神経質な性格になる傾向
- 神経質な性格になる傾向は、不安・心配・イライラなどのいやな気持ちを強く感じやすい性格の特徴で、強くなると不安神経症として毎日の生活に影響します。
- DNA領域rs12961969のA型が神経症へのなりやすさに関わり、遺伝子CELF4が脳の神経細胞づくりを通じて神経症に影響します。
- 認知行動療法・運動の習慣・マインドフルネス・早めの医療ケアによって、神経質な傾向をやわらげ、不安を減らすことができます。
概要
【概要】 「鍵をかけたかな?忘れ物はないかな?何度も確認したはずなのに不安になる…。」 このような経験がよくある方は、ただの心配性ではなく「不安神経症」かもしれません。 「不安神経症」は神経症の一種で、不安や恐怖の気持ちが毎日の生活に悪い影響を与える病気です。 最近の研究で、遺伝子「CELF4」の近くにある部分が、神経症へのなりやすさに影響していることが報告されました。 神経症は、心と体の健康やお金の面にも影響する病気で、うつ病と似たしくみで起こることがわかっています。 うつ病は早めの治療が大切な病気なので、神経症に関わる遺伝子タイプを知ることは、うつ病の予防や早期治療に役立つ可能性があります。
【特徴】 イギリスのバイオバンク事業(大勢の人の遺伝情報や健康情報を集める事業)で行われた研究から、遺伝子「CELF4」の近くの特定のタイプによって、神経症になりやすい人がいることがわかりました。 DNA領域「rs12961969」には、「CC」、「CA」、「AA」という3つの遺伝子型があり、「AA型」は神経症になりやすい傾向があり、「CA型」はやや神経症になりやすい傾向があります。 日本人の遺伝子タイプは「CC型」が99.0%で最も多く、「CA型」は1.0%で最も少なくなっています。世界全体では、「CC型」が67.6%、「CA型」が29.3%、「AA型」が3.1%です。 ただし、神経症に関わる部分は「rs12961969」のほかにもいくつかあるため、それらも合わせて神経症の度合いを考える必要があります。 この遺伝子タイプを確認することは、不安への感じやすさを知るための一つの目安です。それを知って今後の行動に生かすことで、心にゆとりを持てるようになるかもしれません。
【科学的根拠】 メカニズム 遺伝子「CELF4」は神経症に関係する遺伝子で、人の24種類の染色体のうち、18番染色体にあります。DNAは、遺伝情報を塩基(DNAの文字にあたる部品)の並びで伝えますが、その中にはタンパク質づくりやその調節に使われない部分も混ざっています。 遺伝子「CELF4」は、DNAからこうした使われない部分を取り除き、脳の神経細胞(ニューロン)をつくるための遺伝情報だけを残す役割を持っています。 脳はニューロンでできているため、遺伝子「CELF4」のはたらきは脳の大きさ(体積)に影響すると考えられています。 最近の研究では、脳の一部である小脳の大きさが神経症と関係していることがわかり、遺伝子「CELF4」が神経症の発症に関わっていることが報告されています。
神経質な性格になる傾向とは何か
神経質な性格になる傾向とは、不安・心配・イライラなどのいやな気持ち(否定的な感情)を、うれしい・楽しいといった前向きな気持ちよりも強く感じやすい性格の特徴です。「鍵をかけたかな?忘れ物はないかな?」と何度も確認してしまうことがよくある場合、ただの心配性ではなく「不安神経症」の可能性があります。不安神経症は神経症の一種で、不安や恐怖の気持ちが毎日の生活に悪い影響を与える病気です。ロッテルダム・エラスムス大学のOkbayらの研究で、遺伝子「CELF4」の近くにあるDNA領域rs12961969が、神経症へのなりやすさに影響することが報告されています(1)(5)。
神経質な性格の原因は何か
神経質な性格になる傾向には、次の3つの要因が組み合わさって影響しています。
- 遺伝子の影響:DNA領域rs12961969のA型が神経症へのなりやすさに関わります。遺伝子CELF4は18番染色体にあり、脳の神経細胞づくりに影響します。
- 脳のつくりの影響:小脳の大きさが神経症と関係していることが研究でわかりました(4)。
- 環境の影響:ストレスの多い環境、心の傷になるつらい体験(トラウマ)、生活習慣が、いやな気持ちを強めます。
神経質な性格の主な症状とは
神経質な傾向は少しずつ強まっていくため、本人が気づきにくいことがあります。代表的な5つの症状を下に示します。
- 不安な気持ちが続き、心配しすぎることが増えます。
- 怖さがくり返しわいてきます(何度も確認してしまいます)。
- 気分の落ち込みがよく起こります。
- イライラ・あせりが増えます。
- 眠れない・疲れが長く続きます。
神経質な性格と不安神経症の違いは何か
ふつうの心配性と不安神経症には、はっきりした違いがあります。下の表で両者の違いを整理します。
| 比較項目 | 神経質な性格(ふつう) | 不安神経症 |
|---|---|---|
| 不安の程度 | 場面に合ったほどよい不安 | 毎日のように強すぎる不安が続きます。 |
| 日常生活への影響 | 生活に困りごとはありません。 | 仕事や人間関係に困りごとが出ます。 |
| 身体症状 | 一時的な緊張 | 長く続く頭痛・動悸・不眠 |
| 行動パターン | 落ち着いて対処できます。 | 何度も確認したり、不安な場面を避けたりします。 |
| 遺伝子の影響 | 個人差あり | rs12961969のA型が関わります。 |
神経質な性格を予防・改善する方法とは
神経質な傾向をやわらげるにはいくつかの方法を組み合わせることが大切です。次の4つの対策が役に立つとされています。
- 認知行動療法(考え方のくせを見直す心理療法):不安を大きくしてしまう考え方のくせを見直し、ストレスへの上手な対処法を身につけます。
- 定期的な運動:ウォーキングやヨガなどで、ストレスで増えるホルモンを減らします(週3回以上・1回30分以上がおすすめ)。
- マインドフルネス瞑想:「今この瞬間」に意識を向けることで、同じ不安をくり返し考えることを減らします。
- 医療サポート:症状のせいで毎日の生活に困りごとが出ている場合は、早めに精神科・心療内科を受診することが必要です。
神経症はうつ病と似たしくみで起こるため、遺伝子タイプを知ることはうつ病の予防や早期治療にも役立つ可能性があります。
神経質な傾向に影響する遺伝子CELF4のはたらき
遺伝子CELF4は18番染色体にあり、神経症に関係する遺伝子です。CELF4の主なはたらきと影響を下の表にまとめます。
| 要素 | 内容 | 影響度 |
|---|---|---|
| CELF4の役割 | DNAからタンパク質づくりに使われない部分を取り除き、脳の神経細胞(ニューロン)をつくる遺伝情報だけを残します。 | 高 |
| 脳への影響 | 脳の大きさ(特に小脳)に影響します(4)。 | 高 |
| rs12961969のタイプ | A型を持つ人は神経症になりやすい傾向があります(1)(5)。 | 高 |
| うつ病との関連 | 神経症とうつ病は似たしくみで起こります。 | 中〜高 |
遺伝子と神経質な性格の関連
DNA領域rs12961969と神経症へのなりやすさの関係とは
ロッテルダム・エラスムス大学のOkbayらの研究(2016年)(5)で、DNA領域rs12961969が神経質な性格になる傾向と関係していることがわかりました。
- rs12961969にはCC・CA・AAの3つの遺伝子型が存在します。
- A型を持つ遺伝子型(AA型・CA型)の人は、神経質な性格になる傾向が強いです。
- 日本人ではCC型が全体の99.0%を占め、A型を持つ人(AA型+CA型)は1.0%ととても少ないです。
ただし、神経症に関わるDNA領域はrs12961969のほかにもいくつかあるため、rs34220720なども合わせて全体的に判断することが必要です。
日本人における遺伝子型分布(rs12961969)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 | 傾向の強さ |
|---|---|---|---|
| AA型 | 0.1%以下 | 3.1% | 強い |
| AC型 | 0.9% | 29.2% | やや強い |
| CC型 | 99.0% | 67.6% | 弱い |
日本人における遺伝子型分布(rs34220720)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 44.0% | 49.5% |
| TC型 | 44.6% | 41.6% |
| CC型 | 11.3% | 8.7% |
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:神経質な性格になる傾向
神経質な性格になる傾向に最も強く影響するDNA領域は、rs12961969です。 日本における遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- AA
0.1%以下 - AC
0.9 % - CC
99.0 %
ほかに、神経質な性格になる傾向に関わるDNA領域としてrs34220720があります。 日本における遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- TT
44.0 % - TC
44.6 % - CC
11.3 %
検査の根拠
ロッテルダム・エラスムス大学のOkbayらの研究(2016年)で、神経質な性格になる傾向が遺伝子と関係していることがわかりました。人の遺伝情報全体(ゲノム)の中にはrs12961969という場所があり、そこにはAとCの2種類のタイプがあります。Aタイプを持つ人は、神経質な性格になる傾向が強いことがわかりました(5)。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
関連遺伝子
| 関連遺伝子 | RPL12P40 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | LINC01929 |
よくある質問
Q1. 神経質な性格になる傾向とは何ですか?
神経質な性格になる傾向とは、不安・心配・イライラなどのいやな気持ち(否定的な感情)を、うれしい・楽しいといった前向きな気持ちよりも強く感じやすい性格の特徴です。不安神経症は神経症の一種で、不安や恐怖の気持ちが毎日の生活に悪い影響を与えます。遺伝子CELF4の近くにあるDNA領域rs12961969が、なりやすさに関わっています(1)(5)。
Q2. 神経質な性格の原因は何ですか?
主な原因は遺伝子の影響と環境の影響の組み合わせです。遺伝子CELF4は18番染色体にあり、脳の神経細胞(ニューロン)をつくることに関わっています。DNA領域rs12961969にA型を持つ人は、神経症になりやすい傾向があります。日本人ではCC型が99.0%を占め、A型を持つ人は1.0%です(1)(5)。
Q3. 遺伝子検査で神経質な性格になる傾向は分かりますか?
DNA領域rs12961969の遺伝子型を調べることで、神経質な性格になる傾向の強さを知ることができます。AA型の人はその傾向が強く、AC型はやや強い傾向にあることが、ロッテルダム・エラスムス大学のOkbayらの研究で確認されています(5)。
Q4. 神経質な性格と遺伝子CELF4の関係は?
遺伝子CELF4は18番染色体にあり、DNAの中から脳の神経細胞(ニューロン)をつくるための遺伝情報だけを選び出す役割を持っています。CELF4のはたらきは脳の大きさ(特に小脳)に影響し、小脳の大きさが神経症と関係していることが研究でわかっています(3)(4)。
Q5. 神経質な性格を予防・改善する方法はありますか?
認知行動療法、定期的な運動(週3回以上・1回30分以上)、マインドフルネス瞑想、十分な睡眠の4つの方法が役に立ちます。神経症はうつ病と似たしくみで起こるため、遺伝子タイプを知ることはうつ病の予防や早期治療にも役立つ可能性があります。
参考文献
- 参考リンク1 : 2017 Dec., Michelle Luciano, Nature Genetics
- 参考リンク2 : DNA 領域「rs12961969」の情報(米国国立衛生研究所)
- 参考リンク3 : 遺伝子「CELF4」の情報(米国国立衛生研究所)
- 参考リンク4 : 2011 Jul., Schraa-Tam, Caroline KL, The Cerebellum
- 参考リンク5 : 2016 Jun., Aysu Okbay, Nat Genet