非小細胞肺がん
- 非小細胞肺がんは肺がんの約85%を占める悪性腫瘍(がん)で、腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんの3種類に分けられます。
- DNA領域rs751402のAを持つ人はかかるリスクが高い傾向にあることが研究で分かりました。
- 日本人のAA型の割合は14.0%で、世界平均の4.0%と比べて約3.5倍高いです。
概要
【疾患の概要】 非小細胞肺がんは、肺がんの一種で、肺がん全体の約85%を占めています。 できる場所や見た目(顕微鏡で見たときの形)によって、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの3つに分けられます。
【症状と特徴】 腺がんは非小細胞肺がんの中で最も多いタイプで、肺の外側や周りの部分にできます。 初めのうちは症状がないこともありますが、病気が進むと咳や胸の痛み、息切れなどが出てきます。 扁平上皮がんは、空気の通り道である太い気管支の近く、つまり肺の中心部にできます。 血を吐く、咳が続く、息が苦しい、胸が痛いなどの症状が出ます。 大細胞がんは肺のどこにでもでき、たちが悪く、病気が速く進みます。 そのためほかの場所に広がり(転移し)やすく、腺がんや扁平上皮がんよりも重くなりやすい傾向があります。 これらの症状に加えて、疲れやすさや体重が減る、食欲がない、体が弱るなど、がんによく見られる症状が出ることもあります。 非小細胞肺がんは、喫煙や生活環境、遺伝子の影響などを受けます。
【治療と注意点】 どのタイプの非小細胞肺がんかを見分けることは、治療の方針を決めるうえで大切です。正しく診断するには、画像検査や生体検査(体の組織を少し取って調べる検査)が必要です。 治療には、手術、抗がん剤による化学療法、放射線治療、がんの特定の性質をねらう分子標的療法、体の免疫の力を使う免疫療法などがあります。
【遺伝的リスク】 シュリ・マタ・ヴァイシュノ・デヴィ大学のBhatらの研究により、非小細胞肺がんにかかるリスクが、rs751402というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはAA、AG、GGの3つの遺伝子型があり、Aを持つ遺伝子型の人は、非小細胞肺がんのリスクが高い傾向にあることが分かりました。
非小細胞肺がんとは何か
非小細胞肺がんは、肺がんの約85%を占める悪性腫瘍(がん)で、腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんの3種類に分けられます。残りの約15%は小細胞肺がんで、非小細胞肺がんとは治療法や病気の進む速さが違います。
国立がん研究センターの統計によると、肺がんは日本でがんによる死亡原因の第1位で、毎年約7.5万人が新たに診断されています。その中で最も多いのが非小細胞肺がんで、早く見つけて適切な治療を受けることが、生きられる割合(生存率)を大きく左右します。
非小細胞肺がんの3つの分類とその違い
非小細胞肺がんは、できる場所と細胞の特徴によって、以下の3種類に分けられます。
| 分類 | できる場所 | 割合 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 腺がん | 肺の外側・周りの部分 | 約40% | 非小細胞肺がんで最も多いです。初めのうちは症状がないことが多いです。 |
| 扁平上皮がん | 太い気管支の近く(肺の中心部) | 約25〜30% | 喫煙との関係が強いです。血を吐く、咳が続くのが特徴です。 |
| 大細胞がん | 肺のどこにでも | 約10〜15% | たちが悪く進むのが速いです。ほかの場所に広がりやすいです。 |
非小細胞肺がんの原因とリスクを高めるもの
非小細胞肺がんの発症には、以下のものがかかわっています。
- 喫煙:最大の原因で、喫煙者がかかるリスクはたばこを吸わない人の約15〜30倍です。
- 他人のたばこの煙(受動喫煙):たばこを吸わない人でも、他人のたばこの煙を吸うことでかかるリスクが約1.3倍上がります。
- 環境要因:アスベスト(石綿)を吸い込むこと、大気汚染、ラドンガス(自然にある放射線を出す気体)を吸うことです。
- 遺伝子の影響:DNA領域rs751402のAがかかりやすさにかかわります。
- 過去にかかった病気:慢性閉塞性肺疾患(たばこなどで肺が傷み、息がしにくくなる病気)や肺線維症(肺が硬くなる病気)にかかったことがある場合はリスクが上がります。
非小細胞肺がんの主な症状
初期段階では症状がないのことが多く、病気が進むと以下の症状が出てきます。
- 咳が続きます(2週間以上続く場合は注意)。
- 胸の痛み・息が苦しい
- 血を吐きます(血の混じったたん)。
- 原因が分からない体重の減少
- 慢性的な疲労感・食欲不振
- 嗄声(声のかすれ)
症状が出たときには、すでにステージIII〜IVまで進んでいることが多いため、定期的な検診による早期発見が、生存率を上げることにつながります。
非小細胞肺がんの治療法
病気の進み具合(ステージ)や遺伝子の変化があるかどうかによって、以下の治療法が選ばれます。
| 治療法 | 適用ステージ | 特徴 |
|---|---|---|
| 手術 | I〜II期 | 手術で腫瘍を取り除きます。完全に治すことを目指す治療法です。 |
| 化学療法 | II〜IV期 | 抗がん剤を使う治療です。手術の後に再発を防ぐ目的でも使われます。 |
| 放射線治療 | II〜III期 | 強い放射線をあてて腫瘍を壊す |
| 分子標的療法 | III〜IV期 | EGFR阻害剤・ALK阻害剤など。がんを増やす特定の遺伝子の変化を持つ腫瘍に効果があります。 |
| 免疫療法 | III〜IV期 | がん細胞が免疫から逃れるしくみを止める薬(免疫チェックポイント阻害剤)による治療 |
非小細胞肺がんの診断方法
非小細胞肺がんを正しく診断するには、以下の検査が必要です。
- 画像検査:胸部エックス線検査、体の断面を撮影する検査(コンピューター断層撮影)、がん細胞が集まる場所を画像で調べる検査(陽電子放射断層撮影)です。
- 生体検査:気管支鏡検査(細いカメラを気管支に入れて調べる)、経皮針生検(皮膚から針を刺して組織を取る)です。
- 遺伝子検査:EGFR遺伝子の変化、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子(がんを増やす原因になる遺伝子の変化)の検査です。
- がんの目印を調べる血液検査:血液中のがんの目印となる物質(がん胎児性抗原、サイトケラチン19断片、扁平上皮がん関連抗原)を調べます。
遺伝子と非小細胞肺がんの関係
DNA領域rs751402とかかりやすさの関係
シュリ・マタ・ヴァイシュノ・デヴィ大学のGh Rasool Bhatらの研究により、DNA領域rs751402が非小細胞肺がんにかかるリスクと関係していることが分かりました。
- rs751402にはAA・AG・GGの3つの遺伝子型があります。
- Aを2つ持つAA型は非小細胞肺がんにかかるリスクが最も高いです。
- AG型はややかかるリスクが高い傾向があります。
- GG型は比較的リスクが低いです。
ただし、AA型やAG型の人が必ず非小細胞肺がんになるわけではなく、喫煙や生活環境などが重なることでかかるリスクが上がります。
日本人における遺伝子型分布(rs751402)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| AA型 | 14.0% | 4.0% |
| AG型 | 46.8% | 32.0% |
| GG型 | 39.0% | 63.9% |
日本人はAA型の割合が世界平均の約3.5倍と高く、遺伝子の面から非小細胞肺がんのリスクが比較的高い集団である可能性があります。
関連遺伝子ERCC5の役割
ERCC5(Excision Repair Cross-Complementing group 5)は、傷ついたDNAを直す「ヌクレオチド除去修復」(DNAの傷の部分を切り取って直すしくみ)にかかわる遺伝子です。ERCC5がうまく働かないとDNAを直す力が弱まり、細胞ががん化しやすくなると考えられています。
- ERCC5は、DNAの傷ついた部分を見つけて切り取る酵素(体の中の化学反応を助けるたんぱく質)の設計図となる遺伝子です。
- rs751402はERCC5遺伝子のDNA領域にあり、その働きに影響します。
- Aを持つとDNAを直す力が弱まり、がんになりやすくなる可能性があります。
検査の科学的な根拠
代表的なDNA領域:非小細胞肺がん
非小細胞肺がんに最も強く影響するDNA領域は、rs751402です。 日本における各遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- AA
14.0 % - AG
46.8 % - GG
39.0 %
検査の根拠
シュリ・マタ・ヴァイシュノ・デヴィ大学のBhatらの研究により、非小細胞肺がんにかかるリスクが遺伝子と関係していることが分かりました。人の遺伝情報全体(ゲノム)の中にはrs751402というDNA領域があり、そこにはAとGの2種類の違いがあります。Aを持つ人は、非小細胞肺がんのリスクが高い傾向にあることが分かりました。日本人ではAA型が14.0%、AG型が46.8%、GG型が39.0%で、世界平均と比べてAを持つ人の割合が高いことが特徴です。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAの地図の模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | ERCC5 |
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よくある質問
Q1. 非小細胞肺がんとは何ですか?
非小細胞肺がんは、肺がんの約85%を占める悪性腫瘍(がん)で、腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんの3種類に分けられます。肺がん全体の中で最も高い割合を占め、喫煙が最大の原因です。
Q2. 非小細胞肺がんの3つの分類の違いは?
腺がんは非小細胞肺がんの約40%を占め、肺の外側にでき、初めのうちは症状がありません。扁平上皮がんは気管支近くの肺の中心部にでき、喫煙との関係が強いのが特徴です。大細胞がんは肺のどこにでもでき、たちが悪く、ほかの場所に広がり(転移し)やすい性質があります。
Q3. 非小細胞肺がんの原因は何ですか?
最大の原因は喫煙で、喫煙者がかかるリスクはたばこを吸わない人の約15〜30倍です。そのほか他人のたばこの煙、アスベスト(石綿)の吸い込み、大気汚染、遺伝子の影響(DNA領域rs751402のA)が発症にかかわります。
Q4. 遺伝子検査で非小細胞肺がんのリスクは分かりますか?
DNA領域rs751402の遺伝子型を調べることで、非小細胞肺がんへのかかりやすさの傾向を知ることができます。Aを持つ型(AA型・AG型)の人はリスクが高い傾向にあることが、Bhatらの研究で分かっています。
Q5. 非小細胞肺がんの治療法にはどのようなものがありますか?
主な治療法は手術、化学療法、放射線治療、分子標的療法、免疫療法の5種類です。分子標的療法では、がんを増やす特定の遺伝子の働きを抑える薬(EGFR阻害剤やALK阻害剤)が使われます。免疫療法では、がん細胞が免疫の攻撃から逃れるしくみを止める薬(免疫チェックポイント阻害剤)が使われます。病気の進み具合(病期)や遺伝子の変化があるかどうかによって、最も合った治療法が選ばれます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2021 May., Gh Rasool Bhat, Sci Rep