髄膜腫
- 髄膜腫は脳や脊髄を包む膜(髄膜)からできる腫瘍で、脳腫瘍全体の約36%を占め、約90%が良性(世界保健機関の分類で最も悪性度が低い「グレード1」)です。
- DNA領域rs1801394のG型を持つ人は髄膜腫にかかりやすい傾向があることが、複数の研究結果をまとめて分析する研究(メタアナリシス)で判明しました。
- 日本人ではAA型48.5%・AG型42.2%・GG型9.1%の割合で、世界平均とくらべてGを持つ人の割合が低いです。
概要
【病気の概要】 髄膜腫は、脳や脊髄を包む膜(髄膜)からできる脳の腫瘍です。 ふつうはゆっくり大きくなる良性の腫瘍で、がん細胞を含まず、まわりの組織や体の他の場所に広がる(転移する)ことはありません。
【治療と注意点】 ただし、できた場所や大きさによっては体に悪い影響が出て、治療が難しくなることがあります。 髄膜腫になると、頭痛、ものがぼやけて見える、けいれん発作、手足のまひなどの症状が出ることがあります。 また、病気が進むと、もの忘れなどが起こることもあります。 髄膜腫が大きくなる速さや大きさは人によって違い、診断には磁気共鳴画像検査(強い磁石を使って体の中を撮影する検査)やコンピュータ断層撮影(エックス線で体の断面を撮影する検査)などの画像検査が使われます。 腫瘍が小さく症状がないときは定期的に様子を見て、腫瘍が大きく症状があるときは手術や放射線治療などが行われます。
【遺伝子との関係】 滄州中央病院のHanらの研究により、髄膜腫へのかかりやすさがrs1801394というDNA領域と関係していることが明らかになりました。 このDNA領域にはAA、AG、GGの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、髄膜腫にかかりやすい傾向があることが分かりました。
髄膜腫とは何か
髄膜腫は、脳や脊髄を包む膜(髄膜)のくも膜細胞からできる脳腫瘍で、脳腫瘍全体の約36%を占め、脳の中から発生する脳腫瘍(原発性脳腫瘍)の中で最も多いものです。10万人あたり約8.3人に発生し、女性は男性の約2倍かかりやすいです。
約90%は良性(世界保健機関の分類で最も悪性度が低い「グレード1」)で、ゆっくり大きくなり、がん細胞を含まず、まわりの組織や他の臓器に広がることはまれです。ただし、できた場所や大きさによっては脳や脊髄を押しつぶし、重い神経の症状を引き起こすことがあります。
髄膜腫の原因とかかりやすくなる要因
髄膜腫ができる正確な原因はまだはっきり分かっていませんが、次のような、かかりやすくなる要因が分かっています。
- 遺伝子の影響:MTRRという遺伝子の近くにあるDNA領域rs1801394のG型が、かかりやすさを高めます。
- 性別:女性は男性の約2倍かかりやすいです(ホルモンが関わっている可能性があります)。
- 放射線を浴びること:頭部に放射線を当てる治療を受けたことがあると、かかりやすくなります。
- 神経線維腫症2型(神経に腫瘍ができやすい遺伝性の病気):この病気の原因となる遺伝子の変化を持つ人は、髄膜腫になる割合が高いです。
- 年齢:40〜70歳代に多く、年を取るとともにかかりやすくなります。
髄膜腫の主な症状
症状は腫瘍のできた場所と大きさによって違い、小さい腫瘍では症状が出ないこともあります。
- 頭痛(ずっと続く、またはだんだん強くなる)
- 見え方の異常(ぼやける・見える範囲がせまくなる・ものが二重に見える)
- けいれん発作
- 手足のまひが起こり、力が入らなくなります。
- 聞こえにくさ・耳鳴り
- もの忘れ・考える力の低下
- においが分からなくなります。
腫瘍が大きくなると脳を押しつぶし、頭の中の圧力が高くなること(頭蓋内圧亢進)によって、吐き気や意識障害(意識がはっきりしなくなること)を引き起こすおそれがあります。
髄膜腫と他の脳腫瘍の違い
| 比較項目 | 髄膜腫 | 神経膠腫(グリオーマ) |
|---|---|---|
| できる場所 | 髄膜(脳の外側の膜) | 脳そのもの(神経膠細胞) |
| 良性の割合 | 約90%が良性 | 悪性が多い |
| 進行速度 | ゆっくり(数年〜数十年) | 速い(数ヶ月〜数年) |
| かかりやすい年齢 | 40〜70歳代 | 全年齢 |
| 手術ですべて取り除ける割合 | 高い | 低い(腫瘍の境目がはっきりしない) |
| 5年生存率 | 約95%以上(グレード1) | 約5〜35%(悪性度によって違う) |
髄膜腫の診断方法
以下の画像検査により診断されます。
- 磁気共鳴画像検査(強い磁石を使って体の中を撮影する検査):腫瘍の場所・大きさ・まわりの組織との関係を調べる、最初に行われる検査です。
- コンピュータ断層撮影(エックス線で体の断面を撮影する検査):骨への広がり(浸潤)や石灰化(カルシウムがたまること)を調べるのに役立ちます。
- 脳血管造影(造影剤を使って血管を写す検査):腫瘍に血液がどう流れているかを調べます(手術の計画に利用します)。
髄膜腫の治療法
治療の方針は、腫瘍の大きさ・場所・症状があるかどうかによって決まります。
- 経過観察:腫瘍が小さく症状がない場合、3〜6ヶ月ごとに定期的な磁気共鳴画像検査を行います。
- 手術で取り除く:症状がある場合に最初に検討される治療です。すべて取り除けた場合の再発率は約10〜20%です。
- 定位放射線治療:ガンマナイフ・サイバーナイフで、体を切らずに放射線を集中して当てる治療(3cm以下の腫瘍が対象)です。
- 分割放射線治療(放射線を何回かに分けて当てる治療):手術ですべて取り除けなかった場合や再発した場合に使われます。
遺伝子と髄膜腫の関連
DNA領域rs1801394とかかりやすさの関係
滄州中央病院のHanらの研究(2017年、複数の研究結果をまとめて分析するメタアナリシス)により、MTRRという遺伝子の近くにあるDNA領域rs1801394が、髄膜腫へのかかりやすさと関係していることが分かりました。
- rs1801394にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型が存在します。
- G型を持つAG型・GG型は髄膜腫になりやすい傾向があります。
- AA型はくらべるとかかりにくいです。
ただし、AG型やGG型の人が必ず髄膜腫になるわけではなく、放射線を浴びること・ホルモン・年齢などの環境の要因が重なることで、かかりやすさが高まります。
日本人の遺伝子型の割合(rs1801394)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| AA型 | 48.5% | 23.5% |
| AG型 | 42.2% | 49.9% |
| GG型 | 9.1% | 26.5% |
日本人はかかりにくいタイプのAA型の割合が48.5%で、世界平均(23.5%)を大きく上回ります。かかりやすいタイプのGG型は9.1%で、世界平均(26.5%)の約3分の1です。
しくみ:遺伝子MTRRと葉酸代謝の関係
遺伝子MTRRはメチオニン合成酵素還元酵素という酵素を作る設計図で、葉酸(ビタミンの一種)の代謝や、DNAメチル化(遺伝子の働きを調節するしくみ)に関わります。
- DNA領域rs1801394のG型 → MTRRが作る酵素の働きが弱まります。
- 葉酸の代謝の異常 → DNAを作ったり修復したりする働きが乱れます。
- DNAメチル化(遺伝子の働きのオン・オフを調節するしくみ)の変化 → がんを抑える遺伝子が働かなくなります。
- くも膜細胞が異常に増える → 髄膜腫ができます。
このしくみにより、MTRR遺伝子のG型を持つ人は髄膜腫を発症しやすくなると考えられています。
検査の根拠
代表的なDNA領域:髄膜腫
髄膜腫に最も強く影響するDNA領域は、rs1801394です。 日本におけるこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- AA
48.5 % - AG
42.2 % - GG
9.1 %
検査の根拠
滄州中央病院のHanらの研究(2017年)により、髄膜腫へのかかりやすさが遺伝子と関係していることが明らかになりました。人のDNAにはrs1801394という場所があり、そこにはAとGの2種類のタイプがあります。G型を持つ人(AG型・GG型)は、髄膜腫にかかりやすい傾向があることが分かりました。日本人ではAA型48.5%、AG型42.2%、GG型9.1%の割合で、世界平均とくらべてGを持つ人の割合が低いことが特徴です。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | MTRR |
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よくある質問
Q1. 髄膜腫とは何ですか?
髄膜腫は、脳や脊髄を包む膜(髄膜)のくも膜細胞からできる腫瘍で、脳腫瘍全体の約36%を占め、脳の中から発生する脳腫瘍(原発性脳腫瘍)の中で最も多いものです。約90%が良性(世界保健機関の分類で最も悪性度が低い「グレード1」)でゆっくり大きくなり、10万人あたり約8.3人に発生します。女性は男性の約2倍かかりやすいです。
Q2. 髄膜腫の原因は何ですか?
髄膜腫の正確な原因はまだはっきり分かっていませんが、遺伝子の影響・放射線を浴びること・ホルモン・加齢が、かかりやすくなる要因として分かっています。MTRRという遺伝子の近くにあるDNA領域rs1801394のG型が、かかりやすさを高めることが研究で分かっています。
Q3. 髄膜腫と他の脳腫瘍の違いは?
髄膜腫は脳の外側の膜(髄膜)から発生し、約90%が良性で、手術で腫瘍をすべて取り除ける割合が高い腫瘍です。一方、神経膠腫(グリオーマ)は脳そのもの(脳実質)から発生し、悪性度が高く、手術ですべて取り除くのが難しい傾向があります。
Q4. 遺伝子検査で髄膜腫へのかかりやすさは分かりますか?
DNA領域rs1801394の遺伝子型を調べることで、髄膜腫へのかかりやすさの傾向を知ることができます。G型(AG型・GG型)を持つ人はかかりやすい傾向があることが、複数の研究結果をまとめて分析する研究(メタアナリシス)で分かっています。
Q5. 髄膜腫の治療法にはどのようなものがありますか?
腫瘍が小さく症状がない場合は定期的な磁気共鳴画像検査での経過観察を行います。症状がある場合は手術で腫瘍を取り除くことが最初に検討されます。手術が難しい場合や再発した場合には定位放射線治療(ガンマナイフ・サイバーナイフ)が使われます。