seeDNAロゴアイコン 敗血症の重症化リスク

概要

1. 概要

自分がウイルスや細菌に感染した際に、重症化する可能性があるか不安に感じたことはありませんか?ウイルスや細菌の感染によって、体内では免疫系を活性化するために炎症性サイトカインが産生され、発熱や頭痛などの症状が生じます。
通常は、ウイルスや細菌が減少すると、サイトカインの分泌量も減り、症状は収まります。しかし、制御不能な過剰な免疫反応によって、生命を脅かすような臓器障害が起こることがあります。
これを「敗血症」と呼びます。敗血症は、重篤化すると複数の臓器で障害が起こり、多臓器不全となり、死に至る病気で、28日後の死亡率は60%に達すると言われています(参考リンク1)。
敗血症の原因はウイルスや細菌などの感染症ですが、驚くべきことに敗血症の起こりやすさには遺伝的要因が関与していると言われています(参考リンク2)。
自分自身に敗血症による重症化のリスクがあるかどうか、一度遺伝子検査で調べてみませんか?

2. 理論的根拠

敗血症の原因の一つとして、感染による炎症性刺激によって、炎症性サイトカイン(IL1など)が過剰に産生されることが挙げられます(参考リンク3)。
この原因の一つと考えられる遺伝子して、13番染色体に存在する遺伝子「SRSF1P1(serine and arginine rich splicing factor 1 pseudogene 1)」が見つかりました(参考リンク4)。
この遺伝子に含まれるDNA領域の一つ「rs9529561」は、敗血症患者(4,210人)の遺伝的変異の解析により、28日後の死亡率と相関関係にある変異が見つかりました(参考リンク4)。
遺伝子「SRSF1P1」は、自身がタンパク質になる機能を持ちませんが、炎症性サイトカインに関連した遺伝子の発現を調節する機能があります。
DNA領域「rs9529561」に変異があると、炎症性サイトカインの過剰産生が起こります。DNA領域「rs9529561」には、「AA型」「AG型」「GG型」の3つの遺伝子型に分けられます。
また、日本人の遺伝子型タイプは、「AA型」が84.1%、「AG型」が15.2%、そして「GG型」が0.7%に分けられます(参考リンク5)。
「G」を含む変異型では、炎症性サイトカインの産生量が増え、敗血症を引き起こすリスクが上がる可能性があります。
また、「GG型」は重症化しやすく、死亡率も高くなる可能性が上がるほか、慢性腎臓病を引き起こしやすくなることも報告されています(参考リンク4)。

3. 作用機序

炎症性サイトカインは、免疫系の活性化に重要な役割を果たしますが、分泌制御が効かなくなると、さまざまな臓器にダメージを与え、場合によっては臓器障害を引き起こし、生命を脅かすことがあります。
遺伝子「SRSF1P1」は、pseudogene(偽遺伝子)と呼ばれ、タンパク質としての機能は持ちませんが、炎症性サイトカインの産生に重要な転写因子である「GATA2」に結合し、炎症性サイトカインの産生に関与します。
DNA領域「rs9529561」に変異があると、遺伝子「SRSF1P1」は「GATA2」に結合しやすくなり、「GATA2」の機能(遺伝子の転写活性)を高めることで、炎症性サイトカインの過剰産生が起こります(参考リンク4,6)。
敗血症は、誰もがかかる可能性がある病気であり、治療には集中治療が必要となる場合があります。
遺伝子「SRSF1P1」のDNA領域「rs9529561」に変異がある場合、免疫機能を高めるために栄養バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけることが重要です。また、体調に異変を感じた場合は、我慢せずに医療機関にかかることをお勧めします。

遺伝子領域rs9529561において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

100.00% 0.00% 0.00%
  • AA100.00%
  • AG0.00%
  • GG0.00%

遺伝子領域rs9529561において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

84.08% 15.23% 0.69%
  • AA84.08%
  • AG15.23%
  • GG0.69%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:敗血症の重症化リスク

体表的なDNA領域:敗血症の重症化リスク

敗血症の重症化リスク に最も強く影響する遺伝子領域は、rs9529561です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • AA

    100.0
    %
  • AG

    0.0
    %
  • GG

    0.0
    %

検査の根拠

イェーナ大学病院のScheragらの研究により、敗血症の重症化リスクが遺伝子と関連していることが明らかになりました。人間のゲノムには、rs9529561という領域が存在し、その領域の遺伝子にはAとGの2種類の変異があります。Aタイプの変異を持つ人は、敗血症の重症化リスクが高い傾向にあることが分かりました。

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 LINC00383

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 LINC00383
  • 参考リンク : 2016 Oct、André Scheragと研究グループがEBioMedicine に発表したGenetic Factors of the Disease Course after Sepsis: A Genome-Wide Study for 28Day Mortalityという研究によると敗血症の重症化リスク に関連するrs9529561の関連性が認められました。