seeDNAロゴアイコン 記憶力

概要

概要

記憶力は、脳に入ってきた情報を覚えておく能力のことであり、宣言的記憶という種類の記憶が日常生活で用いるものの大半を占めます。
これは、教科書を用いて得た知識や経験した出来事などを長期的に脳のメモリーに保存して、必要に応じてアウトプットできる記憶です。
記憶力には、遺伝と環境の両方が関与しています。ふたご行動発達研究センター長の安藤教授によると、記憶力は遺伝的要因が約55%、環境的要因が約45%影響しているとされています。(参考リンク1)
近年、記憶力に関わる遺伝子が複数発見されています。その中でも、宣言的記憶と関連していたPCDH20という遺伝子付近のある部位に注目が集まっています。

理論的根拠

アメリカのボストン大学医学部による研究によると、PCDH20遺伝子の特定タイプによって宣言的記憶が定着しにくい傾向があることが明らかになりました。
この部位は「rs9528384」と呼ばれ、3つの遺伝子型であるAA、AG、GGが存在します。GGタイプの人は宣言的記憶が定着しにくく、AGタイプの人も若干定着しにくい傾向があることが分かっています。(参考リンク2)
日本人の遺伝子型は、AAタイプが最も多く95.3%、AGタイプが4.6%、GGタイプが最も少ない0.1%を示しています。(参考リンク3)
したがって、日本人の9割以上の人が宣言的記憶に影響しにくい遺伝子タイプを持っていることになりますが、必ずしも遺伝子タイプが記憶力と関連するわけではありません。

記憶力は、教育や環境によって大きく影響されるとされています。両親が覚えるのが得意だからといって、子供の記憶力が生まれつき良いわけではなく、自分の工夫や環境次第で伸ばせる才能です。
繰り返し復習をすることは、記憶を定着させる方法の一つであり、脳科学者の池谷裕二氏によれば、記憶は脳の海馬という部位と関連しており、同じ情報を繰り返し送られると、海馬は生きていくのに重要だと判断し、長期記憶として定着させることがわかっています。
また、記憶は寝ている間に定着すると考えられており、睡眠不足は海馬を縮小させ、記憶力を低下させることが分かっています。
睡眠にはレム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)という状態があり、レム睡眠の時に日中に記憶したことを定着させ、ノンレム睡眠の時に過去の記憶との結びつけを行うとされています。睡眠サイクルは、レム睡眠とノンレム睡眠が90分周期であるため、睡眠周期を4から5回繰り返した6時間または7時間半の睡眠をとることが望ましいとされています。
これらのことから、遺伝的な記憶力の高低に関わらず、工夫や努力によって才能に変えることが可能です。
遺伝子検査で遺伝子タイプを調べることは、才能の開花や早期対策に役立つかもしれません。

作用機序

PCDH20遺伝子は、ヒトの13番染色体に位置し、脳や肺に多く発現しています。特に、記憶に関係する海馬と密接に関係する中隔核にも発現していることがわかっています。(参考リンク4)
しかし、PCDH20の機能や記憶力との関係するメカニズムはまだ解明されていません。
一方、PCDH20の近傍にあるrs9528384は、宣言的記憶と深く関係していることが知られています。これは、PCDH20が神経の結合や海馬を経由した神経回路に関与することから、推測されています。
これらのことから、PCDH20遺伝子とrs9528384領域は、宣言的記憶力と深い関係があることが示唆されています。これらの領域に注目し、今後の研究が期待されます。

遺伝子領域rs9528384において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

95.25% 4.69% 0.06%
  • AA95.25%
  • AG4.69%
  • GG0.06%

遺伝子領域rs9528384において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

55.45% 38.03% 6.52%
  • AA55.45%
  • AG38.03%
  • GG6.52%

遺伝子領域rs3785181において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

11.00% 44.34% 44.66%
  • CC11.00%
  • CT44.34%
  • TT44.66%

遺伝子領域rs3785181において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

81.50% 17.55% 0.94%
  • CC81.50%
  • CT17.55%
  • TT0.94%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:記憶力

体表的なDNA領域:記憶力

記憶力 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs9528384です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • AA

    95.3
    %
  • AG

    4.7
    %
  • GG

    0.1
    %

他に、記憶力に関わる遺伝子領域はrs3785181があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです

  • CC

    11.0
    %
  • CT

    44.3
    %
  • TT

    44.7
    %

検査の根拠

ヘルシンキ大学のLahtiらの研究により、記憶力の違いが遺伝子と関連していることが明らかになりました。人間のゲノムには、rs3785181という領域が存在し、その領域の遺伝子にはCとTの2種類の変異があります。Cタイプの変異を持つ人は、記憶力が高い傾向にあることが分かりました。

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 LINC02339
関連遺伝子 GAS8

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 LINC02339
  • 参考リンク : 2015 Apr、Stéphanie Debetteと研究グループがBiol Psychiatry に発表したGenome-wide studies of verbal declarative memory in nondemented older people: the Cohorts for Heart and Aging Research in Genomic Epidemiology consortiumという研究によると記憶力 に関連するrs9528384の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 GAS8
  • 参考リンク : 2022 Nov、Jari Lahtiと研究グループがMol Psychiatry に発表したGenome-wide meta-analyses reveal novel loci for verbal short-term memory and learningという研究によると記憶力 に関連するrs3785181の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 LINC02339
  • 参考リンク : 2015 Apr、Stéphanie Debetteと研究グループがBiol Psychiatry に発表したGenome-wide studies of verbal declarative memory in nondemented older people: the Cohorts for Heart and Aging Research in Genomic Epidemiology consortiumという研究によると記憶力 に関連するrs9528384の関連性が認められました。