メトトレキサートの効きやすさ
- メトトレキサートは葉酸の働きをじゃまして細胞が増えるのをおさえる薬で、がんや自己免疫疾患の治療に使われます。
- DNA領域rs1805087のAタイプを持つ人はメトトレキサートがよく効きやすい傾向があることが研究で分かりました。
- 関係する遺伝子はMTR(メチオニン合成酵素)で、日本人のAA型の割合は66.7%、世界平均65.3%とほぼ同じです。
概要
【疾患の概要】 メトトレキサートは、がんの治療薬として、また免疫(体を守るしくみ)の働きをおさえる薬として、広く使われています。白血病、リンパ腫、乳がんなどのがんや、関節リウマチ、乾癬(皮膚の病気)などの自己免疫疾患(免疫が自分の体を攻撃してしまう病気)の治療に使われます。 この薬は、葉酸(ビタミンの一種)の働きをじゃますることで、細胞がDNAを作るのを妨げ、細胞が増えるのをおさえます。
【症状と特徴】 そのため、特にどんどん増えるがん細胞によく効きます。 しかし、正常な細胞にも影響するため、副作用として、骨髄(血液を作る場所)の働きの低下、口内炎、胃腸の不調、肝臓への負担などが起こることがあります。
【治療と注意点】 また、免疫の働きをおさえるため、病原体と戦う白血球が減り、いろいろな感染症にかかりやすくなります。 これらの副作用の重さは、薬の量や治療期間など、一人ひとりの状態によって大きく異なります。 メトトレキサートはさまざまな治療に使える、多くの患者さんにとって役立つ薬ですが、定期的に受診して、副作用をできるだけ小さくおさえることが大切です。
【遺伝子の影響】 CESPU(ポルトガルの大学)のLimaらの研究により、メトトレキサートの効き方がrs1805087というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはAA、AG、GGの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、メトトレキサートがよく効きやすい傾向があることが分かりました。
メトトレキサートとは何か
メトトレキサートは、葉酸(ビタミンの一種)の働きをじゃますることで、細胞がDNAを作るのを妨げ、細胞が増えるのをおさえる薬です。がんの治療薬、そして免疫の働きをおさえる薬として、白血病・リンパ腫・乳がんなどのがんや、関節リウマチ・乾癬などの自己免疫疾患(免疫が自分の体を攻撃してしまう病気)の治療に広く使われています(1)。
メトトレキサートが効くしくみ
メトトレキサートは次のしくみで治療効果を発揮します。
- 葉酸の働きをじゃまする:葉酸を使える形に変える酵素(ジヒドロ葉酸還元酵素)の働きを止め、DNA作りに必要な葉酸を使えなくします。
- 細胞が増えるのをおさえる:どんどん増えるがん細胞がDNAを作るのを止めます。
- 免疫をおさえる働き:異常に活発になった免疫細胞が増えるのをおさえ、自分の体を攻撃する免疫の反応を弱めます。
メトトレキサートが使われる主な病気
メトトレキサートは次の病気の治療に効果があるとされています。
- がん:白血病、リンパ腫、乳がん、骨肉腫(骨のがん)
- 自己免疫疾患:関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス(全身に炎症が起こる病気)
- その他:異所性妊娠(子宮の外での妊娠)、炎症性腸疾患(腸に炎症が続く病気)
メトトレキサートの副作用と注意点
メトトレキサートは正常な細胞にも影響するため、副作用に注意が必要です。
| 副作用の種類 | 症状 | 副作用の重さに影響すること |
|---|---|---|
| 骨髄の働きの低下 | 白血球・赤血球・血小板の減少 | 薬の量・治療期間 |
| 口内炎 | 口の中の粘膜の炎症・ただれ | 葉酸を補っているかどうか |
| 胃腸の不調 | 吐き気・下痢・食欲不振 | 薬の使い方・量 |
| 肝臓への負担 | 肝臓の働きの低下・肝臓が硬くなることがあります。 | これまでに使った薬の総量・飲酒歴 |
| 感染症にかかりやすくなります。 | 免疫が弱まることによる感染症 | その人の遺伝子・一緒に使う薬 |
定期的に受診して血液検査を受け、副作用を早く見つけて、できるだけ小さくおさえることが大切です。
遺伝子とメトトレキサートの効き方の関係
DNA領域rs1805087とメトトレキサートの効き方の関係
CESPU(ポルトガルの大学)のLimaらの研究(1)により、DNA領域rs1805087がメトトレキサートの効き方と関係していることが分かりました。
- rs1805087にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型が存在します。
- Aタイプを持つ遺伝子型の人は、メトトレキサートがよく効きやすい傾向があります。
- 関係する遺伝子はMTR(5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼという酵素を作る遺伝子)です。
日本人における遺伝子型分布(rs1805087)
日本人と世界の遺伝子型の割合はほぼ同じです。
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 | 違い |
|---|---|---|---|
| AA型 | 66.7% | 65.3% | +1.4ポイント |
| AG型 | 29.8% | 31.0% | −1.2ポイント |
| GG型 | 3.3% | 3.6% | −0.3ポイント |
検査の理論的な根拠
代表的なDNA領域:メトトレキサートの効きやすさ
メトトレキサートの効きやすさに最も強く影響するDNA領域は、rs1805087です。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下のとおりです。
- AA
66.7 % - AG
29.8 % - GG
3.3 %
検査の根拠
CESPU(ポルトガルの大学)のLimaらの研究(1)により、メトトレキサートの効き方が遺伝子と関係していることが明らかになりました。人間のDNAには、rs1805087という場所があり、そこにはAとGの2種類のタイプがあります。Aタイプを持つ人は、メトトレキサートがよく効きやすい傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | MTR |
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よくある質問
Q1. メトトレキサートとは何ですか?
メトトレキサートは、葉酸(ビタミンの一種)の働きをじゃますることで、細胞がDNAを作るのをおさえる薬です。白血病・リンパ腫・乳がんなどのがんや、関節リウマチ・乾癬などの自己免疫疾患の治療に広く使われています(1)。
Q2. メトトレキサートの効果に関連する遺伝子は何ですか?
CESPU(ポルトガルの大学)のLimaらの研究により、DNA領域rs1805087がメトトレキサートの効き方と関係していることが分かりました。Aタイプを持つ人はメトトレキサートがよく効きやすい傾向があり、関係する遺伝子はMTRです(1)。
Q3. メトトレキサートの主な副作用は何ですか?
主な副作用は骨髄の働きの低下・口内炎・胃腸の不調・肝臓への負担です。免疫の働きをおさえるため白血球が減り、感染症にかかりやすくなります。副作用の重さは、薬の量・治療期間・その人の遺伝子などによって異なります。
Q4. 遺伝子検査でメトトレキサートの効果は分かりますか?
DNA領域rs1805087の遺伝子型を調べることで、メトトレキサートの効きやすさの傾向を知ることができます。AA型(日本人の66.7%)の人はメトトレキサートがよく効きやすい傾向があることが研究で分かっています(1)。
Q5. メトトレキサートの効き方に関わる遺伝子型の、日本人の特徴は?
日本人のrs1805087の遺伝子型の割合は、AA型66.7%・AG型29.8%・GG型3.3%です。世界平均(AA型65.3%・AG型31.0%・GG型3.6%)とほぼ同じで、日本人と世界の遺伝子型の割合に大きな違いはありません(1)。