硬化性胆管炎
- 硬化性胆管炎は胆管の慢性炎症と瘢痕形成により狭窄を引き起こす進行性の肝疾患で、放置すると肝硬変・肝不全に進行する
- DNA領域rs2836883のG型変異を持つ人は発症リスクが高い傾向にあることがウェルカム・トラスト・サンガー研究所の研究で判明
- 完治は困難だが、定期的な検査・内視鏡治療・肝移植により合併症の予防と病状の進行抑制が可能
概要 硬化性胆管炎は、胆管の慢性的な炎症と瘢痕(はんこん)により狭窄を引き起こす進行性の肝疾患です。この病気は肝内外の胆管に影響を与え、胆汁の流れを妨げます。 胆汁は脂肪の消化を助ける消化液ですが、その流れが閉塞すると肝臓内に胆汁が蓄積し、最終的には肝臓の損傷を引き起こします。 硬化性胆管炎の患者は、病気の進行具合により様々な症状を示します。 初期段階では症状がない場合もありますが、病気が進行すると、黄疸(皮膚と目の黄変)、かゆみ(掻痒症)、体重減少、脂肪の吸収不良による下痢、腹痛、疲労感などの症状を示します。 重症化すると、肝硬変を発症するリスクが高まり、肝不全にもつながります。さらに、胆管がんや肝がんを発症するリスクも高まります。 診断には、血液検査、MRI、超音波の画像診断、肝生検(腹部に針を刺し肝臓組織の一部を取り出して検査)、胆管造影などがあります。 硬化性胆管炎は完治させることはできませんが、治療と検査により症状を把握し、合併症の予防と病状の進行を遅らせることが可能です。 ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のJiらの研究により、硬化性胆管炎の罹患リスクがrs2836883というDNA領域と関連していることが明らかになりました。 このDNA領域にはGG、AG、AAの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、硬化性胆管炎のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
硬化性胆管炎とは何か
硬化性胆管炎は、胆管の慢性的な炎症と瘢痕(線維化)により胆管が狭窄し、胆汁の流れが阻害される進行性の肝疾患です。肝内外の胆管に影響を及ぼし、胆汁うっ滞が肝臓の損傷を引き起こします。
硬化性胆管炎の原因とメカニズム
正確な発症原因は未解明ですが、自己免疫異常が主な要因と考えられています。以下のリスク因子が関与します。
- 自己免疫異常:免疫系が胆管を誤って攻撃し、慢性炎症と線維化を引き起こす
- 遺伝的素因:DNA領域rs2836883のG型変異保有者はリスクが上昇
- 炎症性腸疾患との合併:患者の約70〜80%が潰瘍性大腸炎を合併
- 男性に好発:男女比は約2:1で、30〜40代に発症が集中
硬化性胆管炎の主な症状
初期段階では無症状の場合もありますが、病状の進行に伴い以下の症状が現れます。
- 黄疸(皮膚と眼球の黄変)
- 掻痒症(慢性的なかゆみ)
- 体重減少・脂肪吸収不良による下痢
- 右上腹部の痛み
- 慢性的な疲労感
硬化性胆管炎と原発性胆汁性胆管炎の違い
| 比較項目 | 硬化性胆管炎(PSC) | 原発性胆汁性胆管炎(PBC) |
|---|---|---|
| 障害部位 | 肝内外の大型胆管 | 肝内小型胆管 |
| 好発性別 | 男性(男女比 約2:1) | 女性(男女比 約1:9) |
| 好発年齢 | 30〜40代 | 40〜60代 |
| IBD合併 | 約70〜80% | まれ |
| 特異的抗体 | p-ANCA(約60〜80%) | 抗ミトコンドリア抗体(約95%) |
| 治療 | 内視鏡治療・肝移植 | ウルソデオキシコール酸 |
硬化性胆管炎の合併症リスク
適切な治療を行わない場合、以下の合併症を引き起こすリスクがあります。
- 肝硬変(慢性的な肝障害による肝臓の線維化)
- 肝不全(肝機能の喪失)
- 胆管がん(胆管癌の発生リスクは一般人口の約400倍)
- 胆嚢結石・胆管結石
- 脂溶性ビタミン欠乏症(ビタミンA・D・E・Kの吸収不良)
診断方法
以下の検査により診断されます。
- 血液検査:ALP・γ-GTPの上昇を確認
- MRCP(MR胆管膵管造影):胆管の狭窄・拡張パターンを画像で確認
- ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影):胆管造影と治療を同時に施行
- 肝生検:肝臓組織の病理学的評価
- 超音波検査:胆管の構造異常をスクリーニング
遺伝子と硬化性胆管炎の関連
DNA領域rs2836883と発症リスクの関係
ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のJiらの研究により、DNA領域rs2836883が硬化性胆管炎の罹患リスクと関連していることが判明しました。
- rs2836883にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型が存在
- G型変異を持つ遺伝子型の人は、硬化性胆管炎のリスクが高い傾向
日本人における遺伝子型分布(rs2836883)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 69.9% | 55.6% |
| GA型 | 27.3% | 37.9% |
| AA型 | 2.6% | 6.4% |
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:硬化性胆管炎
硬化性胆管炎 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs2836883です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- GG
69.9 % - GA
27.3 % - AA
2.6 %
検査の根拠
ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のJiらの研究により、硬化性胆管炎の罹患リスクが遺伝子と関連していることが明らかになりました。人間のゲノムには、rs2836883という領域が存在し、その領域の遺伝子にはGとAの2種類の変異があります。Gタイプの変異を持つ人は、硬化性胆管炎のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
- ■
関連遺伝子
| 関連遺伝子 | LINC02940 |
|---|
よくある質問(FAQ)
Q1. 硬化性胆管炎とは何ですか?
硬化性胆管炎は、胆管の慢性的な炎症と瘢痕(線維化)により胆管が狭窄し、胆汁の流れが阻害される進行性の肝疾患です。肝内外の胆管に影響を与え、放置すると肝硬変や肝不全に進行するリスクがあります。
Q2. 硬化性胆管炎の原因は何ですか?
正確な原因は未解明ですが、自己免疫異常が主な要因と考えられています。遺伝的素因も関与しており、DNA領域rs2836883のG型変異を持つ人はリスクが高い傾向にあります。炎症性腸疾患(特に潰瘍性大腸炎)との合併率は約70〜80%です。
Q3. 硬化性胆管炎と原発性胆汁性胆管炎の違いは?
硬化性胆管炎は肝内外の大型胆管に炎症・線維化が起こる疾患で、男性に好発します。原発性胆汁性胆管炎は肝内小型胆管が破壊される疾患で、中年女性に好発し、抗ミトコンドリア抗体が陽性となります。
Q4. 遺伝子検査で硬化性胆管炎のリスクは分かりますか?
DNA領域rs2836883の遺伝子型を調べることで、硬化性胆管炎の発症リスク傾向を把握できます。G型変異を持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることがウェルカム・トラスト・サンガー研究所の研究で判明しています。
Q5. 硬化性胆管炎は治りますか?
現時点で完治させる薬物療法は確立されていません。ウルソデオキシコール酸による症状緩和や内視鏡的胆管拡張術が行われますが、根治的治療は肝移植のみです。定期的な経過観察により合併症の予防と進行抑制が可能です。
参考文献
- 参考リンク1 : 2017 Feb., Sun-Gou Ji, Nat Genet