左心室不全
- 左心室不全は心臓の左心室のポンプの働きが弱まり、全身に届く血液が足りなくなる病気で、むくみ・息苦しさ・疲れやすさが起こります。
- DNA領域rs2801617のT型変異を持つ人は左心室不全になりやすい傾向があることが研究で判明しました。
- 関連遺伝子はMIR5007で、日本人のTT型の割合は99.9%と、世界平均87.9%より12.0ポイント高いです。
概要
【疾患の概要】 左心室不全は、心臓の左心室がうまく働かなくなる状態です。
【症状と特徴】 左心室は心臓の中心となるポンプで、全身に血液を送り出す大切な役割をしています。 左心室が十分に血液を送り出せないと、全身に届く血液が足りなくなり、さまざまな症状や合併症が起こります。 主な症状は、むくみ、足やおなかの腫れ、疲れやすさ、夜の咳、息苦しさなどです。 進行すると血液を送り出す力がさらに弱まり、命にかかわる状態になります。
【治療と注意点】 診断には、心電図、心臓の超音波検査(エコー)、胸部レントゲン検査、血液検査などを行います。 治療には、薬(尿の量を増やして体の余分な水分を出す利尿薬、血圧を下げて心臓の負担を減らすアンジオテンシン変換酵素阻害薬、心臓の働きを落ち着かせるベータ遮断薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬など)、生活習慣の改善(塩分を控える、適度な運動、体重管理、禁煙)があり、重症の場合は手術を行います。
【遺伝的リスク】 モントリオール大学のTadrosらの研究で、左心室不全のなりやすさがrs2801617というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはTT、TC、CCの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、左心室不全になりやすい傾向があることが分かりました。
左心室不全とは何か
左心室不全とは、心臓の左心室のポンプの働きが弱まり、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態です。左心室は心臓の中心となるポンプで、酸素を多く含んだ血液を大動脈(心臓から出る太い血管)を通して全身に送り出す大切な役割をしています(1)。
左心室不全の原因
左心室不全は以下の病気や要因によって起こります。
- 高血圧:高い血圧が続くことで、左心室の筋肉が厚く硬くなります。
- 冠動脈疾患(心臓の血管の病気):心臓の筋肉に血液を送る血管(冠動脈)が狭くなったり詰まったりして、心臓の筋肉に届く血液が減ります。
- 心筋梗塞:心臓の筋肉の一部が死んでしまい、左心室の縮む力が弱まります。
- 心筋症:心臓の筋肉のつくりに異常があり、ポンプの働きが弱まります。
- 遺伝子の影響:DNA領域rs2801617のT型変異がなりやすさに関わります。
左心室不全の主な症状
症状は左心室の働きがどれだけ弱まったかに応じて、段階的に進みます。
- むくみ:足・足首・おなかの腫れ
- 息苦しさ:体を動かしたときや安静にしているときの息苦しさ
- 疲れやすさ:全身に届く血液が足りず、だるさが続きます。
- 夜間の咳:横になると肺に血液がたまって出る咳です。
- 体重増加:体に水分がたまることによる急な体重増加です。
左心室不全の診断方法と治療法
| 比較項目 | 診断方法 | 治療法 |
|---|---|---|
| 検査 | 心電図・心臓の超音波検査・胸部レントゲン検査・血液検査 | — |
| 薬による治療 | — | アンジオテンシン変換酵素阻害薬・ベータ遮断薬・利尿薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬 |
| 生活習慣の改善 | — | 塩分制限・適度な運動・体重管理・禁煙 |
| 手術による治療 | — | 心臓再同期療法(ペースメーカーで心臓の動きをそろえる治療)・補助人工心臓・心臓移植(重症の場合) |
遺伝子と左心室不全の関連
DNA領域rs2801617となりやすさの関係
モントリオール大学のTadrosらの研究(1)で、DNA領域rs2801617が左心室不全のなりやすさと関係していることが分かりました。
- rs2801617にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型が存在します。
- T型変異を持つ遺伝子型の人は、左心室不全になりやすい傾向があります。
- 関連遺伝子はMIR5007
日本人における遺伝子型分布(rs2801617)
日本人と世界では遺伝子型の分布に違いがあります。
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 | 差 |
|---|---|---|---|
| TT型 | 99.9% | 87.9% | +12.0ポイント |
| TC型 | 0.1%以下 | 11.6% | −11.6ポイント |
| CC型 | 0.1%以下 | 0.3% | −0.3ポイント |
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:左心室不全
左心室不全 に最も強く影響するDNA領域は、rs2801617です。 日本における遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- TT
99.9 % - TC
0.1%以下 - CC
0.1%以下
検査の根拠
モントリオール大学のTadrosらの研究(1)で、左心室不全のなりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAには、rs2801617という領域があり、この領域にはTとCの2種類のタイプがあります。Tを持つ人は、左心室不全になりやすい傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図の模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | MIR5007 |
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よくある質問
Q1. 左心室不全とは何ですか?
左心室不全とは、心臓の左心室のポンプの働きが弱まり、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態です。むくみ・息苦しさ・疲れやすさ・夜の咳などの症状が起こり、進行すると命にかかわる重い病気です(1)。
Q2. 左心室不全の原因は何ですか?
主な原因は高血圧・冠動脈疾患(心臓の血管の病気)・心筋梗塞・心筋症です。これらの病気で左心室の筋肉が傷ついたり厚くなったりして、ポンプの働きが弱まります。遺伝子の影響として、DNA領域rs2801617のT型変異も関わっています(1)。
Q3. 左心室不全に関係する遺伝子は何ですか?
モントリオール大学のTadrosらの研究により、DNA領域rs2801617が左心室不全のなりやすさと関係していることが分かりました。T型変異を持つ人はなりやすい傾向があり、関連遺伝子はMIR5007です(1)。
Q4. 左心室不全の治療法は?
薬による治療(アンジオテンシン変換酵素阻害薬・ベータ遮断薬・利尿薬)、生活習慣の改善(塩分を控える・適度な運動・体重管理・禁煙)があり、重症の場合は心臓再同期療法(ペースメーカーで心臓の左右の動きをそろえる治療)や心臓移植を行います。
Q5. 日本人の左心室不全に関係する遺伝子型の分布の特徴は?
日本人のrs2801617の遺伝子型の分布は、TT型99.9%・TC型0.1%以下・CC型0.1%以下です。世界平均(TT型87.9%)と比べてTT型の割合が12.0ポイント高く、TC型・CC型はほとんどいないのが特徴です(1)。
参考文献
- 参考リンク1 : 2021 Feb., Rafik Tadros, Nat Genet