睡眠時間の長さ
概要
1. 概要
睡眠時間の長さを遺伝子が決める?
適切な睡眠時間をとることは、健康的な生活を送るために重要です。最近の研究によると、遺伝子の「PAX8」付近のある部位が、睡眠時間に密接に関係していることがわかりました。
この部位は、眠りたくても眠れない症状に影響を与えることがあり、タイプによって睡眠時間を短くする可能性があるとされています。
睡眠時間が短いと、精神疾患や高血圧、糖尿病などのリスクが高くなるため、適切な睡眠をとることが大切です。
質の良い睡眠には、身体的効果だけでなく、ストレスの解消やうつ病の予防などの精神的効果もあります。
遺伝子検査を通じて、ご自身の遺伝子タイプを知ることで、睡眠に関する遺伝情報を理解し、より健康的な生活を送ることができるかもしれません。
2. 理論的根拠
イギリスのバイオバンク事業による研究から、遺伝子「PAX8」付近にある特定の遺伝子領域が睡眠時間の短さに関係していることが分かりました。
この領域には「rs62158211」というDNA領域があり、「GG」型、「GT」型、「TT型」の3つの遺伝子型が存在します。
日本人の場合、「GG」型が77.4%で最も多い「、「GT」型が21.2% やや多い、「TT」型が1.4%で最も少ないとなっています。そして「GG」型は睡眠時間が短い傾向にあり、「GT」型はやや睡眠時間が短い傾向があることも報告されています。
3. 作用機序
「PAX8」という遺伝子は、人間が持つ24の染色体のうち、2番染色体に位置しています。この遺伝子は甲状腺に特に多く存在し、甲状腺の発生と機能の維持に関する情報を持っています(参考リンク3)。
甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌する役割を持っていますが、「PAX8」が正常に機能していないと、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることがあります。
この過剰分泌は、交感神経を活性化することが知られており、その結果、心拍数が上昇し興奮状態になるため、睡眠に入ることが難しくなり、睡眠時間が短くなる傾向があります。
このように、「PAX8」遺伝子と睡眠時間の長さは関連していると考えられています。そのため、「rs62158211」は、睡眠時間の長さに関与するDNA領域のひとつとして注目されています。
遺伝子領域rs62158211において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG79.96%
- GT18.92%
- TT1.12%
遺伝子領域rs62158211において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG64.92%
- GT31.31%
- TT3.77%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:睡眠時間の長さ
体表的なDNA領域:睡眠時間の長さ
睡眠時間の長さ に最も強く影響する遺伝子領域は、rs62158211です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
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GG
80.0% -
GT
18.9% -
TT
1.1%
検査の根拠
マサチューセッツ総合病院のLaneらの研究により、睡眠時間の長さが遺伝子と関連していることが明らかになりました。人間のゲノムには、rs62158211という領域が存在し、その領域の遺伝子にはGとTの2種類の変異があります。Gタイプの変異を持つ人は、睡眠時間が長い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | LINC02966 |
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参考文献
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関連遺伝子 LINC02966
- 参考リンク : 2017 Feb、Jacqueline M Laneと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide association analyses of sleep disturbance traits identify new loci and highlight shared genetics with neuropsychiatric and metabolic traitsという研究によると睡眠時間の長さ に関連するrs62158211の関連性が認められました。
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関連遺伝子 LINC02966
- 参考リンク : 2016 Aug、Samuel E Jonesと研究グループがPLoS Genet に発表したGenome-Wide Association Analyses in 128,266 Individuals Identifies New Morningness and Sleep Duration Lociという研究によると睡眠時間の長さ に関連するrs62158211の関連性が認められました。