非アルコール性脂肪肝
- 非アルコール性脂肪肝は、お酒を飲みすぎていない人の肝臓の細胞に脂肪がたまる病気で、日本人の大人の約25〜30%がかかっています。
- DNA領域rs1260326のTタイプを持つ人は発症リスクが高い傾向にあることが京都大学の研究で分かりました。
- 日本人の約82.4%がリスクの高い型(TT型33.8%+TC型48.6%)を持っており、生活習慣の改善による予防が重要です。
概要
【病気の概要】 非アルコール性脂肪肝は、肝臓の細胞に余分な脂肪がたまる病気です。お酒(アルコール)を飲みすぎていないのに起こるのが特徴です。 軽く脂肪がたまるだけの「単純性脂肪肝」から、炎症が起きて進行した「非アルコール性脂肪肝炎」まで、いくつかの段階があります。
【症状と特徴】 非アルコール性脂肪肝炎では肝臓の炎症が進み、肝臓が硬くなる「線維化」や、傷あと(瘢痕)が残ることにつながる可能性があります。 初期の段階では、症状がほとんどないのが一般的です。 症状が出る場合も、疲れやすさや体力の低下、おなかの右上の不快感や軽い痛みが主なものです。 進行すると、黄疸(皮膚や白目が黄色くなること)、おなかや脚のむくみ、強い痛みや不快感など、より深刻な症状が出ることがあります。
【治療と注意点】 手でさわる診察で肝臓が大きくなっていると分かることがありますが、内部の炎症や線維化を確かめるには、画像検査や、肝臓の組織を少し取って調べる検査(生検)が必要です。 この病気は、肥満や2型糖尿病、高血圧、高脂血症などの代謝症候群(メタボリックシンドローム)と深く関係しています。 これらの状態がある人は、この病気にかかるリスクが高くなります。
【遺伝子の影響】 京都大学のKawaguchiらの研究で、非アルコール性脂肪肝へのかかりやすさが、rs1260326というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、非アルコール性脂肪肝のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
非アルコール性脂肪肝とは
非アルコール性脂肪肝は、お酒(アルコール)を飲みすぎていない人の肝臓の細胞に、余分な脂肪がたまる病気です。日本消化器病学会の診療指針(ガイドライン)によると、日本人の大人の約25〜30%がこの病気にあてはまると考えられています。
非アルコール性脂肪肝は、軽く脂肪がたまるだけの単純性脂肪肝から、肝炎が進んだ非アルコール性脂肪肝炎まで、さまざまな段階を含みます。非アルコール性脂肪肝炎に進むと、肝臓が硬くなる線維化や、肝硬変、肝がんへと進むリスクがあります。
非アルコール性脂肪肝の原因とリスク因子
非アルコール性脂肪肝は代謝症候群(メタボリックシンドローム)と深く関係する病気です。主なリスク因子は次のとおりです。
- 肥満(体格指数25以上):肝臓に脂肪がたまるのを直接進める最大のリスク因子です(体格指数は体重と身長から計算する肥満度の目安)。
- 2型糖尿病:インスリン(血糖を下げるホルモン)が効きにくくなり、肝臓の脂肪の処理がうまくいかなくなります。
- 高血圧:肝臓の血流が悪くなり、肝臓の細胞への負担が増えます。
- 高脂血症(脂質異常症):血液中の脂質が多すぎると、肝臓に脂肪がたまりやすくなります。
- 遺伝子の影響:遺伝子GCKRのDNA領域rs1260326がリスクに関係しています。
非アルコール性脂肪肝の主な症状
非アルコール性脂肪肝の初期段階では自覚症状がないことが多いのが特徴です。症状が出る場合の主なサインを段階ごとに示します。
| 段階 | 症状 | 特徴 |
|---|---|---|
| 初期 | 無症状 | 健康診断でたまたま見つかることが多いです。 |
| 中期 | 疲れやすさ・おなかの右上の不快感 | 長く続くだるさと、おなかの鈍い痛み |
| 進行期 | 黄疸(皮膚が黄色くなる)・腹水(おなかに水がたまる)・むくみ | 肝臓の働きが落ちることによる重い症状 |
非アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎の違い
非アルコール性脂肪肝は広い呼び方で、非アルコール性脂肪肝炎はその進行した型です。両者の違いを下の表にまとめます。
| 比較項目 | 単純性脂肪肝 | 非アルコール性脂肪肝炎 |
|---|---|---|
| 肝臓に脂肪がたまります。 | あり | あり |
| 肝炎 | なし、または軽い | あり(炎症が強い) |
| 肝線維化 | なし | あり(進行する) |
| 進行するリスク | 低い | 肝硬変・肝がんへ進むことがあります。 |
| 患者の割合 | 非アルコール性脂肪肝全体の約80〜90% | 非アルコール性脂肪肝全体の約10〜20% |
非アルコール性脂肪肝の診断方法
非アルコール性脂肪肝は、次のような検査で診断されます。
- 血液検査:肝臓の状態を示す数値(肝機能の値)が上がっていないかを確認します。
- 腹部超音波検査:肝臓に脂肪がたまった状態(肝臓が白く明るく映る「高輝度肝」)を画像で確認します。
- 断層画像検査(コンピューター断層撮影・磁気共鳴画像):脂肪がどのくらいたまっているかを数字で表します。
- 肝生検(肝臓の組織を少し取って調べる検査):非アルコール性脂肪肝炎かどうかを見分ける最も確実な検査
- 線維化の計算スコア:年齢、肝機能の血液検査の値、血小板の数から、肝臓の線維化の程度を計算で推定します。
非アルコール性脂肪肝の予防と対策
非アルコール性脂肪肝の予防・改善には、次のような生活習慣の改善が効果的です。
- 体重管理:体格指数25未満を目標にし、体重を7〜10%減らすと肝臓の脂肪が改善します。
- 有酸素運動:週150分以上のウォーキングやジョギングがすすめられています。
- 食事改善:糖質や飽和脂肪酸(肉の脂などに多い脂肪)のとりすぎを控え、食物繊維を積極的にとります。
- 定期検査:年1回の肝機能検査(肝臓の状態を調べる血液検査)で早期発見します。
遺伝子と非アルコール性脂肪肝の関係
DNA領域rs1260326と発症リスクの関係
京都大学のKawaguchiらの研究で、遺伝子GCKRの近くにあるDNA領域rs1260326が、非アルコール性脂肪肝へのかかりやすさと関係していることが分かりました。
- rs1260326にはTT・TC・CCの3つの遺伝子型があります。
- Tタイプを持つTT型は非アルコール性脂肪肝になりやすいです。
- TC型もやや発症しやすい傾向があります。
- CC型は比較的リスクが低いです。
ただし、TT型やTC型の人が必ず非アルコール性脂肪肝になるわけではなく、肥満・糖尿病・高脂血症などの代謝の問題が重なると、発症しやすくなります。
日本人の遺伝子型の割合(rs1260326)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 33.8% | 16.7% |
| TC型 | 48.6% | 48.3% |
| CC型 | 17.4% | 34.8% |
日本人はTT型の割合が世界平均(16.7%)の約2倍(33.8%)で、遺伝子の面で非アルコール性脂肪肝のリスクが高い集団である可能性があります。
しくみ:遺伝子GCKRと非アルコール性脂肪肝の関係
遺伝子GCKRは2番染色体にあり、グルコキナーゼ調節タンパク質というタンパク質の設計図になっています。このタンパク質は、肝臓で糖(ブドウ糖)や脂肪がどう使われるかを調節する大切な役割を持っています。
DNA領域rs1260326のTタイプが病気につながる仕組みは、次のとおりです。
- GCKRのはたらきが変わる → グルコキナーゼ(糖を処理する酵素)が常に働きやすくなります。
- 肝臓が糖(ブドウ糖)を多く取り込む → 脂肪酸がたくさん作られます。
- 肝臓の中に中性脂肪(トリグリセリド)がたまる → 脂肪肝になります。
- 血液中の中性脂肪(トリグリセリド)が増える → 代謝の病気のリスクが高まります。
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:非アルコール性脂肪肝
非アルコール性脂肪肝に最も強く影響するDNA領域は、rs1260326です。 日本でのそれぞれの遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- TT
33.8 % - TC
48.6 % - CC
17.4 %
検査の根拠
京都大学のKawaguchiらの研究で、非アルコール性脂肪肝へのかかりやすさが遺伝子と関係していることが分かりました。人間のDNAには、rs1260326という場所があり、そこにはTとCの2種類のタイプがあります。Tタイプを持つ人は、非アルコール性脂肪肝のリスクが高い傾向にあることが分かりました。日本人ではTT型が33.8%、TC型が48.6%、CC型が17.4%で、世界平均と比べてTを持つ人の割合が高いことが特徴です。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図の模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | GCKR |
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よくある質問
Q1. 非アルコール性脂肪肝とは何ですか?
非アルコール性脂肪肝は、お酒(アルコール)を飲みすぎていない人の肝臓の細胞に、余分な脂肪がたまる病気です。日本人の大人の約25〜30%がかかっており、単純性脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎まで、さまざまな段階を含みます。初期は症状がないため、健康診断で早く見つけることが大切です。
Q2. 非アルコール性脂肪肝の原因は何ですか?
主な原因は肥満・2型糖尿病・高血圧・高脂血症など、代謝症候群に関係する要因です。さらに、遺伝子GCKRのDNA領域rs1260326のTタイプがリスクを高めることが、京都大学の研究で分かっています。
Q3. 非アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎の違いは?
非アルコール性脂肪肝は肝臓に脂肪がたまる状態全体を指す広い呼び方です。非アルコール性脂肪肝炎はその進行した型で、脂肪がたまることに加えて肝炎(肝臓の炎症)や線維化(肝臓が硬くなること)が起きた状態です。患者さんの約10〜20%が非アルコール性脂肪肝炎に進み、肝硬変や肝がんのリスクが高まります。
Q4. 遺伝子検査で非アルコール性脂肪肝のリスクは分かりますか?
DNA領域rs1260326の遺伝子型を調べることで、非アルコール性脂肪肝へのかかりやすさの傾向を知ることができます。Tタイプを持つ人(TT型・TC型)はリスクが高い傾向にあり、日本人の約82.4%がリスクの高い型を持っています。
Q5. 非アルコール性脂肪肝の予防法にはどのようなものがありますか?
非アルコール性脂肪肝の予防には体重の管理(体格指数25未満)、週150分以上の有酸素運動、糖質や脂質のとりすぎを控えること、定期的な肝機能検査が効果的です。体重を7〜10%減らすと肝臓の脂肪が改善したという報告があります。