若年性高血圧
- 若年性高血圧は50歳未満で起こる高血圧で、日本では約4,300万人いる高血圧の人のうち、若い人の割合が増えています。
- 遺伝子PPARGC1A(DNA領域rs8192678)のTT型・CT型を持つ人は血圧が高くなりやすく、日本人の約75%があてはまります。
- 早めの血圧測定・禁煙・ちょうどよい体重・運動習慣によって、遺伝子の影響があっても予防できます。
概要
【概要・特徴】 日本では、高血圧の人が約4,300万人いると考えられています。これは日本人の約3人に1人にあたります。高血圧は、それ自体ではほとんど症状が出ません。症状が出たときには、心筋梗塞や脳卒中などの重い病気につながっていることが多いため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれています。 そのため、早めの予防が大切です。特に、若いうちに高血圧になった人は、大人になってから高血圧になるリスクが、一般的な若い人よりも高いとされています。 実は、若い人の高血圧には、DNAがある程度影響していることが分かっています。イギリスのケンブリッジ大学の研究では、遺伝子「PPARGC1A」の特定の配列が、若い人の血圧に大きな影響を与えると報告されています。 遺伝子検査で自分の遺伝子タイプを調べると、生まれつきの血圧の傾向を知ることができます。
【2. 理論的根拠】 イギリスで先に行われた研究で、遺伝子「PPARGC1A」の特定のタイプが、50歳未満の若い人の高血圧と関係していることが分かりました。(参考リンク1) この遺伝子「PPARGC1A」の中で高血圧に関係する部分は「rs8192678」というDNA領域で、「CC型」「CT型」「TT型」の3つの遺伝子型があります。それぞれの割合は「CC型」が32.5%、「CT型」が49.0%、「TT型」が18.5%です。(参考リンク2) 50歳未満の若い人では、「TT型」の人は血圧が高く、「CT型」の人はやや血圧が高い傾向があることが分かっています。 この遺伝子型を持つ人は日本人の若い人の約70%にあたるため、「血圧が高くなりやすい」と悪いイメージを持つかもしれません。 しかし、この遺伝子型だけですべてが決まるわけではありません。食生活をふくむ生活習慣が、最も大きな影響を与えることが分かっています。 若い人の高血圧は、多くの場合、肥満、飲酒、運動不足などの生活習慣が原因とされています(ただし、ほかの病気が原因で起こる特殊な高血圧「二次性高血圧」は除きます)。 そのため、自分の血圧について遺伝子の影響を科学的に知っておけば、早いうちから血圧を測る、喫煙・肥満・食生活に気をつけるなど、高血圧を防ぐための対策がとれます。 また、動脈硬化(血管がかたく、もろくなること)を引き起こすおそれのある糖尿病や脂質異常症(血液中の脂質のバランスがくずれた状態)についても、同じように早めの対策ができる可能性があります。生活習慣を見直したり、適切な医療を受けたりして、これらの病気の予防や治療に取り組むことが大切です。
【3. メカニズム】 若い人の高血圧に関係する遺伝子「PPARGC1A」は、ヒトの24種類の染色体のうち4番染色体にあります。その中のDNA領域「rs8192678」の個人差(多型)によって、PGC1αというタンパク質の作られ方が変わることがあります。PGC1αは、筋肉の細胞の中でエネルギーを作る「ミトコンドリア」を増やしたり、その働きを調整したりするタンパク質です。 PGC1αが多く作られると、エネルギーを作る働きや糖の取り込みが効率よくなります。つまり、持久力に関係して、糖をエネルギーとして上手に使えるようになります。 イスラエルの生命科学部遺伝学研究所やタイの医学研究者たちは、遺伝子「PPARGC1A」が持久力の向上と関係していると報告しています。ただし、アジア人の持久力についてのデータはまだ少なく、今後の研究が期待されています。(参考リンク3、4) 遺伝子「PPARGC1A」は、糖をエネルギーとして上手に使えない体質と関係しており、糖尿病や肥満などの病気とも関係している可能性があります。(参考リンク5) 若い人の高血圧は、肥満をはじめとする生活習慣が原因になります。糖をエネルギーとして上手に使えないと、おなかの内臓のまわりに脂肪(内臓脂肪)がたまりやすくなり、心臓がより多くの血液を送り出す必要が出てきます。 このため、遺伝子「PPARGC1A」と若い人の高血圧が関係していると考えられています。 このように、遺伝子「PPARGC1A」の中にあるDNA領域「rs8192678」は、若い人の高血圧などの病気のリスクと関係しており、注目されている一塩基多型(DNAの1文字の違いによる個人差)の一つです。
若年性高血圧とは何か
若年性高血圧とは、50歳未満の若い人に起こる高血圧で、将来、心筋梗塞や脳卒中などの重い病気につながるリスクが高い状態です。日本では高血圧の人が約4,300万人いて、国民の約3人に1人が高血圧にあたります。
若年性高血圧の原因とリスクを高めるもの
若年性高血圧の原因は、生活習慣と遺伝子の影響の2つに分けられます。
- 生活習慣:肥満、飲酒、運動不足、塩分のとりすぎです。
- 遺伝子の影響:遺伝子PPARGC1A(DNA領域rs8192678)の特定のタイプが血圧に影響します。
高血圧は自分で気づく症状がほとんどないため「サイレントキラー」と呼ばれます。症状が出たときには、心筋梗塞や脳卒中などの重い病気になっていることもあります。そのため、早期発見と予防が重要です。
なぜ若年性高血圧は危ないのか
若年性高血圧が危ない理由は、次の3つです。
- 大人になってから本格的な高血圧になるリスクが、一般的な若い人よりも高いです。
- 血圧が高い状態が長く続くと血管が傷つき、動脈硬化を進めます。
- 糖尿病や脂質異常症など、ほかの原因と重なると、心臓や血管の病気のリスクがさらに高まります。
若年性高血圧と通常の高血圧の違い
| 比較項目 | 若年性高血圧 | 通常の高血圧 |
|---|---|---|
| 発症年齢 | 50歳未満 | 50歳以上に多いです。 |
| 主な原因 | 遺伝子の影響+生活習慣 | 年齢による動脈硬化+生活習慣 |
| 遺伝子の影響 | PPARGC1A(rs8192678)が強く関係しています。 | 複数の遺伝子が関係 |
| 将来リスク | 長い期間で見た血管へのダメージのリスクが高いです。 | 短い期間で起こる合併症のリスク |
| 予防の重要性 | 早めの対策で大きな効果 | 悪化を防ぐことが中心 |
遺伝子と若年性高血圧の関係
DNA領域rs8192678と血圧が上がるリスクの関係
イギリス・ケンブリッジ大学のVimaleswaranらの研究(参考リンク1)で、遺伝子PPARGC1AのDNA領域rs8192678が、50歳未満の若い人の高血圧と関係していることが分かりました。
- rs8192678にはCC型・CT型・TT型の3つの遺伝子型があります。
- TT型の遺伝子型を持つ人は血圧が高い傾向があります。
- CT型の人もやや血圧が高い傾向があります。
- 血圧が高くなりやすいTT型・CT型は日本人の約75%が持っています。
日本人の遺伝子型の割合(rs8192678)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 | 血圧への影響 |
|---|---|---|---|
| CC型 | 24.5% | 45.7% | 標準的 |
| CT型 | 49.9% | 43.7% | やや血圧が高い傾向 |
| TT型 | 25.4% | 10.4% | 血圧が高い傾向 |
日本人はCC型(標準的)の割合が24.5%で、世界平均の45.7%より低くなっています。一方、TT型(血圧が高い傾向)の割合は25.4%で、世界平均の10.4%の約2.4倍と高いのが特徴です。
遺伝子PPARGC1Aが働くしくみ
遺伝子PPARGC1Aは4番染色体にあり、次のようなしくみで若年性高血圧に関係しています。
- DNA領域rs8192678の個人差がPGC1αタンパク質の作られる量に影響します。
- PGC1αは、筋肉の細胞でエネルギーを作るミトコンドリアを増やしたり、その働きを調整したりします。
- PGC1αが多く作られると、エネルギーを作る働きや糖の取り込みの効率アップにつながります。
- PGC1αの働きが弱いと、糖をエネルギーとして上手に使えなくなり、内臓脂肪がたまることにつながります。
- 内臓脂肪が増えると、心臓がより多くの血液を送り出す必要が出てきて、血圧が上がります。
イスラエルの生命科学部遺伝学研究所やタイの医学研究者たちは、遺伝子PPARGC1Aが持久力の向上と関係していると報告しています(参考リンク3、4)。また、この遺伝子は糖尿病や肥満などの病気とも関係しています(参考リンク5)。
若年性高血圧の予防法
遺伝子型だけですべてが決まるわけではなく、食生活をふくむ生活習慣が最も大きな影響を与えます。次のような対策が効果的です。
- 早いうちから血圧測定を習慣にします。
- 禁煙を徹底する
- ちょうどよい体重を保ち、肥満を防ぎます。
- 塩分をひかえた食事を心がけましょう(1日6g未満が目標)。
- 定期的な有酸素運動を行います(週150分以上がおすすめ)。
- 過度な飲酒を控える
自分の血圧について遺伝子の影響を科学的に知っておくと、糖尿病や脂質異常症など、動脈硬化の原因になる病気にも早めに対策がとれます。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:若年性高血圧
若年性高血圧に最も強く影響するDNA領域は、rs8192678です。日本におけるこの領域の遺伝子タイプの分布は下のとおりです。
- CC
24.5 % - CT
49.9 % - TT
25.4 %
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | PPARGC1A |
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よくある質問
Q1. 若年性高血圧とは何ですか?
若年性高血圧とは、50歳未満の若い人に起こる高血圧です。日本では高血圧の人が約4,300万人いて、約3人に1人が高血圧にあたります。若年性高血圧は、将来、心筋梗塞や脳卒中などの重い病気になるリスクを高めるため、早めの予防が大切です。
Q2. 若年性高血圧の原因は何ですか?
主な原因は肥満、飲酒、運動不足などの生活習慣です。さらに、遺伝子PPARGC1A(DNA領域rs8192678)の特定の遺伝子型も、血圧が上がることに関係しています。ケンブリッジ大学の研究で、TT型・CT型の遺伝子型を持つ人は血圧が高くなりやすいことが分かっています(参考リンク1)。
Q3. 遺伝子検査で若年性高血圧のリスクは分かりますか?
DNA領域rs8192678の遺伝子型を調べることで、生まれつきの血圧が上がりやすさを知ることができます。TT型・CT型の遺伝子型を持つ人は血圧が高くなりやすく、日本人の約75%がこの遺伝子型を持っています(参考リンク2)。
Q4. 遺伝子PPARGC1Aと若年性高血圧の関係は?
遺伝子PPARGC1Aは4番染色体にあり、PGC1αというタンパク質の作られる量を調整しています。PGC1αの働きが弱いと糖をエネルギーとして上手に使えなくなり、内臓脂肪がたまることで血圧が上がりやすくなります(参考リンク3、4、5)。
Q5. 若年性高血圧はどのように予防できますか?
遺伝子型だけですべてが決まるわけではなく、生活習慣が最も大きな影響を与えます。早いうちから血圧を測る習慣をつける、たばこを吸わない、ちょうどよい体重を保つ、塩分をひかえた食事(1日6g未満)、定期的な有酸素運動(週150分以上)が、効果的な予防法です。