多発性慢性疼痛
概要
1. 概要
肩や腰、関節などの痛みに悩んでいませんか?それが「慢性疼痛」と呼ばれる症状である場合、痛みが3ヶ月以上続く状態となります(参考リンク1)。
この症状は、睡眠障害や食欲減退、抑うつなどの原因にもなりえます。慢性疼痛の原因は、骨折や手術、関節炎、ストレスなど様々です。
また、不安感が続くことで脳が過敏になり、けがが治っていても痛みが取れない可能性があります。驚くべきことに、慢性疼痛の起こりやすさに遺伝的要因が関与していると言われています(参考リンク2)。
もし慢性的な体の痛みにお悩みであれば、一度遺伝子検査で体質を調べてみませんか?
2. 理論的根拠
神経伝達に起因する慢性疼痛の原因遺伝子の一つとして見つかったのが13番染色体に存在する「AL450423.1」という遺伝子で、この遺伝子に属する様々な遺伝子タイプの一つが「rs1443914」と呼ばれるDNA領域です(参考リンク2)。
この領域は38万人のイギリス人を対象に遺伝的変異を調べた解析で、慢性疼痛に関連して変異があるDNA領域として発見されました(参考リンク2)。
「AL450423.1」は自身がタンパク質になる機能を持たない遺伝子ですが、神経伝達に関連した遺伝子の発現を調節する機能を持ちます。
この遺伝子の「rs1443914」の領域に変異があると、神経伝達に関わる遺伝子の発現が障害され慢性疼痛になりやすいことがわかりました。
「rs1443914」には「TT型」, 「TC型」,「CC型」の3つの遺伝子型があります。日本人のタイプ別割合は 23.1%、49.9%、27.0%になっています(参考リンク3)。
Tを含む変異型では神経伝達に関わる遺伝子が抑制され慢性疼痛を起こしやすく、特に「TT型」はリスクがほかの型よりも高くなる可能性があります。
また「TT型」を持つ人は、うつ病、PTSDなどの神経疾患や、免疫系の疾患、ガンにもなりやすいとの報告があります(参考リンク4)。
3. 作用機序
慢性疼痛は、感覚神経において、遺伝子の発現が障害され、正常な神経伝達が行えなくなっている状態です。特に、痛みを和らげる役割の神経伝達物質が減少することやうまく働かなくなることで痛みを過剰に感じやすくなります。
DNA領域「rs1443914」に変異があると、遺伝子「AL450423.1」が神経伝達に関係した遺伝子の発現を抑制し、セロトニンやノルアドレナリンの作用を抑え、痛みが感じやすくなるとされます。
また、「慢性疼痛」が進行すると、うつ病などの神経疾患になりやすいと考えられます。
これは、セロトニンが不安を和らげ、ノルアドレナリンが意欲を高める機能を持つため、これらが作用しなくなることで不安や無気力になるためです(参考リンク5)。
慢性疼痛の原因の多くが心理的要因であることから、医療機関で適切な治療を受けることは有効な手段であるといえます。
また、この遺伝子に変異がある方は、他の精神疾患のリスクも高くなるため、不安なことは溜め込まず、相談して解決することが重要になってきます。
遺伝子領域rs1443914において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT21.30%
- TC49.70%
- CC28.99%
遺伝子領域rs1443914において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- TT21.46%
- TC49.73%
- CC28.81%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:多発性慢性疼痛
体表的なDNA領域:多発性慢性疼痛
多発性慢性疼痛 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs1443914です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
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TT
21.3% -
TC
49.7% -
CC
29.0%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | RN7SL618P |
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参考文献
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関連遺伝子 RN7SL618P
- 参考リンク : 2019 Jun、Keira J A Johnstonと研究グループがPLoS Genet に発表したGenome-wide association study of multisite chronic pain in UK Biobankという研究によると多発性慢性疼痛 に関連するrs1443914の関連性が認められました。