骨髄異形成症候群
- 骨髄異形成症候群は、骨髄で血液のもとになる細胞(造血幹細胞)に異常が起こり、正常な血液細胞を作れなくなる血液の病気で、貧血・感染症にかかりやすい・出血しやすいといった症状が主です。
- DNA領域rs11872481のGタイプを持つ人は発症リスクが高い傾向にあることが、米国国立心肺血液研究所の研究で判明しました。
- 赤血球分布幅の上昇が早期発見の手がかりとなり、骨髄の検査や染色体の検査ではっきり診断できます。
概要
【疾患の概要】 赤血球分布幅は、赤血球の大きさのばらつきを表す血液検査の数値です。 ふつう、赤血球の大きさはほぼそろっているため、この数値は低くなります。
【症状と特徴】 しかし、貧血や栄養不足、血液の病気があると、赤血球の大きさにばらつきが出て、赤血球分布幅の数値が高くなります。 骨髄異形成症候群の患者さんには、貧血、顆粒球(細菌と戦う白血球の一種)の減少、血小板の減少などの症状が出て、生活に大きな影響が出ます。 赤血球分布幅と骨髄異形成症候群には関係があり、この病気の患者さんでは、骨髄で血液を作るはたらきがうまくいかないため、赤血球の大きさにばらつきが出ます。 そのため、赤血球分布幅の数値が上がっていると、骨髄異形成症候群の可能性があります。 ただし、この数値は骨髄異形成症候群以外の原因でも上がることがあります。 たとえば、鉄が足りないことによる貧血、ビタミンB12の不足、そのほかの長く続く病気でも上がることがあります。 また、骨髄異形成症候群の患者さん全員でこの数値が上がるわけではありません。
【治療と注意点】 そのため、赤血球分布幅の異常は、血液中の細胞の数を調べる検査(全血球計算)、骨髄の細胞の形を見る検査、染色体を調べる検査などの結果と合わせて判断する必要があります。 赤血球分布幅は血液検査の項目の一つで、数値の上昇に気づくことで骨髄異形成症候群の早期発見につながる可能性があります。ただし、骨髄異形成症候群以外の、骨髄がうまくはたらかなくなる病気にも注意が必要です。
【遺伝的リスク】 米国国立心肺血液研究所のChenらの研究により、骨髄異形成症候群になるリスクがrs11872481というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはGG、AG、AAの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、骨髄異形成症候群のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
骨髄異形成症候群とは何か
骨髄異形成症候群は、骨髄で血液のもとになる細胞(造血幹細胞)に異常が起こり、赤血球・白血球・血小板などの正常な血液細胞を十分に作れなくなる血液の病気のグループです。急性骨髄性白血病に進むリスクがあるため、早く見つけることが大切です(1)。
骨髄異形成症候群の原因とメカニズム
骨髄異形成症候群の発症には、造血幹細胞の遺伝子の変化が深く関わっています。
- 造血幹細胞の異常:骨髄の中の造血幹細胞に遺伝子の変化が積み重なり、正常な血液細胞が育つ流れがじゃまされます。
- 血液がうまく作られない状態:骨髄で血液細胞は作られるものの、形に異常(異形成)があるため正常にはたらかず、血液中の成熟した細胞が減ります。
- 加齢:60歳以上の人に多く、年齢とともに遺伝子の変化が積み重なることでリスクが高まります。
- ほかの治療が原因のもの:過去に受けた抗がん剤治療・放射線治療や、ベンゼンなどの化学物質にさらされたことが原因になる場合があります。
骨髄異形成症候群の主な症状
骨髄異形成症候群の症状は血球減少の種類と程度によって異なります。
- 貧血症状:疲れやすい・息切れ・顔色が青白くなります(赤血球が減るため)。
- 感染症の増加:発熱・感染をくり返します(細菌と戦う白血球=顆粒球が減るため)。
- 出血しやすさ:あざができやすい・歯ぐきや鼻からの出血が起こります(血小板が減るため)。
骨髄異形成症候群と類似疾患の違い
| 比較項目 | 骨髄異形成症候群 | 再生不良性貧血 |
|---|---|---|
| 病態 | 造血幹細胞そのものの異常 | 造血幹細胞の減少 |
| 骨髄 | 細胞は多めかふつうです(形の異常があります)。 | 細胞が少ないです(脂肪に置き換わります)。 |
| 白血病に進むか | 急性骨髄性白血病に進むリスクあり | まれ |
| かかりやすい年齢 | 60歳以上の人 | 若い人にも起こります。 |
| 遺伝子の異常 | rs11872481のGタイプが関係しています。 | 免疫の異常(白血球の型に関係するもの) |
赤血球分布幅と骨髄異形成症候群の関係
赤血球分布幅は、赤血球の大きさのばらつきを表す血液検査の数値です。ふつう、赤血球の大きさはほぼそろっているため、この数値は低くなります。
- 骨髄異形成症候群の患者さんでは、骨髄で血液を作るはたらきがうまくいかないため、赤血球の大きさにばらつきが出て、赤血球分布幅の数値が上がります。
- 赤血球分布幅の上昇は早期発見の手がかりになりますが、鉄が足りないことによる貧血・ビタミンB12の不足など、ほかの原因でも上がります。
- はっきり診断するには血液中の細胞の数を調べる検査・骨髄の細胞の形を見る検査・染色体を調べる検査を組み合わせて総合的に判断する必要があります。
骨髄異形成症候群の治療法
骨髄異形成症候群の治療はリスクの分類に基づいて選択されます。
- リスクが低いタイプ:症状をやわらげる治療(輸血・赤血球を増やす薬のエリスロポエチン製剤)、レナリドミドです。
- リスクが高いタイプ:アザシチジン・デシタビンなどの、遺伝子のはたらきを調整する薬(脱メチル化薬)です。
- 造血幹細胞移植:完全に治ることが期待できる唯一の治療法です(受けられるかどうかは年齢や体の状態によります)。
遺伝子と骨髄異形成症候群の関連
DNA領域rs11872481と発症リスクの関係
米国国立心肺血液研究所のChenらの研究(1)により、DNA領域rs11872481が骨髄異形成症候群になるリスクと関係していることが分かりました。
- rs11872481にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型があります。
- Gタイプを持つ遺伝子型(GG型・GA型)の人は、骨髄異形成症候群のリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型の割合(rs11872481)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 99.9% | 79.4% |
| GA型 | 0.1%以下 | 19.3% |
| AA型 | 0.1%以下 | 1.1% |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:骨髄異形成症候群
骨髄異形成症候群 に最も強く影響するDNA領域は、rs11872481です。 日本におけるこの場所の遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- GG
99.9 % - GA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
検査の根拠
米国国立心肺血液研究所のChenらの研究により、骨髄異形成症候群になるリスクが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs11872481という場所があり、そこにはGとAの2種類のタイプがあります。Gタイプを持つ人は、骨髄異形成症候群のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | NDUFV2-AS1 |
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よくある質問
Q1. 骨髄異形成症候群とは何ですか?
骨髄異形成症候群は、骨髄で血液のもとになる細胞(造血幹細胞)に異常が起こり、赤血球・白血球・血小板などの正常な血液細胞を十分に作れなくなる血液の病気のグループです。貧血・感染症にかかりやすい・出血しやすいといった症状が主で、急性骨髄性白血病に進むリスクがあります(1)。
Q2. 骨髄異形成症候群の原因は何ですか?
主な原因は造血幹細胞の遺伝子の変化です。年齢を重ねること、過去に受けた抗がん剤治療や放射線治療、ベンゼンなどの化学物質にさらされることがリスクを高めます。DNA領域rs11872481のGタイプも、発症リスクと関係していることが分かっています(1)。
Q3. 遺伝子検査で骨髄異形成症候群のリスクは分かりますか?
DNA領域rs11872481の遺伝子型を調べることで、骨髄異形成症候群になりやすさの傾向を知ることができます。Gタイプを持つ遺伝子型(GG型・GA型)の人はリスクが高い傾向にあることが、米国国立心肺血液研究所の研究で分かっています(1)。
Q4. 赤血球分布幅と骨髄異形成症候群の関係は何ですか?
赤血球分布幅は、赤血球の大きさのばらつきを表す血液検査の数値です。骨髄異形成症候群の患者さんでは、骨髄で血液を作るはたらきがうまくいかないため、赤血球の大きさにばらつきが出て、この数値が上がります。数値の上昇は早期発見の手がかりになりますが、はっきり診断するには骨髄の検査が必要です。
参考文献
- 参考リンク1 : 2020 Sep., Ming-Huei Chen, Cell