seeDNAロゴアイコン 末梢動脈疾患(PAD)

概要

1. 概要

手足にしびれや痛みを感じたり、冷感を伴ったりする閉塞性動脈硬化症(Peripheral Artery Disease: PAD)という病気があります。
この病気は、手足の血管に起こる動脈硬化により、症状が進行すると安静にしているときでも痛みを感じるようになり、最終的には手足に潰瘍や壊死が出現し、切断を余儀なくされるケースもあります。
高齢者は10人に1人が罹患しているともいわれ、特に50歳以上の男性に多い病気でもあります。
PADの程度を評価する指標の1つとして足関節上腕血圧比(AnkleBrachial Index: ABI)があります。これは上腕と足首の血圧を測定し、以下の計算式【ABI=足首の最高血圧÷上腕の最高血圧】で求めることができます。
通常であればABIは1.0以上を示し、0.9より小さいと動脈硬化が疑われます。PADの発生や進行の原因となる要素として、喫煙や肥満などが挙げられます。
また、PADやABIと遺伝子の関連に着目した研究も行われており、双子の比較分析から、PADに関して遺伝の影響は58%、環境の影響は42%であったと報告されています(参考リンク1)。
健康管理に役立てるためにも遺伝子検査を受けて、自身の遺伝的傾向を把握することをおすすめします。

2. 理論的根拠

ハーバード大学医学部の研究チームの研究から、性染色体のX染色体にある「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」という遺伝子と「閉塞性動脈硬化症(Peripheral Artery Disease(PAD)」には関連性があることが報告されています(参考リンク2)。
このことから「DMD」と「PAD」には関連性があることがわかりました。この研究では、「PAD」を[ABI < 0.90]と定義し、ヒスパニック・ラテンアメリカ人を対象に遺伝子「DMD」と「PAD」の関係を調べました。
遺伝子「DMD」には、DNA領域「rs6631478」という遺伝子の特定領域があり、この特定領域の中ではDNAの塩基成分であるアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)のうちの1つが、他の塩基成分に置き換えられています。「rs6631478」の場合、TがCに置き換えられることが分かっています(参考リンク3)。
またこのDNA領域「rs6631478」の遺伝子型は、「TT型」「TC型」「CC型」の3つに分類でき、ABIに負の相関があることが指摘されています。
日本人の遺伝子タイプは、「TC型」が最も多く、次に「TT型」、最も少ないのが「CC型」で、それぞれ47.5%、37.5%、15.0%となっています。
また、遺伝子型が「CC型」の人は、「T」の作用を受けないため、「PAD」の発症リスクは比較的小さいと考えられています。
日本人の割合からすると2番目に多いTT型が、「PAD」にかかりやすいタイプであることが知られています。
そのため、TT型を持つ人は喫煙や肥満などといった遺伝子以外の影響にも気を配ることが必要とされます。

3. 作用機序

「PAD」の指標である「ABI」に関連する遺伝子「DMD」は、人に共通する性染色体の“X染色体”に存在します。
この遺伝子は、細胞の活動を支える物質である「ジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)」を形成するためのタンパク質の合成に関与していると考えられています。
DGCは、細胞の形態維持に必要な細胞骨格と、細胞運動の足場となる細胞外マトリックスを結び付ける役割を担っており、細胞が正常に活動するために不可欠とされています。
遺伝子「DMD」に欠失、重複、突然変異が生じると、筋ジストロフィーや心筋症といった難病を引き起こす可能性があります(参考リンク4)。
遺伝子「DMD」のDNA領域「rs6631478」と「ABI」には相関関係があり、狭心症や心筋梗塞を合併しやすい「PAD」といった病気にかかるリスクが高まる可能性があります。
したがって、遺伝的な傾向を知り、早期に対策を講じることが、疾病リスクを抑えることにつながるかもしれません。

遺伝子領域rs6631478において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

29.82% 49.58% 20.61%
  • TT29.82%
  • TC49.58%
  • CC20.61%

遺伝子領域rs6631478において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

69.35% 27.85% 2.80%
  • TT69.35%
  • TC27.85%
  • CC2.80%

遺伝子領域rs1051730において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

96.19% 3.77% 0.04%
  • GG96.19%
  • GA3.77%
  • AA0.04%

遺伝子領域rs1051730において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

45.68% 43.82% 10.51%
  • GG45.68%
  • GA43.82%
  • AA10.51%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:末梢動脈疾患(PAD)

体表的なDNA領域:末梢動脈疾患(PAD)

末梢動脈疾患(PAD) に最も強く影響する遺伝子領域は、rs6631478です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • TT

    29.8
    %
  • TC

    49.6
    %
  • CC

    20.6
    %

他に、末梢動脈疾患(PAD)に関わる遺伝子領域はrs1051730があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです

  • GG

    96.2
    %
  • GA

    3.8
    %
  • AA

    0.0
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 DMD
関連遺伝子 CHRNA3

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 DMD
  • 参考リンク : 、と研究グループが に発表したという研究によると末梢動脈疾患(PAD) に関連するrs6631478の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 CHRNA3
  • 参考リンク : 2021 Oct、Natalie R van Zuydamと研究グループがCirc Genom Precis Med に発表したGenome-Wide Association Study of Peripheral Artery Diseaseという研究によると末梢動脈疾患(PAD) に関連するrs1051730の関連性が認められました。