肥満になりやすさ
- 肥満になりやすさとは、遺伝子・代謝・ホルモンのバランスによって体脂肪がたまりやすい体質のことで、2型糖尿病・心臓や血管の病気・一部のがんなど、重い病気のリスクに直結します。
- DNA領域rs201751833のT型変異を持つ人は肥満のリスクが高い傾向があることが、米国国立衛生研究所の研究で分かりました。
- 日本人でT型変異を持つ人(TT+TG)の割合は86.5%で、世界平均の95.4%と比べて低い割合です。
概要
【疾患の概要】 肥満は、体脂肪が増えすぎて、健康に悪い影響が出ている状態です。 食事でとるカロリーが、体で使うカロリーを大きく上回ると、余ったエネルギーが脂肪としてたまり、肥満になります。
【症状と特徴】 肥満には、遺伝子、生活のしかた、代謝(体がエネルギーを作ったり使ったりするしくみ)、ホルモンなどが影響します。
【治療と注意点】 肥満が進むことには、アディプシン(補体因子D)というタンパク質が大切な役割をしています。 これは免疫のしくみと脂肪をためるしくみの調節にかかわるタンパク質で、体内のアディプシンが多いと脂肪組織が増え、肥満につながる可能性があります。 アディプシンは、エネルギーの調節や代謝にかかわる複雑なしくみの一部で、働きすぎると脂肪がたまりやすくなります。 肥満は健康に大きな影響を与え、2型糖尿病、心臓や血管の病気、一部のがん、代謝症候群(メタボリックシンドローム)など、多くの病気のリスクを高めます。 また、自分に自信が持てなくなったり、周りから偏見を持たれたりすることもあります。 肥満の対策には、生活習慣の見直し、食事の改善、運動、薬による治療、場合によっては手術などがあり、方法はさまざまです。
【遺伝的リスク】 米国国立衛生研究所のMeeksらの研究で、肥満になるリスクがrs201751833というDNA領域と関係していることが分かりました。 このDNA領域にはTT、TG、GGの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、肥満のリスクが高い傾向があることが分かりました。
肥満になりやすさとは何か
肥満になりやすさとは、体脂肪がたまりやすい体質のことで、遺伝子の影響が約40〜70%あるとされています。日本では体格指数(体重と身長から計算する肥満度の目安)が25以上だと肥満と判定されます。世界保健機関の報告では、世界の大人の約13%が肥満です。
肥満の原因とメカニズム
肥満は、遺伝子・生活のしかた・代謝・ホルモンの4つが重なり合って起こります。おもな原因を下にまとめます。
遺伝子の影響
- アディプシン(補体因子D):免疫のしくみと脂肪をためるしくみの調節にかかわるタンパク質です。体内のアディプシンが多いと脂肪組織が増え、肥満につながります。
- BDNF遺伝子:食欲の調節と体重の管理にかかわる脳由来神経栄養因子(脳の神経を育てるタンパク質)
- ADRB2遺伝子:脂肪の分解と基礎代謝(何もしなくても使われるエネルギー)にかかわるβ2アドレナリン受容体
- NPC1遺伝子:コレステロールの運搬と脂質(あぶら)の代謝に関係
環境の影響
- 食事:食事でとるカロリーが使うカロリーを上回ると、余ったエネルギーが脂肪としてたまります。
- 運動不足:基礎代謝が下がり、脂肪が燃えにくくなります。
- 睡眠不足:食欲を高めるホルモン(グレリン)が増えます。
- ストレス:ストレスホルモン(コルチゾール)が出て、内臓のまわりに脂肪がたまります。
肥満による健康リスクの比較
| 比較項目 | 標準体重 | 肥満(体格指数25以上) |
|---|---|---|
| 2型糖尿病 | 基準となるリスク | リスクが約7倍に増加 |
| 心臓や血管の病気 | 基準となるリスク | リスクが約2〜3倍に増加 |
| 一部のがん | 基準となるリスク | 大腸がん・乳がんなどのリスクが上がります。 |
| 代謝症候群 | 発症率約5% | 発症率が約30〜40%に増加 |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 発症率約2〜4% | 発症率が約20〜40%に増加 |
肥満の予防と対策
- 食事管理:1日にとるカロリーを適量にし、栄養バランスを保ちます。
- 定期的な運動:週150分以上の、ややきついと感じる程度の有酸素運動がすすめられます。
- 睡眠の確保:7〜8時間の質の良い睡眠
- ストレス管理:ストレスホルモン(コルチゾール)が出すぎるのを抑え、内臓のまわりに脂肪がたまるのを防ぎます。
遺伝子の面でリスクが高い人も、生活習慣を見直すことで肥満になるリスクを30〜40%下げることができるとされています。
遺伝子と肥満になりやすさの関係
DNA領域rs201751833と肥満の関係
米国国立衛生研究所のMeeksらの研究(2021年、Genome Medicine掲載)で、肥満になるリスクがDNA領域rs201751833と関係していることが分かりました。
- rs201751833にはTT・TG・GGの3つの遺伝子型があります。
- T型変異を持つ遺伝子型(TT型・TG型)の人は肥満のリスクが高い傾向があります。
- このDNA領域はPRPS1P1という遺伝子に関係しています。
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs201751833)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 40.2% | 62.1% |
| TG型 | 46.3% | 33.3% |
| GG型 | 13.3% | 4.4% |
日本人でT型変異を持つ人(TT+TG)の割合は86.5%で、世界平均の95.4%と比べて低い割合です。一方、GG型の割合は日本人が13.3%で、世界平均の4.4%の約3倍と高く、日本人の遺伝的な特徴を表しています。
その他の関連DNA領域
| DNA領域 | 関連遺伝子 | 日本人の主要遺伝子型分布 |
|---|---|---|
| rs2030323 | BDNF | AA 15.1% / AC 47.5% / CC 37.2% |
| rs1042713 | ADRB2 | GG 31.1% / GA 49.3% / AA 19.5% |
| rs1805081 | NPC1 | TT 54.8% / TC 38.4% / CC 6.7% |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:肥満になりやすさ
肥満になりやすさに最も強く影響するDNA領域は、rs201751833です。 日本人の遺伝子型の割合は下のとおりです。
- TT
40.2 % - TG
46.3 % - GG
13.3 %
ほかに、肥満になりやすさに関わるDNA領域としてrs2030323があります。 日本人の遺伝子型の割合は下のとおりです。
- AA
15.1 % - AC
47.5 % - CC
37.2 %
ほかに、肥満になりやすさに関わるDNA領域としてrs1042713があります。 日本人の遺伝子型の割合は下のとおりです。
- GG
31.1 % - GA
49.3 % - AA
19.5 %
ほかに、肥満になりやすさに関わるDNA領域としてrs1805081があります。 日本人の遺伝子型の割合は下のとおりです。
- TT
54.8 % - TC
38.4 % - CC
6.7 %
検査の根拠
米国国立衛生研究所のMeeksらの研究で、肥満になるリスクが遺伝子と関係していることが分かりました。人のDNAにはrs201751833という場所があり、そこにはTとGの2種類のタイプがあります。Tタイプを持つ人は、肥満のリスクが高い傾向があることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | PRPS1P1 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | BDNF |
| 関連遺伝子 | ADRB2 |
| 関連遺伝子 | NPC1 |
よくある質問
Q1. 肥満になりやすさとは何ですか?
肥満になりやすさとは、体脂肪がたまりやすい体質のことです。遺伝子の影響は約40〜70%で、残りは食事・運動・睡眠・ストレスなど環境の影響です。日本では体格指数(体重と身長から計算する肥満度の目安)が25以上だと肥満と判定されます。肥満は、2型糖尿病・心臓や血管の病気・一部のがん・代謝症候群など、重い病気のリスクを高めます。
Q2. 肥満になりやすさは遺伝子と関係していますか?
はい。米国国立衛生研究所のMeeksらの研究(2021年、Genome Medicine)で、DNA領域rs201751833が肥満のリスクと関係していることが分かっています。rs201751833にはTT・TG・GGの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は肥満のリスクが高い傾向があります。
Q3. 肥満に関係する遺伝子型(rs201751833)は、日本人ではどのような割合ですか?
日本人のrs201751833の遺伝子型の割合はTT型40.2%、TG型46.3%、GG型13.3%です。世界全体ではTT型62.1%、TG型33.3%、GG型4.4%で、日本人はGG型の割合が世界平均の約3倍と高いのが特徴です。
Q4. 肥満は健康にどんな影響がありますか?
肥満は2型糖尿病(リスクが約7倍に増加)、心臓や血管の病気(リスクが約2〜3倍に増加)、一部のがん(大腸がん・乳がんなど)、代謝症候群、睡眠時無呼吸症候群(眠っている間に呼吸が止まる病気)など、さまざまな重い健康リスクにつながります。アディプシン(補体因子D)が働きすぎると、脂肪がたまりやすくなることも分かっています。
Q5. 肥満の予防に効果的な方法は?
肥満予防にはバランスの良い食事(1日にとるカロリーを適切に管理)、定期的な運動(週150分以上の、ややきついと感じる程度の有酸素運動)、十分な睡眠(7〜8時間)、ストレスをためないことが効果的です。遺伝子の面でリスクが高い人も、生活習慣を見直すことで肥満になるリスクを30〜40%下げられるとされています。