ニコチン依存症になりやすさ
- ニコチン依存症は、ニコチンが脳でドーパミンを多く出させることで起こる依存の病気で、喫煙者の約70%があてはまります。
- DNA領域rs1051730のA型変異を持つ人はなりやすい傾向があることが、deCODE Genetics社の研究で分かっています。
- ニコチン置換療法やニコチンを含まない薬による治療で禁煙の成功率を50〜70%高めることができます。
概要
【概要】 ニコチン依存症は、タバコに含まれるニコチンという物質を強く欲しくなり、やめられなくなる状態です。 ニコチンが脳の中で働く情報伝達物質(神経伝達物質)に影響することで起こります。
【特徴】 ニコチンは、脳の中で気持ちよさやリラックスを感じさせるドーパミンを多く出させます。 そのため、タバコを吸うたびに気持ちよさを感じ、やめることが難しくなります。 主な症状は、タバコを吸いたいという強い気持ちと、体に悪いと分かっていてもやめられないことです。 タバコをやめると、イライラ、集中力の低下、眠気、食欲の増加などの禁断症状が出ます。 また、長い間タバコを吸い続けると、肺がんや心臓病、慢性閉塞性肺疾患(タバコなどで肺がこわれ、息切れが続く病気)などになるリスクが高まります。
【メカニズム】 禁煙のサポートには、ニコチン置換療法(ニコチンパッチやガムで少しずつニコチンを減らす方法)や、ニコチンを含まない薬(バレニクリンやブプロピオンなど)が処方されることもあります。これらはタバコを吸いたい気持ちを減らし、禁断症状をやわらげるのに役立ちます。
【科学的根拠】 deCODE Genetics社のThorgeirssonらの研究により、ニコチン依存症へのなりやすさがrs1051730というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはGG、GA、AAの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、ニコチン依存症になりやすい傾向があることが分かりました。
ニコチン依存症とは何か
ニコチン依存症とは、タバコに含まれるニコチンが、脳の中で働く情報伝達物質「ドーパミン」を多く出させることで起こる依存の病気です。世界保健機関が定めた「国際疾病分類(第10版)」でも、精神および行動の障害として分類されています。
ニコチン依存症の原因とメカニズム
ニコチンは喫煙後わずか10〜20秒で脳に到達し、以下のメカニズムで依存を形成します。
- ドーパミンを多く出させる:ニコチンが脳の「ニコチン性アセチルコリン受容体」(ニコチンがくっつく受け皿)に結合し、気持ちよさを生む脳の仕組み(報酬系)でドーパミンを多く出させます。
- 耐性ができる:タバコを吸い続けるとこの受容体の数が増え、同じ気持ちよさを得るためにより多くのニコチンが必要になります。
- 離脱症状が出る:体の中のニコチンが減るとドーパミンも減り、つらい離脱症状(タバコをやめたときの不調)が出ます。
なりやすくなる主な要因は以下のとおりです。
- タバコを吸い始めた年齢が低い(15歳以前から吸い始めると、依存のリスクが大きく上がります)。
- 遺伝子の影響(CHRNA3遺伝子のrs1051730の違い)
- ストレスの多い環境・心の要因
- 1日に吸う本数(1日10本以上で依存のリスクが上がります)。
ニコチン依存症の主な症状
ニコチン依存症の症状は身体的依存と心理的依存の2つに分類されます。
- タバコを吸いたいという強い気持ち・衝動
- 体に悪いと分かっていても禁煙できません。
- 禁煙時のイライラ感・集中力低下
- 不安感・抑うつ気分
- 食欲の増加・体重増加
ニコチン依存症による健康リスク
| 疾患カテゴリ | 具体的な疾患 | リスク倍率 |
|---|---|---|
| がん | 肺がん・咽頭がん・食道がん | 非喫煙者の約4〜20倍 |
| 心血管疾患 | 心筋梗塞・脳卒中 | 非喫煙者の約2〜4倍 |
| 呼吸器疾患 | 慢性閉塞性肺疾患(タバコなどで肺がこわれ、息切れが続く病気) | 非喫煙者の約10〜13倍 |
| その他 | 歯周病・骨粗しょう症 | 非喫煙者の約2〜8倍 |
ニコチン依存症の治療法と禁煙支援
ニコチン依存症の治療には、以下の方法が有効です。
- ニコチン置換療法:ニコチンパッチ・ニコチンガムで禁断症状をやわらげます(禁煙の成功率を約50〜70%高めます)。
- バレニクリン(チャンピックス):ニコチンの受容体に弱く作用し、ニコチンによる気持ちよさをおさえる処方薬です。
- ブプロピオン:ドーパミンとノルアドレナリン(脳の情報伝達物質)が再び取り込まれるのを妨げる抗うつ薬です。
- 認知行動療法(考え方や行動のくせを見直す治療):タバコを吸いたくなるきっかけを見つけ、行動のくせを変えていく心理療法です。
遺伝子とニコチン依存症の関連
DNA領域rs1051730となりやすさの関係
deCODE Genetics社のThorgeirssonらの研究(1)により、DNA領域rs1051730がニコチン依存症へのなりやすさと関係していることが分かりました。
- rs1051730にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型が存在します。
- A型変異を持つ遺伝子型の人は、ニコチン依存症になりやすい傾向があります。
日本人の遺伝子型の割合(rs1051730)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 96.1% | 45.6% |
| GA型 | 3.7% | 43.8% |
| AA型 | 0.1%以下 | 10.5% |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:ニコチン依存症へのなりやすさ
ニコチン依存症へのなりやすさに最も強く影響するDNA領域は、rs1051730です。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- GG
96.1 % - GA
3.7 % - AA
0.1%以下
検査の根拠
deCODE Genetics社のThorgeirssonらの研究により、ニコチン依存症へのなりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAにはrs1051730という場所があり、ここにはGとAの2種類のタイプがあります。Aタイプを持つ人は、ニコチン依存症になりやすい傾向があることが分かりました(1)。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図(模式図)
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | CHRNA3 |
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よくある質問
Q1. ニコチン依存症とは何ですか?
ニコチン依存症とは、タバコに含まれるニコチンが、脳の中で働く情報伝達物質「ドーパミン」を多く出させることで起こる依存の病気です。喫煙者の約70%がニコチン依存症にあたるとされ、世界保健機関が定めた「国際疾病分類(第10版)」でも、精神および行動の障害(心と行動の病気)に分類されています(1)。
Q2. ニコチン依存症になりやすい人の特徴は?
DNA領域rs1051730においてA型変異を持つ遺伝子型の人は、ニコチン依存症になりやすい傾向があります。日本人ではGG型が96.1%、GA型が3.7%です。遺伝子の影響に加えて、タバコを吸い始めた年齢の低さやストレスの多い環境も影響します(1)。
Q3. ニコチン依存症の禁断症状にはどのようなものがありますか?
禁煙開始後24〜72時間をピークに、イライラ感、集中力の低下、強い眠気、食欲の増加、不安感、抑うつ気分などの禁断症状が出ます。これらの症状は、ふつう2〜4週間で軽くなります。
Q4. ニコチン依存症の治療法は?
主な治療法はニコチン置換療法(ニコチンパッチ・ニコチンガム)と、バレニクリンやブプロピオンなどのニコチンを含まない薬による治療です。ニコチン置換療法は、禁煙の成功率を約50〜70%高めることが臨床研究(人を対象にした研究)で示されています(1)。