虚血性脳卒中
- 虚血性脳卒中は脳の動脈がつまって脳細胞が死んでしまう病気で、脳卒中全体の約87%を占めます。
- DNA領域rs12438353のTを持つ人はかかるリスクが高い傾向があることが研究でわかっています。
- 適切な血圧の管理・禁煙・運動の習慣で、かかるリスクを下げ、再発を防ぐことができます。
概要
【疾患の概要】 虚血性脳卒中は、脳に血液を送る動脈がつまることで起こる病気です。 血管がつまると、脳に酸素や栄養が届かなくなり、その部分の脳細胞が死んでしまいます。
【症状と特徴】 症状は、脳のどの部分がダメージを受けたかによって変わります。よく見られるのは、体の片側が急に力が入らなくなる・まひする、頭が混乱する、言葉がうまく話せない・理解できない、片目または両目が見えにくくなる、歩きにくい、めまいがする、体のバランスがとれない、原因のわからない急で激しい頭痛などです。 症状の出方は、ダメージを受けた脳の場所と範囲によって違います。 たとえば、脳の左側で起こると言葉や考える力に障害が出やすく、右側で起こると物の位置や空間をとらえる力に問題が出やすくなります。 また、重症の場合は、まひや言葉の障害、気持ちの問題など、長く続く後遺症が残ることがあります。
【治療と注意点】 虚血性脳卒中は、その人の生活に大きな影響を与えるため、医療とリハビリテーション(体の機能を取り戻す訓練)の両方がしっかり必要です。
【遺伝子の影響】 イーストカロライナ大学のCartyらの研究により、虚血性脳卒中のかかりやすさが、rs12438353というDNA領域と関係していることがわかりました。 このDNA領域にはCC、CT、TTの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、虚血性脳卒中のリスクが高い傾向があることがわかりました。
虚血性脳卒中とは何か
虚血性脳卒中は、脳に血液を送る動脈が血のかたまり(血栓・塞栓)でつまり、脳に酸素や栄養が届かなくなって脳細胞が死んでしまう病気です。脳卒中全体の約87%を占め、日本では毎年約17万人がかかっています。
虚血性脳卒中の原因とメカニズム
虚血性脳卒中は、血管がつまるしくみによって、次の3つのタイプに分けられます。
- アテローム血栓性脳梗塞:動脈硬化(血管が硬く狭くなること)で、脳の太い動脈に血のかたまりができます。
- 心原性脳塞栓症:心房細動(不整脈の一種)などで心臓の中にできた血のかたまりが、脳の動脈をつまらせます。
- ラクナ梗塞:脳の細い動脈(穿通枝)がつまり、小さな梗塞(脳細胞が死んだ部分)ができます。
主なリスク因子は次のとおりです。
- 高血圧(最も大きなリスク因子で、リスクは約4倍)
- 心房細動(心臓からの血のかたまりによる脳梗塞のリスクが約5倍)
- 糖尿病(リスクは約2〜3倍)
- 脂質異常症(血液中の脂肪の値の異常)・喫煙・飲みすぎ
- 遺伝的な体質(家族に脳卒中の人がいる)
虚血性脳卒中の主な症状
症状は急に起こるのが特徴で、ダメージを受けた脳の場所によって変わります。
- 体の片側に急に力が入らなくなり、まひします(片まひ)。
- 言葉の障害(うまく発音できない・言葉が出ない、理解できない)
- 片目または両目が見えにくくなります。
- 歩きにくい、めまいがする、体のバランスがとれないなどの症状が出ます。
- 原因のわからない急で激しい頭痛
虚血性脳卒中と出血性脳卒中の違い
| 比較項目 | 虚血性脳卒中 | 出血性脳卒中 |
|---|---|---|
| 原因 | 脳の動脈がつまります(血のかたまり)。 | 脳の血管が破れます(出血)。 |
| 全脳卒中に占める割合 | 約87% | 約13% |
| 主なリスク因子 | 動脈硬化・心房細動 | 高血圧・動脈瘤(血管のこぶ) |
| 治療法 | 血栓を溶かす薬の点滴・血栓を取り除く手術 | 出血を止める治療・脳への圧力を下げる手術 |
| 起こりやすい場面 | 安静にしている時・朝起きた時に多いです。 | 活動中・興奮した時に多いです。 |
虚血性脳卒中の合併症・後遺症
適切な治療を受けないと、次のような後遺症が残ることがあります。
- 運動麻痺(体の片側のまひ・手足全体のまひ)
- 言語障害(言葉が出ない・うまく発音できない)
- 高次脳機能障害(考える力や記憶の障害)(注意力・記憶力・物事を計画して進める力の低下)
- 嚥下障害(飲み込みにくさ)(食べ物が気管に入って起こる肺炎のリスク)
虚血性脳卒中の予防法
次のような生活習慣の見直しが効果的です。
- 血圧管理(目標値140/90mmHg未満)
- 禁煙(喫煙するとリスクは約2倍)
- 適度な運動(週150分以上の有酸素運動)
- 塩分をひかえます(1日6g未満)。
- 心房細動がある場合は、血をかたまりにくくする薬による治療
遺伝子と虚血性脳卒中の関係
DNA領域rs12438353とかかりやすさの関係
イーストカロライナ大学のCartyらの研究により、DNA領域rs12438353が虚血性脳卒中のかかりやすさと関係していることがわかりました。
- rs12438353にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型があります。
- Tを持つ遺伝子型の人は、虚血性脳卒中のリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs12438353)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 23.5% | 45.5% |
| CT型 | 49.9% | 43.8% |
| TT型 | 26.4% | 10.5% |
日本人はTT型(26.4%)の割合が世界平均(10.5%)の約2.5倍高く、遺伝子の面で虚血性脳卒中のリスクが高い傾向があります。
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:虚血性脳卒中
虚血性脳卒中に最も強く影響するDNA領域は、rs12438353です。 日本での遺伝子型の分布は下のとおりです。
- CC
23.5 % - CT
49.9 % - TT
26.4 %
ほかに、虚血性脳卒中に関係するDNA領域としてrs1799801があります。 日本での遺伝子型の分布は下のとおりです。
- TT
44.6 % - TC
44.3 % - CC
11.0 %
ほかに、虚血性脳卒中に関係するDNA領域としてrs2200733があります。 日本での遺伝子型の分布は下のとおりです。
- CC
27.9 % - CT
49.8 % - TT
22.1 %
検査の根拠
イーストカロライナ大学のCartyらの研究により、虚血性脳卒中のかかりやすさが遺伝子と関係していることがわかりました。rs12438353のDNA領域にはCとTの2種類のタイプがあり、Tを持つ人は虚血性脳卒中のリスクが高い傾向があります。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図(模式図)
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | AGBL1 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | XPF |
| 関連遺伝子 | PITX2 |
よくある質問
Q1. 虚血性脳卒中とは何ですか?
虚血性脳卒中は、脳に血液を送る動脈が血のかたまり(血栓・塞栓)でつまり、脳に酸素や栄養が届かなくなって脳細胞が死んでしまう病気です。脳卒中全体の約87%を占め、日本では毎年約17万人がかかっています。
Q2. 虚血性脳卒中の原因は何ですか?
主な原因は、動脈硬化でできる血のかたまりと、心房細動でできる血のかたまりです。高血圧・糖尿病・脂質異常症(血液中の脂肪の値の異常)・喫煙が主なリスク因子です。また、DNA領域rs12438353でTを持つ人はリスクが高い傾向があります。
Q3. 虚血性脳卒中と出血性脳卒中の違いは?
虚血性脳卒中は脳の動脈がつまることが原因で脳卒中全体の約87%を占めます。出血性脳卒中は脳の血管が破れることが原因で約13%を占めます。治療法も違い、虚血性では血栓を溶かす薬の点滴や血栓を取り除く手術(血栓回収術)、出血性では出血を止める治療や脳への圧力を下げる手術が中心です。
Q4. 遺伝子検査で虚血性脳卒中のリスクは分かりますか?
DNA領域rs12438353・rs1799801・rs2200733の遺伝子型を調べることで、虚血性脳卒中へのかかりやすさの傾向を知ることができます。Tを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向があることが研究でわかっています。
Q5. 虚血性脳卒中の予防法は?
血圧の管理(目標は140/90mmHg未満)、禁煙、適度な運動(週150分以上の有酸素運動)、塩分をひかえる(1日6g未満)、脂質異常症の治療が効果的です。心房細動(不整脈の一種)がある場合は、血をかたまりにくくする薬による治療がすすめられます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2015 Aug., Cara L Carty, Stroke
- 参考リンク2 : 2016 May., Ying Ma, J Mol Neurosci
- 参考リンク3 : 2008 Oct., Solveig Gretarsdottir, Ann Neurol
- 参考リンク4 : 2016 Feb., NINDS Stroke Genetics Network (SiGN), Lancet Neurol
- 参考リンク5 : 2022 Mar., Yao Hu, Stroke