腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)
- 腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)は小児腎臓がんの90%を占める悪性腫瘍であり、日本では年間70〜100例が発症し、発生率は1.2〜1.5万人に1人です。
- DNA領域rs5955543の遺伝子型の違いがウィルムス腫瘍の発症リスクに影響を与えていることがイギリスのがん研究所の研究で判明しています。
- 腎臓以外に転移していない場合の治癒率は60〜90%であり、遺伝子検査による早期発見が治療成功の鍵を握ります。
概要
【概要・特徴】 ウィルムス腫瘍(腎芽腫)は、小児の三大固形悪性腫瘍(かたまりをつくるがん)の一つであり、小児に発症する腎臓がんの90%を占めるとされています。 日本では年間に70〜100例が発症していると推測されており、発生率は1.2~1.5万人に1人とされています。 成人でも発症する可能性はありますが、3歳以下の幼児に多く、四肢変形や停留精巣(陰嚢の中に精巣が入っていない状態)などの生まれつきの体の形の異常や、 腹痛、血尿などの症状が出現することがあります。発症メカニズムは明らかになっていませんが、家族内発症の可能性が高いことから、遺伝子の異常が関わっていると考えられています。 最近の研究報告によると、遺伝子「NHS」付近のある部位が「ウィルムス腫瘍」の発症リスクに影響を与えている可能性が高いことが明らかになりました。 治癒率は腎臓以外に転移していない場合は60〜90%とされています。(参考リンク1) 子どもの腫瘍は早期発見が難しいとされていますが、早期発見が大切です。 このことから遺伝子検査により、ご自身の遺伝子タイプを調べて「ウィルムス腫瘍」の発症リスクを知ることで、早期発見・早期治療に役立つことが期待されます。
【2. 理論的根拠】 イギリスのがん研究所による研究で、遺伝子「NHS」付近の特定タイプにより、「ウィルムス腫瘍」を発症しやすい人がいることがわかりました。 この部位は「rs5955543」というDNA領域で「AA型」「AG型」「GG型」の3つの遺伝子型があります。 東アジア人の遺伝子タイプは、「AA型」が49.8%と最も多く、次いで「AG型」が41.5%、「GG型」が8.7%と最も少ないです。(参考リンク2) ただし、「GG型」や「AG型」の人が必ずしも「ウィルムス腫瘍」を発症するわけではありません。 しかし、小児がんの原因は環境要因が加わることが少なく、予防法は明確ではないため、早期発見に努めることが重要です。 例えば、腹部エコー(超音波検査)などの画像検査や血液検査を定期的に受けることが挙げられます。
【3. 作用機序】 「ウィルムス腫瘍」の発症に関連する遺伝子「NHS」は、ヒトに共通する24の染色体のうち、X染色体に位置しています。 この遺伝子は、腎臓や副腎などの組織に多く存在し、これらの組織がつくられる途中ではたらき始めます。(参考リンク3,4) しかし、「NHS」の生物学的な機能についてはまだ不明な点もあります。 しかしながら、「NHS」と「ウィルムス腫瘍」が関連する発症メカニズムとして、 DNA領域「rs5955543」の遺伝子型によって、小児の未熟な腎臓ではたらく「NHS」が何らかのエラーを起こし、腫瘍ができる原因になっているのではないかと考えられています。 これにより、DNA領域「rs5955543」は「ウィルムス腫瘍」の発症に深く関係し、注目されている遺伝子の個人差(一塩基多型)の一つとなっています。
腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)とは何か
腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)とは、小児の三大固形悪性腫瘍(かたまりをつくるがん)の一つであり、小児に発症する腎臓がんの90%を占める悪性腫瘍です。日本では年間70〜100例が発症すると推測されており、発生率は1.2〜1.5万人に1人です。成人でも発症する可能性はありますが、3歳以下の幼児に発症しやすいのが特徴です。
腎芽細胞腫の主な症状とは
腎芽細胞腫の症状は、以下のように分類されます。
主な症状
- 腹痛:腫瘍の増大に伴い腹部に痛みが生じます。
- 血尿:腎臓腫瘍による出血が尿中に確認されます。
- おなかのしこり:体の外から触ってわかるしこりが見つかります。
合併症・関連症状
- 四肢変形:生まれつきの体の形の異常として現れます。
- 停留精巣:陰嚢の中に精巣が入っていない状態をともないます。
腎芽細胞腫はなぜ遺伝子の影響が注目されるのか
腎芽細胞腫の発症メカニズムは完全には解明されていませんが、家族内での発症率が高いことから、遺伝子の異常が関わっている可能性があります。遺伝子検査でご自身の遺伝子タイプを調べることで、発症リスクを知り、早期発見・早期治療に役立つことが期待されます。
腎芽細胞腫の治癒率と早期発見の重要性
| 転移状況 | 治癒率 | 検査方法 |
|---|---|---|
| 腎臓以外に転移なし | 60〜90% | 腹部エコー・血液検査 |
| 転移あり | 治療が困難になる場合があります。 | 画像検査・定期健診 |
小児がんは環境要因の関与が少なく、明確な予防法が確立されていないため、定期的な腹部エコー(超音波検査)や血液検査を活用した早期発見が重要です。(参考リンク1)
遺伝子と腎芽細胞腫の関連
DNA領域rs5955543とウィルムス腫瘍の関係
イギリスのがん研究所による研究で、遺伝子「NHS」付近のDNA領域rs5955543がウィルムス腫瘍の発症リスクに影響を与えていることが明らかになりました。(参考リンク5)
- rs5955543にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型が存在します。
- GG型・AG型の人はウィルムス腫瘍の発症リスクが高い傾向があります。
- 東アジア人の遺伝子タイプ分布:AA型49.8%、AG型41.5%、GG型8.7%です(参考リンク2)。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs5955543)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| AA型 | 45.9% | 89.8% |
| AG型 | 43.6% | 9.8% |
| GG型 | 10.3% | 0.2% |
日本人のGG型を持つ人の割合は10.3%であり、世界平均の0.2%と比較して約51.5倍高い割合です。AG型を含めると日本人の53.9%が発症リスクに関わる遺伝子型を持っており、遺伝子検査で早めにリスクを知ることがすすめられます。
腎芽細胞腫の発症メカニズム(しくみ)
遺伝子「NHS」はどのように腫瘍の発生に関わるのか
ウィルムス腫瘍の発症に関連する遺伝子「NHS」は、ヒトに共通する24の染色体のうちX染色体に位置しています。NHSは腎臓や副腎の組織ではたらき、これらの臓器がつくられる途中で活発になります。(参考リンク3,4)
推測される発症メカニズム
- 遺伝子型の違い:rs5955543の遺伝子型によりNHSのはたらき方が変化します。
- はたらきのエラー:小児の未熟な腎臓ではたらくNHSに異常が起こり、腫瘍ができます。
- 注目の遺伝子の個人差:rs5955543はウィルムス腫瘍の発症に深く関係する遺伝子の個人差(一塩基多型)として注目されています。
発症メカニズムの段階
| 段階 | プロセス | 影響 |
|---|---|---|
| 第1段階 | rs5955543の遺伝子型が決定します。 | リスクの基盤が形成 |
| 第2段階 | NHS遺伝子が腎臓・副腎ではたらきます。 | 組織の発生に関与 |
| 第3段階 | NHSのはたらきにエラーが発生します。 | 腫瘍ができます。 |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)
腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)に最も強く影響するDNA領域は、rs5955543です。日本における各遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- AA
45.9 % - AG
43.6 % - GG
10.3 %
検査の根拠
イギリスのがん研究所の研究により、腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)へのかかりやすさが遺伝子と関連していることが明らかになりました。DNA領域rs5955543にはAA・AG・GGの3種類の遺伝子型があり、GG型・AG型を持つ人はウィルムス腫瘍のリスクが高い傾向にあることがわかっています。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | NHS |
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よくある質問
Q1. 腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)とは何ですか?
腎芽細胞腫(ウィルムス腫瘍)とは、小児の三大固形悪性腫瘍(かたまりをつくるがん)の一つであり、小児に発症する腎臓がんの90%を占める悪性腫瘍です。日本では年間70〜100例が発症しており、発生率は1.2〜1.5万人に1人です。3歳以下の幼児に発症しやすく、腹痛・血尿・四肢変形・停留精巣などの症状が出現します。
Q2. 腎芽細胞腫は遺伝子と関連していますか?
はい。イギリスのがん研究所の研究により、遺伝子「NHS」付近のDNA領域rs5955543がウィルムス腫瘍の発症リスクと関連していることが判明しています。rs5955543にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型があり、GG型・AG型を持つ人は発症リスクが高い傾向にあります。
Q3. 腎芽細胞腫に関する遺伝子型(rs5955543)の日本人における分布は?
日本人におけるrs5955543の遺伝子型分布はAA型45.9%、AG型43.6%、GG型10.3%です。世界全体ではAA型89.8%、AG型9.8%、GG型0.2%であり、日本人はGG型の割合が世界平均の0.2%と比較して約51.5倍高い特徴があります。
Q4. 腎芽細胞腫の治癒率はどのくらいですか?
腎臓以外に転移していない場合、治癒率は60〜90%です。小児がんの早期発見は難しいとされていますが、遺伝子検査で自分のリスクを知り、定期的に腹部エコー(超音波検査)や血液検査を受けることが早期発見・早期治療に役立ちます。
Q5. 腎芽細胞腫の発症メカニズムは?
発症にはX染色体上の遺伝子「NHS」が関与しています。NHSは腎臓や副腎の組織ではたらき、DNA領域rs5955543の遺伝子型の違いにより、小児の未熟な腎臓でNHSのはたらきにエラーが起こり、腫瘍ができるきっかけになると考えられています。NHSの体の中でのはたらきには不明な点が残されていますが、rs5955543はウィルムス腫瘍と深く関連する、注目の遺伝子の個人差(一塩基多型)です。
参考文献
- 参考リンク1 : 「ウィルムス腫瘍」について MSDマニュアル
- 参考リンク2 : DNA領域「rs5955543」の情報 米国国立衛生研究所
- 参考リンク3 : 遺伝子「NHS」の情報 米国国立衛生研究所
- 参考リンク4 : 2022 Jun., Hong-Yan Sun, IJO.
- 参考リンク5 : 2012 Apr., Clare Turnbull, Nat Genet