腎症
- 腎症(ネフローゼ)は糸球体が傷つくことで、尿に大量のタンパク質が出る・血液中のアルブミンが減る・むくみ・血液中の脂質が増えるといった症状が出る腎臓の病気で、きちんと治療しないと腎不全に進むリスクがあります。
- DNA領域rs57225762のTのタイプを持つ人は腎症になるリスクが高い傾向にあることがスタンフォード大学の研究で分かりました。
- 早めの診断・適切な薬による治療・生活習慣の改善により、尿に出るタンパク質を減らし、腎臓の働きを保つことが期待できます。
概要
【疾患の概要】 ネフローゼは腎臓の病気で、尿にたくさんのタンパク質が出る(蛋白尿)、血液中のアルブミンというタンパク質が減る(低アルブミン血症)、体がむくむ(浮腫)、血液中の脂質が増える(高脂血症)といった特徴があります。 これは、腎臓で血液をろ過する「糸球体」が傷ついたり、すき間が大きくなったりして、血液中の大量のタンパク質が尿にもれ出てしまう状態です。
【症状と特徴】 アルブミンは血液中に最も多く含まれるタンパク質の一つです。ネフローゼではこのアルブミンが失われるため、低アルブミン血症が起こります。 また、血液中のタンパク質の総量も減ることがあります。 すると、血管の中に水分を引き止める力(膠質浸透圧)が弱まり、水分が血管の外の組織にたまってむくみが生じます。
【治療と注意点】 ネフローゼの診断とケアには、血液中のタンパク質の総量とアルブミンの量を定期的に調べることが欠かせません。 これにより、病気の状態や治療の効果を確かめます。 血液中のタンパク質の総量が減ることはネフローゼの特徴であり、治療方針を決めるための大切な情報になります。
【遺伝的リスク】 スタンフォード大学のSinnott-Armstrongらの研究により、腎症にかかるリスクがrs57225762というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはCC,CT,TTの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、腎症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
腎症(ネフローゼ)とは何か
腎症(ネフローゼ)は、腎臓で血液をろ過する糸球体が傷ついたり、すき間が大きくなったりして、血液中の大量のタンパク質が尿にもれ出る病気です。尿にたくさんのタンパク質が出る(1日3.5g以上)、血液中のアルブミンが減る(血清アルブミン3.0g/dL以下)、全身のむくみ、血液中の脂質が増える、の4つがおもな特徴です。
腎症の原因とメカニズム
腎症は、糸球体が傷つく原因によって次の2種類に分けられます。
- 一次性ネフローゼ症候群:微小変化型ネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症など、腎臓そのものに原因があります。
- 二次性ネフローゼ症候群:糖尿病性腎症、ループス腎炎、アミロイドーシスなど、体全体に関わる病気にともなって起こります。
アルブミンは血液中に最も多く含まれるタンパク質の一つです。ネフローゼではこのアルブミンが尿に失われることで、低アルブミン血症が起こります。血液中のタンパク質が減ると、血管の中に水分を引き止める力(膠質浸透圧)が弱まり、水分が血管の外の組織にたまってむくみ(浮腫)が起こります。
腎症の主な症状
腎症の症状は次のように進みます。
- 初期:尿の泡立ち(尿にタンパク質が出ているサイン)、顔や足のむくみがあります。
- 中期:全身のむくみ、体重の増加、だるさ、食欲の低下があります。
- 進んだ段階:腎臓の働きの低下、血栓ができるリスクの増加、感染症にかかりやすくなります。
腎症の種類と特徴の比較
| 比較項目 | 微小変化型 | 膜性腎症 | 巣状分節性糸球体硬化症 |
|---|---|---|---|
| かかりやすい年齢 | 小児に多い(2〜6歳) | 成人に多い(40〜60歳) | 全年齢 |
| ステロイドの効きやすさ | 良い(約90%が反応) | 中等度 | 悪い(約50%が反応) |
| 再発率 | 高い(約60〜70%) | 低〜中 | 中〜高 |
| 今後の見通し | 良い | 中等度 | 悪い場合あり |
腎症の合併症のリスク
腎症をきちんと管理しないと、次のような合併症が起こることがあります。
- 血栓症・塞栓症(血のかたまりが血管をふさぐ):血液を固まりにくくする物質(アンチトロンビンIII)が尿に失われ、血のかたまり(血栓)ができるリスクが2〜3倍に上がります。
- 感染症:免疫グロブリン(体を守る抗体)が失われ、細菌による感染に弱くなります。
- 急性腎障害(腎臓の働きが急に落ちる):体をめぐる血液の量が減り、腎臓に流れる血液が減ります。
- 脂質異常症(血液中の脂質のバランスが崩れる):悪玉コレステロールが増えて、動脈硬化(血管が硬くなること)のリスクが高まります。
診断方法
次のような検査を組み合わせて診断します。
- 尿検査(尿に出るタンパク質の量を測る:24時間分の尿をためて1日3.5g以上)
- 血液検査(血清アルブミン・タンパク質の総量・脂質の値)
- 腎生検(腎臓の組織を少し取って、糸球体の状態を顕微鏡で調べる)
- 超音波検査(腎臓の大きさや形を調べる)
治療法と対策
腎症の治療は原因と病型に応じて以下のように行われます。
- ステロイド治療:プレドニゾロン(ステロイド薬)の使用が最初の選択肢です。微小変化型では約90%の患者に効果があります。
- 免疫抑制薬:ステロイドが効きにくい場合は、シクロスポリン・タクロリムスなどを一緒に使います。
- 血圧を下げる薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬・アンジオテンシン受容体拮抗薬):尿に出るタンパク質を減らし、腎臓を守るために使います。
- 食事療法:塩分をひかえ(1日6g未満)、タンパク質をとりすぎないようにします。
- むくみの管理:利尿薬(尿を出しやすくする薬)の使用と水分の管理
遺伝子と腎症の関係
DNA領域rs57225762と腎症になるリスクの関係
スタンフォード大学のSinnott-Armstrongらの研究(1)により、DNA領域rs57225762が腎症にかかるリスクと関係していることが分かりました。
- rs57225762にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型があります。
- Tのタイプを持つ遺伝子型の人は、腎症のリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs57225762)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| CC型 | 42.1% | 47.9% |
| CT型 | 45.5% | 42.6% |
| TT型 | 12.3% | 9.4% |
検査の理論的な根拠
代表的なDNA領域:腎症
腎症 に最も強く影響するDNA領域は、rs57225762です。 日本におけるこの領域の遺伝子型の分布は下記のとおりです。
- CC
42.1 % - CT
45.5 % - TT
12.3 %
検査の根拠
スタンフォード大学のSinnott-Armstrongらの研究により、腎症にかかるリスクが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs57225762という領域があり、この領域にはCとTの2種類のタイプがあります。Tのタイプを持つ人は、腎症のリスクが高い傾向にあることが分かりました(1)。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | COL4A1 |
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よくある質問
Q1. 腎症(ネフローゼ)とは何ですか?
腎症(ネフローゼ)は、腎臓の糸球体が傷つき、血液中のタンパク質が大量に尿へもれ出る病気です。尿にたくさんのタンパク質が出る(1日3.5g以上)、血液中のアルブミンが減る、むくみ、血液中の脂質が増える、の4つがおもな特徴です。きちんと治療しないと腎不全(腎臓がほとんど働かなくなる状態)に進むリスクがあります(1)。
Q2. 腎症の原因は何ですか?
腎症の原因は糸球体が傷ついたり、すき間が大きくなったりすることです。腎臓そのものに原因がある一次性(微小変化型、膜性腎症、巣状分節性糸球体硬化症など)と、ほかの病気が原因の二次性(糖尿病性、ループス腎炎など)に分けられます。遺伝子の影響としては、DNA領域rs57225762のTのタイプがリスクに関わっています(1)。
Q3. 腎症の初期症状は?
最も目立つ初期症状は尿の泡立ち(尿にタンパク質が出ているサイン)と顔や足のむくみです。特に朝起きたときの顔のむくみや、夕方の足のむくみが目立ちます。進行すると全身のむくみ、体重の増加、だるさが出てきます。
Q4. 遺伝子検査で腎症のリスクは分かりますか?
DNA領域rs57225762の遺伝子型を調べることで、腎症になるリスクの傾向を知るできます。Tのタイプを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが、スタンフォード大学のSinnott-Armstrongらの研究で分かっています(1)。