骨髄増殖性腫瘍
- 骨髄増殖性腫瘍(MPN)は造血幹細胞の異常により血液細胞が過剰増殖する悪性腫瘍疾患で、真性多血症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症・慢性骨髄性白血病の4病型に分類される
- DNA領域rs1076415のT型変異を持つ人は発症リスクが高い傾向にあることがフレッド・ハッチンソンがん研究センターの研究で判明
- 初期は無症状の場合が多いが、進行すると血栓・出血・急性白血病への移行リスクがあり、早期発見が重要
概要 骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、造血幹細胞(血液細胞の元となる細胞)に異常が起こることで、赤血球や白血球、血小板などの血液細胞が過度に増殖する悪性腫瘍疾患の一種です。 代表的なMPNには、真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、慢性骨髄性白血病(CML)があります。 MPNの多くの患者は初期段階では症状がなく、健康診断で初めて発見される場合が多くあります。 しかし、進行するとめまい、頭痛、視覚障害、皮膚のかゆみ、骨の痛み、脾臓の腫れなどの症状が現れます。 さらに重症化すると血栓や出血が起こり、一部の患者では急性白血病に進行する場合もあります。 MPNの診断には、血液検査や骨髄細胞の形態学的評価、細胞遺伝学、分子生物学的検査などが必要です。 治療法は病気の種類や重症度によって異なり、抗血小板薬、細胞毒性薬、分子標的薬などが使用されます。 フレッド・ハッチンソンがん研究センターのHuらの研究により、骨髄増殖性腫瘍の罹患リスクがrs1076415というDNA領域と関連していることが明らかになりました。 このDNA領域にはCC、CT、TTの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、骨髄増殖性腫瘍のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
骨髄増殖性腫瘍(MPN)とは何か
骨髄増殖性腫瘍(MPN:Myeloproliferative Neoplasm)は、造血幹細胞(血液細胞の元となる細胞)に異常が生じることで、赤血球・白血球・血小板などの血液細胞が過剰に増殖する悪性腫瘍疾患です。日本におけるMPNの推定患者数は約10万人で、年間発症率は10万人あたり2〜3人とされています(1)。
骨髄増殖性腫瘍の原因とメカニズム
MPNの主な原因は、造血幹細胞における遺伝子変異です。以下の変異が代表的です。
- JAK2 V617F変異:真性多血症の約95%、本態性血小板血症・原発性骨髄線維症の約50〜60%に存在
- CALR変異:JAK2陰性のET・PMFの約25〜30%に検出
- MPL変異:ET・PMFの約3〜5%に存在
- BCR-ABL融合遺伝子:慢性骨髄性白血病の原因(フィラデルフィア染色体)
これらの変異によりJAK-STATシグナル伝達経路が恒常的に活性化され、血液細胞の異常増殖が起こります。
骨髄増殖性腫瘍の4つの病型と特徴
| 病型 | 増殖する細胞 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 真性多血症(PV) | 赤血球 | ヘマトクリット値上昇、血栓リスク増大 |
| 本態性血小板血症(ET) | 血小板 | 血小板数45万/μL以上、出血・血栓リスク |
| 原発性骨髄線維症(PMF) | 線維芽細胞 | 骨髄の線維化、脾腫、貧血 |
| 慢性骨髄性白血病(CML) | 顆粒球 | 白血球数著増、BCR-ABL融合遺伝子陽性 |
骨髄増殖性腫瘍の主な症状
初期段階では無症状の場合が多く、健康診断の血液検査で発見されるケースがあります。進行すると以下の症状が現れます。
- めまい・頭痛・視覚障害(血液粘稠度の上昇による)
- 皮膚のかゆみ(特に入浴後に悪化)
- 骨の痛み・関節痛
- 脾臓の腫れ(左上腹部の膨満感)
- 疲労感・体重減少・寝汗
骨髄増殖性腫瘍の合併症リスク
適切な治療を行わない場合、以下の合併症リスクが上昇します。
- 血栓症(脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症)
- 出血(消化管出血・皮下出血)
- 急性白血病への移行(PMFで約10〜20%、PVで約2〜5%)
- 骨髄線維症への進展(PV・ETから二次性骨髄線維症へ)
診断方法
以下の検査により診断されます。
- 血液検査(血球数・血液像)
- 骨髄生検(骨髄の形態学的評価)
- 遺伝子検査(JAK2・CALR・MPL・BCR-ABL変異)
- 細胞遺伝学的検査(染色体異常の評価)
治療法
治療法は病型と重症度により異なります。
- 低用量アスピリン:血栓予防の基本治療
- 瀉血療法:真性多血症のヘマトクリット値コントロール(目標値45%未満)
- ヒドロキシウレア:細胞減少療法の第一選択薬
- JAK阻害薬(ルキソリチニブ):骨髄線維症・真性多血症の分子標的薬
- インターフェロンα:若年患者への長期治療
- 同種造血幹細胞移植:骨髄線維症の根治的治療(適応が限定的)
遺伝子と骨髄増殖性腫瘍の関連
DNA領域rs1076415と発症リスクの関係
フレッド・ハッチンソンがん研究センターのHuらの研究(1)により、DNA領域rs1076415が骨髄増殖性腫瘍の罹患リスクと関連していることが判明しました。
- rs1076415にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型が存在
- T型変異を持つ遺伝子型の人は、骨髄増殖性腫瘍のリスクが高い傾向
日本人における遺伝子型分布(rs1076415)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 33.2% | 36.6% |
| CT型 | 48.8% | 47.7% |
| TT型 | 17.8% | 15.6% |
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:骨髄増殖性腫瘍
骨髄増殖性腫瘍 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs1076415です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- CC
33.2 % - CT
48.8 % - TT
17.8 %
他に、骨髄増殖性腫瘍に関わる遺伝子領域はrs148281243があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- GG
50.4 % - GA
41.1 % - AA
8.3 %
他に、骨髄増殖性腫瘍に関わる遺伝子領域はrs41292412があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- CC
99.9 % - CT
0.1%以下 - TT
0.1%以下
他に、骨髄増殖性腫瘍に関わる遺伝子領域はrs374039502があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- TT
99.9 % - TA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
他に、骨髄増殖性腫瘍に関わる遺伝子領域はrs7126413があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- AA
52.7 % - AG
39.7 % - GG
7.5 %
検査の根拠
フレッド・ハッチンソンがん研究センターのHuらの研究により、骨髄増殖性腫瘍の罹患リスクが遺伝子と関連していることが明らかになりました。rs1076415領域にはCとTの2種類の変異があり、T型変異を持つ人は骨髄増殖性腫瘍のリスクが高い傾向にあります(1)。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | VWF |
|---|---|
| 関連遺伝子 | UTP14A |
| 関連遺伝子 | MIR3591 |
| 関連遺伝子 | TNFSF13B |
| 関連遺伝子 | ARHGEF12 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 骨髄増殖性腫瘍(MPN)とは何ですか?
骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、造血幹細胞の異常により赤血球・白血球・血小板が過剰に増殖する悪性腫瘍疾患です。代表的な病型には真性多血症(PV)、本態性血小板血症(ET)、原発性骨髄線維症(PMF)、慢性骨髄性白血病(CML)があります(1)。
Q2. 骨髄増殖性腫瘍の原因は何ですか?
主な原因は造血幹細胞における遺伝子変異です。JAK2 V617F変異が真性多血症の約95%に存在します。DNA領域rs1076415のT型変異保有者はMPNリスクが高い傾向にあります(1)。
Q3. 骨髄増殖性腫瘍の症状は?
初期段階では無症状の場合が多く、健康診断で発見されるケースがあります。進行するとめまい・頭痛・視覚障害・皮膚のかゆみ・脾臓の腫れなどが現れます。
Q4. 遺伝子検査で骨髄増殖性腫瘍のリスクは分かりますか?
DNA領域rs1076415の遺伝子型を調べることで、骨髄増殖性腫瘍の発症リスク傾向を把握できます。T型変異を持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることがフレッド・ハッチンソンがん研究センターの研究で判明しています(1)。
Q5. 骨髄増殖性腫瘍の治療法は?
治療法は病型と重症度により異なります。低用量アスピリン(血栓予防)、ヒドロキシウレア(細胞減少療法)、JAK阻害薬ルキソリチニブ(分子標的薬)などが使用されます。真性多血症では瀉血療法も標準治療の一つです(1)。
参考文献
- 参考リンク1 : 2021 Jun., Yao Hu, BMC Genomics
- 参考リンク2 : 2020 Sep., Dragana Vuckovic, Cell
- 参考リンク3 : 2020 Sep., Ming-Huei Chen, Cell