾向があることが分かりました(1)。
今回調べたDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図の図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | ACTN3 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | SEMA3F |
| 関連遺伝子 | RN7SL618P |
| 関連遺伝子 | RN7SL618P |
| 関連遺伝子 | RNU6-133P |
よくある質問
Q1. 不眠症とは何ですか?
不眠症とは、寝つけない・夜中に目が覚める・朝早く目が覚めるのどれかが週3回以上、3か月以上続き、昼間のだるさや集中力の低下をともなう睡眠の病気です。大人の約10〜15%が慢性不眠症にあてはまるとされています(1)。
Q2. 不眠症の原因は何ですか?
主な原因はストレス・不安・うつ病などの心の問題と、不規則な生活リズム、カフェインやアルコールのとりすぎです。さらに体の問題や、生まれつきの遺伝子の影響(DNA領域rs1815739のTタイプ)も関係します(1)。
Q3. 不眠症と遺伝子の関係は?
アムステルダム自由大学のWatanabeらの研究により、DNA領域rs1815739のTタイプを持つ人は、不眠症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。遺伝子検査で、自分のリスクの傾向を知ることができます(1)。
Q4. 不眠症の改善方法は?
最も効果的な治療法は認知行動療法(眠りについての考え方や行動を見直す治療法)です。薬による治療よりも、長い目で見て改善する効果が確認されています。生活習慣の改善としては、毎日同じ時間に寝て起きること、カフェインを控えること、適度な運動がすすめられています。
Q5. 不眠症の3つのタイプとは?
不眠症は①急性不眠症(3か月未満の短い期間)、②慢性不眠症(3か月以上続く)、③原発性不眠症(ほかの病気が原因ではない)の3タイプに分けられます。慢性不眠症が全体の約40%をしめます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2022 Aug., Kyoko Watanabe, Nat Genet
- 参考リンク2 : 2019 Mar., Philip R Jansen, Nat Genet