seeDNAロゴアイコン ネフローゼ症候群

概要

1. 概要

「ネフローゼ症候群」は、糸球体という老廃物の濾過装置に障害が起こることにより、尿中に大量のタンパク質が出て血液中のタンパク質濃度が下がり、全身に浮腫(むくみ)が起こる病気です。
一次性と二次性の2種類があり、毎年3,700人~4,600人ほどの患者さんが新たに発症していると推定されています。(参考リンク1)
多くは環境的要因と遺伝的要因が合わさって生じる多因子疾患で、関連遺伝子として複数の遺伝子が報告されています。
最近の研究報告によると、遺伝子「GPC5」付近のある部位が「ネフローゼ症候群」の発症リスクに影響を与えている可能性が高いことが明らかになりました。
長期にわたって尿中にタンパク質が出ている状態が続くと、腎臓の働きが悪くなり、進行すると肺や心臓などに水がたまりやすくなったり、透析や腎臓移植が必要となったりする可能性があります。
遺伝子検査により、ご自身の遺伝子タイプを調べて、「ネフローゼ症候群」の発症リスクを知ることは、発症の予防や早期対策に役立つことが期待されます。

2. 理論的根拠

東京大学附属病院腎臓内分泌科による研究により、遺伝子「GPC5」の特定タイプが「ネフローゼ症候群」を発症しやすいことが明らかになりました。その部位の一つが「rs16946160」というDNA領域と呼ばれており、「AA型」、「AG型」、「GG型」という3つの遺伝子型があります。(参考リンク2)
日本人の遺伝子タイプは、「GG型」が68.9%と最も多く、「AG型」が次いで28.2%、「AA型」が2.9%と最も少ないことが分かりました。(参考リンク3)
Risk AlleleであるAを持つ「AA型」と「AG型」は、ネフローゼ症候群を発症しやすい傾向がありますが、必ずしも発症するわけではなく、環境要因が重なり合うことで発病する可能性が高くなります。
例えば、食生活において、食塩や動物性タンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかけるため、発症リスクを高めます。(参考リンク4)
そのため、「AA型」もしくは「AG型」に当てはまる人は、食塩やタンパク質などの過剰摂取を避けることが望ましいと考えられます。発症リスクを減らすためには、適切な環境を選択することが重要です。

3. 作用機序

「ネフローゼ症候群」の発症に関連する遺伝子「GPC5」は、人間の24の染色体のうち、13番染色体に位置しています。この遺伝子は、脳、肝臓、腎臓などの組織に多く存在しており、腎臓で血液中の老廃物を濾過するための「グリピカン5」と呼ばれる物質に関する遺伝情報を持っています。
「GPC5」と「ネフローゼ症候群」の発症メカニズムについては、腎臓の糸球体において「GPC5」が過剰に発現することにより、線維化を促進する因子が活性化されることが示唆されています。(参考リンク5)
すなわち、DNA領域「rs16946160」の遺伝子型で特に「AA型」を持つ人は、「GPC5」が過剰に発現することにより、糸球体での線維化が促進され、線維成分が糸球体のフィルターに詰まりやすくなると考えられます。
その結果、濾過機能に障害が生じ、通常は尿中に出ることのないタンパク質が尿に排泄されることがあり、「ネフローゼ症候群」を発症する可能性が高くなると考えられています。
以上のように、DNA領域「rs16946160」は、「ネフローゼ症候群」の発症に深く関連しており、注目を集めている一塩基多型の1つです。

遺伝子領域rs16946160において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

59.91% 34.98% 5.11%
  • GG59.91%
  • GA34.98%
  • AA5.11%

遺伝子領域rs16946160において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

83.64% 15.63% 0.73%
  • GG83.64%
  • GA15.63%
  • AA0.73%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:ネフローゼ症候群

体表的なDNA領域:ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs16946160です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • GG

    59.9
    %
  • GA

    35.0
    %
  • AA

    5.1
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 GPC5

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 GPC5
  • 参考リンク : 2011 May、Koji Okamotoと研究グループがNat Genet に発表したCommon variation in GPC5 is associated with acquired nephrotic syndromeという研究によるとネフローゼ症候群 に関連するrs16946160の関連性が認められました。