肺がん
概要
1. 概要
肺は、袋状であり、気管支と肺胞から成り立っています。
気管支は、肺内で空気の通り道を担い、肺胞は、枝分かれした気管支の先にぶどうの房のように無数に存在し、酸素と二酸化炭素の交換場所となっています。
肺がんは、上皮細胞に遺伝子の傷がつくことで発生します。
特に、タバコの煙には、遺伝子を傷つける約70種類もの発がん物質が含まれており、肺がん発症の主たる原因となっています。
喫煙以外にも、汚染大気や家族歴も肺がん発症リスク因子として考えられています。
最近の研究では、遺伝子「TNFRSF19」の多型が、肺がんの発症リスクにある程度影響を与えることが報告されています。
2. 理論的根拠
中国の南京医科大学をはじめとする研究により、遺伝子「TNFRSF19」付近にある特定の部位の遺伝子型によって、肺がんの発症が多く見られることが明らかになりました。(参考リンク1)
この部位はDNA領域「rs753955」と呼ばれ、3つの遺伝子型「AA型」「AG型」「GG型」が存在します。
Risk Alleleである「G」を持つ「GG型」は肺がんの発症が多く見られ、「AG型」はやや多く見られます。日本人の遺伝子タイプは、「AG型」が48.8%、「AA型」が33.3%、「GG型」が17.9%です。(参考リンク2)
肺がんは日本人の死因の第1位であり、性別ごとでも男性の第1位、女性の第2位の死因となっています。(参考リンク3)
国立がん研究センターの統計によると、2020年には75,585人が肺がんで亡くなりました。
肺がんは進行するまで症状が出ないことが多く、出ても風邪や喫煙に伴う症状(咳や痰)などと区別がつきにくいため、発見が遅れる傾向にあります。
このことから、遺伝子検査により肺がんに対する遺伝的傾向を事前に把握することで、早い段階からの肺がんの定期検診や禁煙などの対策を取ることが可能となります。
3. 作用機序
「TNFRSF19」という遺伝子は、人間の24の染色体のうち、13番染色体に位置しており、「cJun N 末端キナーゼ(JNK)シグナル伝達経路」という経路を介して、細胞死(アポトーシス)を誘導する役割がある可能性があります。
DNAが損傷した細胞は、積極的に細胞死をしないとがん化してしまいます。
実際、遺伝子「TNFRSF19」の発現が低下している患者は、予後が悪くなることが分かっています。(参考リンク4)
また、DNA領域「rs753955」は、近くの遺伝子の発現を調整する役割(エンハンサー)と共に、遺伝子「TNFRSF19」の発現を低下させ、気管支上皮細胞のDNA修復効率および細胞死応答を低下させることが報告されています。(参考リンク5)
以上から、DNA領域「rs753955」は肺がんの発症リスクに関与する一塩基多型の一つとして注目されています。
遺伝子領域rs753955において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA39.67%
- AG46.63%
- GG13.70%
遺伝子領域rs753955において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA14.93%
- AG47.42%
- GG37.65%
遺伝子領域rs1051730において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG96.19%
- GA3.77%
- AA0.04%
遺伝子領域rs1051730において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG45.68%
- GA43.82%
- AA10.51%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:肺がん
体表的なDNA領域:肺がん
肺がん に最も強く影響する遺伝子領域は、rs753955です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
-
AA
39.7% -
AG
46.6% -
GG
13.7%
他に、肺がんに関わる遺伝子領域はrs1051730があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
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GG
96.2% -
GA
3.8% -
AA
0.0%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | TNFRSF19 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | CHRNA3 |
参考文献
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関連遺伝子 TNFRSF19
- 参考リンク : 2011 Jul、Zhibin Huと研究グループがNat Genet に発表したA genome-wide association study identifies two new lung cancer susceptibility loci at 13q12.12 and 22q12.2 in Han Chineseという研究によると肺がん に関連するrs753955の関連性が認められました。
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関連遺伝子 CHRNA3
- 参考リンク : 2008 Dec、James D McKayと研究グループがNat Genet に発表したLung cancer susceptibility locus at 5p15.33という研究によると肺がん に関連するrs1051730の関連性が認められました。