骨減少症
概要
概要
体重は、脂肪以外の重さである「除脂肪体重」と脂肪量である「体脂肪量」から構成されます。除脂肪体重には、筋肉、骨、内臓などの量が含まれます。体重の変化だけではなく、体脂肪量と除脂肪体重のバランスや変化量を見ることで、身体の変化を知ることができます。
例えば、ダイエット中には、体重が変わらなくても、体脂肪量が減少し、筋肉量が増加していれば、効果があると考えられます。除脂肪体重は、骨密度の予測にも役立ちます。(参考リンク1)
健康管理には、体脂肪量と除脂肪体重の把握が有効です。
除脂肪体重に関連する遺伝子がいくつか報告されており、その一つが遺伝子「LRP5」です。遺伝子のDNA領域「rs3736228」が、除脂肪体重と関連している可能性が示されています。
遺伝子検査で遺伝子タイプを調べることは、早期対策に役立つ可能性があります。
理論的根拠
根拠となる理論によると、DNA領域「rs3736228」は、タンパク質「LRP5」遺伝子の中に位置しており、3つの遺伝子タイプである「CC型」、「CT型」、「TT型」が存在します。日本人の遺伝子タイプの割合は、「CC型」が約51.7%、「CT型」が約40.4%、「TT型」が約7.9%です。(参考リンク2)
世界全体では、「CC型」が約81.18%、「CT型」が約17.84%、「TT型」が約0.98%です。
また、「TT型」や「CT型」は「除脂肪体重」の減少に影響すると考えられており、これらのタイプは「CC型」よりも「除脂肪体重」が少なくなっている可能性が示されています。
作用機序
DNAは、4種類の塩基(A:アデニン、T:チミン、C:シトシン、G:グアニン)を持ち、多様な塩基配列が、さまざまな遺伝子の情報を作り出します。
タンパク質は、複数のアミノ酸が連なったものであり、塩基配列は、このアミノ酸の並び方(アミノ酸配列)を指定します。
遺伝子「LRP5」は、細胞膜を貫通するタンパク質であり、細胞外からのWntタンパク質が遺伝子「LRP5」に結合すると、その信号を細胞内に伝達し、糖や脂質、骨の代謝を調節する働きがあります。(参考リンク3)
また、Wntタンパク質は筋肉の増大や修復にも関与しています。(参考リンク4)
「LRP5」の中にある部位「rs3736228」の塩基が「C」から「T」に変わると、「LRP5」中のアミノ酸のひとつが“アラニン”から“バリン”に変わります(Ala1330Val)。
この1ヶ所のアミノ酸多型がタンパク質全体の構造や活性を変化させ、アミノ酸“バリン”を持っている「LRP5(rs3736228T型)」は、活性が落ちることが分かっています。
さらに、DNA領域「rs3736228」の「CT型」と「TT型」は、「CC型」より骨密度が低い傾向にあるという報告があります。
そのため、「LRP5」の働きが弱くなることが骨代謝に影響を与え、骨密度低下や骨粗鬆症などの原因の一つとなっている可能性があります。(参考リンク5,6)
筋肉と骨は、相互作用することが知られており、「四肢除脂肪体重(ALM)」と骨密度の関連が示されております。また、骨密度低下に伴うサルコペニアのリスクの上昇や、「四肢除脂肪体重(ALM)」が骨密度に比例して増加することが分かっています。(参考リンク7)
「rs3736228」と「四肢除脂肪体重(ALM)」が関連するメカニズムを理解するには、まだまだ追加の研究が必要です。
しかしながら、「LRP5」の骨密度低下に伴う「四肢除脂肪体重(ALM)」の減少、または「LRP5」の活性が落ちてWntタンパク質の信号が弱まり、筋肉が増えなくなることが、原因となっているかもしれません。
遺伝子領域rs3736228において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC54.82%
- CT38.44%
- TT6.74%
遺伝子領域rs3736228において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC74.02%
- CT24.03%
- TT1.95%
遺伝子領域rs9594759において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC71.60%
- CT26.04%
- TT2.37%
遺伝子領域rs9594759において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC23.54%
- CT49.96%
- TT26.51%
遺伝子領域rs4869742において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC3.52%
- CT30.47%
- TT66.02%
遺伝子領域rs4869742において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC48.41%
- CT42.33%
- TT9.25%
遺伝子領域rs3905706において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC35.54%
- CT48.15%
- TT16.31%
遺伝子領域rs3905706において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC58.74%
- CT35.81%
- TT5.46%
遺伝子領域rs9533090において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC87.89%
- CT11.72%
- TT0.39%
遺伝子領域rs9533090において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC31.57%
- CT49.23%
- TT19.20%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:骨減少症
体表的なDNA領域:骨減少症
骨減少症 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs3736228です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
-
CC
54.8% -
CT
38.4% -
TT
6.7%
他に、骨減少症に関わる遺伝子領域はrs9594759があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
CC
71.6% -
CT
26.0% -
TT
2.4%
他に、骨減少症に関わる遺伝子領域はrs4869742があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
CC
3.5% -
CT
30.5% -
TT
66.0%
他に、骨減少症に関わる遺伝子領域はrs3905706があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
CC
35.5% -
CT
48.2% -
TT
16.3%
他に、骨減少症に関わる遺伝子領域はrs9533090があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
CC
87.9% -
CT
11.7% -
TT
0.4%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
関連遺伝子
| 関連遺伝子 | LRP5 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | LINC02341 |
| 関連遺伝子 | CCDC170 |
| 関連遺伝子 | MPP7 |
| 関連遺伝子 | LINC02341 |
参考文献
-
関連遺伝子 LRP5
- 参考リンク : 2012 Apr、Karol Estradaと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide meta-analysis identifies 56 bone mineral density loci and reveals 14 loci associated with risk of fractureという研究によると骨減少症 に関連するrs3736228の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 LINC02341
- 参考リンク : 2008 May、Unnur Styrkarsdottirと研究グループがN Engl J Med に発表したMultiple genetic loci for bone mineral density and fracturesという研究によると骨減少症 に関連するrs9594759の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 CCDC170
- 参考リンク : 2012 Apr、Karol Estradaと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide meta-analysis identifies 56 bone mineral density loci and reveals 14 loci associated with risk of fractureという研究によると骨減少症 に関連するrs4869742の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 MPP7
- 参考リンク : 2012 Apr、Karol Estradaと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide meta-analysis identifies 56 bone mineral density loci and reveals 14 loci associated with risk of fractureという研究によると骨減少症 に関連するrs3905706の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 LINC02341
- 参考リンク : 2012 Apr、Karol Estradaと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide meta-analysis identifies 56 bone mineral density loci and reveals 14 loci associated with risk of fractureという研究によると骨減少症 に関連するrs9533090の関連性が認められました。