遅発性アルツハイマー病
概要
1. 概要
日本では少子高齢化が進み、親の介護に関する問題が注目されています。多くの方が「子供にはできる限り迷惑をかけたくない」と思っているものの、介護は負担になってしまいます。
介護の疲れは、「身体的疲労」と「精神的疲労」の2つに分けられ、特に「精神的疲労」は「介護うつ」の原因となる危険な疲労です。
認知症患者とのコミュニケーションが原因で精神的に疲れてしまう方もいます。認知症患者は物忘れが激しくなることや、幻覚を見たりすることがあるため、それに対応する介護者の精神的負担は大きくなりがちです。
内閣府によると、2025年には高齢者の5分の1が認知症にかかると試算されています。
アルツハイマー病は60歳以上の高齢者によく見られる認知症の一つで、記憶や思考能力がゆっくりと消失していく病気です。
最近の研究報告によって、遺伝子「SLC102A」付近のある部位がアルツハイマー病の発症リスクに影響を与えている可能性が高いとわかってきました。
アルツハイマー病に対する有効な治療法は見つかっていないため、一度発症すると治癒することができません。
遺伝子検査をすることによって、アルツハイマー病の発症リスクを知ることは、ご自身の健康寿命を長くするだけではなく、介護者の負担を減らすことが期待されます。
2. 理論的根拠
米国国立衛生研究所で行われた研究から、遺伝子「SLC10A2」付近の特定タイプによって、アルツハイマー病を発症しやすい人がいるということが明らかになりました。
その部位は「rs16961023」というDNA領域になります。(参考リンク 1)
DNA領域「rs16961023」には、「CC型」、「CG型」、「GG型」と3つの遺伝子型があります。
日本人の遺伝子タイプは、「CC型」が最も多く83.5%、「CG型」は次いで15.7%、「GG型」は最も少なく0.8%という分布となっています。(参考リンク 2)
アルツハイマー病の発症率に関わる血中コレステロール濃度が上昇しやすいため、Risk AlleleであるGを持つ「GG型」はアルツハイマー病を発症しやすい傾向にあり、「CG型」はアルツハイマー病をやや発症しやすい傾向にあることが分かっています。
アルツハイマー病を発症しやすい「GG型」と「CG型」の合計は16.5%と一見低く見えますが、全世界的に見た「GG型」、「CG型」の割合は1%未満となっています。
すなわち、DNA領域「rs16961023」に関して言えば、日本人は「アルツハイマー病」を発症しやすい人種だと言えるのです。
しかし、「アルツハイマー病」の発症には遺伝的要素の他に環境的要因も大きく関わっているため、生活環境を整えることなどで発症をある程度予防することが可能です。
「アルツハイマー病」は、発症の10年ほど前から進行することが知られています。
ご自身の「アルツハイマー病」のリスクを早期に知り、それに応じた対策をすることは、健康を支えるだけでなく、大切な人とのコミュニケーションを長く続けさせてくれるかもしれません。
3. 作用機序
「SLC10A2」という遺伝子は、人間の24本の染色体のうち、13番染色体に位置しています。
この遺伝子は、「ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)」を作る遺伝情報を持ち、胆汁酸をヒト門脈血中から肝細胞へ運搬する役割を担っています。
胆汁酸は、コレステロールから作られますが、NTCPが正常に機能していないと、体内で胆汁酸が循環せず、新たに胆汁酸が合成されなくなるため、コレステロールが消費されません。(参考リンク 3)
そのため、血中コレステロール濃度が高くなり、アルツハイマー病の発症リスクが増加すると考えられています。
したがって、DNA領域「rs16961023」は、アルツハイマー病の発症に関連し、注目を浴びている一塩基多型の一つです。
遺伝子領域rs16961023において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC84.32%
- CG15.01%
- GG0.67%
遺伝子領域rs16961023において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC99.07%
- CG0.93%
- GG0.00%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:遅発性アルツハイマー病
体表的なDNA領域:遅発性アルツハイマー病
遅発性アルツハイマー病 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs16961023です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
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CC
84.3% -
CG
15.0% -
GG
0.7%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | METTL21EP |
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参考文献
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関連遺伝子 METTL21EP
- 参考リンク : 2017 Feb、Jesse Mezと研究グループがAlzheimers Dement に発表したTwo novel loci, COBL and SLC10A2, for Alzheimer’s disease in African Americansという研究によると遅発性アルツハイマー病 に関連するrs16961023の関連性が認められました。