球状赤血球症
- 球状赤血球症とは、赤血球膜タンパク質の遺伝的欠陥により赤血球が球形化し、溶血性貧血を引き起こす遺伝性血液疾患である
- DNA領域rs113021938のT型変異を持つ人は球状赤血球症のリスクが高い傾向にあることがケンブリッジ大学の研究で判明
- 日本人のTT型保有率は98.0%、TG型は1.9%であり、世界平均(TT型98.3%)と近い分布を示す
概要 球状赤血球増加症(Spherocytosis)は、遺伝的な血液疾患で、赤血球の形と機能に大きな影響を与えます。通常の赤血球は中央がくぼんでおり、端が盛り上がった二重凹円盤状です。 これにより血管内をスムーズに流れることができます。しかし、球状赤血球増加症では、赤血球が球形に変形し、本来の形を失っています。 この疾患は、赤血球膜にある特定のタンパク質(バンド3タンパク質やタンパク質4.2)の欠陥が原因で起こります。これらのタンパク質は赤血球の形を保ち、柔軟性を与える役割を果たしています。 欠陥があると、赤血球は脆くなり、脾臓などで早く壊れてしまい、溶血性貧血を引き起こします。 球状の赤血球は血管内で変形しづらく、細い毛細血管を通るのが難しくなります。これが組織の酸素不足を招く一因です。また、これらの赤血球は凝集しやすく、血管を詰まらせ、臓器の機能に影響を与える可能性があります。 症状には、貧血、黄疸、脾臓の腫れなどがあります。軽度の場合は栄養補助や薬物療法でケアできますが、重度の場合は脾臓の摘出手術が必要になることもあります。 要するに、球状赤血球増加症は赤血球の形と機能に影響を及ぼす遺伝的疾患で、溶血性貧血を引き起こします。 治療法は限られていますが、薬物療法や手術により、多くの患者が症状をコントロールし、生活の質を向上させることができます。 ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究により、球状赤血球症の罹患リスクがrs113021938というDNA領域と関連していることが明らかになりました。 このDNA領にはTT,TG,GGの3つの遺伝子型があり、Tを持つ遺伝子型の人は、球状赤血球症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
球状赤血球症とは何か
球状赤血球症(Spherocytosis)とは、赤血球膜のタンパク質に遺伝的欠陥が生じ、赤血球が正常な二重凹円盤状から球形に変形する遺伝性血液疾患です。球形化した赤血球は脾臓で早期に破壊され、溶血性貧血を引き起こします。
球状赤血球症の原因とは
球状赤血球症の原因は、赤血球膜を構成する特定のタンパク質の遺伝的欠陥です。具体的には以下の2つのタンパク質が関与しています。
- バンド3タンパク質:赤血球の形状を維持する構造タンパク質
- タンパク質4.2:赤血球膜に柔軟性を付与する役割を担う
これらのタンパク質に欠陥があると、赤血球は本来の二重凹円盤状を維持できず、球形に変形します。球形化した赤血球は以下の問題を引き起こします。
- 脾臓での早期破壊:脆くなった赤血球が脾臓で急速に分解される
- 毛細血管通過困難:球形のため細い毛細血管を通過しにくくなる
- 酸素供給不足:組織への酸素運搬能力が低下する
- 赤血球凝集:血管を詰まらせ臓器機能に影響を与える可能性がある
球状赤血球症の主な症状
球状赤血球症の症状は重症度により異なりますが、主に以下の3つが挙げられます。
- 貧血:赤血球の早期破壊により酸素運搬能力が低下
- 黄疸:赤血球破壊時に放出されるビリルビンの蓄積による皮膚・白目の黄変
- 脾腫:赤血球の過剰な破壊処理による脾臓の腫大
球状赤血球症の治療法の比較
| 治療法 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 栄養補助療法 | 軽度の患者 | 葉酸補充などで赤血球産生を支援 |
| 薬物療法 | 軽度〜中等度の患者 | 貧血や黄疸の症状管理を目的とした投薬 |
| 脾臓摘出手術(脾摘) | 重度の患者 | 赤血球の早期破壊を防止し貧血を根本改善 |
遺伝子と球状赤血球症の関連
DNA領域rs113021938と球状赤血球症の関係
ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究(2020年、Cell掲載)により、球状赤血球症の罹患リスクがDNA領域rs113021938と関連していることが明らかになりました。
- rs113021938にはTT・TG・GGの3つの遺伝子型が存在
- T型変異を持つ遺伝子型(TT型・TG型)の人は球状赤血球症のリスクが高い傾向
- この遺伝子領域はLINC02571遺伝子に関連する
日本人と世界における遺伝子型分布の比較(rs113021938)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 98.0% | 98.3% |
| TG型 | 1.9% | 1.6% |
| GG型 | 0.1%以下 | 0.1%以下 |
日本人のT型変異保有率(TT+TG)は99.9%であり、世界平均の99.9%とほぼ同等の水準です。GG型は日本人・世界ともに0.1%以下と極めて稀な遺伝子型です。
その他の関連DNA領域の遺伝子型分布比較
| DNA領域 | 遺伝子型 | 日本人 | 世界 |
|---|---|---|---|
| rs45479691 | GG | 99.9% | 90.6% |
| GA | 0.1%以下 | 9.0% | |
| AA | 0.1%以下 | 0.2% | |
| rs77542162 | AA | 99.9% | 96.8% |
| AG | 0.1%以下 | 3.0% | |
| GG | 0.1%以下 | 0.1%以下 | |
| rs964184 | GG | 10.3% | 2.2% |
| GC | 43.6% | 25.2% | |
| CC | 45.9% | 72.5% |
rs964184において、日本人のGG型保有率は10.3%で世界平均の2.2%と比較して約4.7倍高い特徴があります。
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:球状赤血球症
球状赤血球症 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs113021938です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
- TT
98.0 % - TG
1.9 % - GG
0.1%以下
他に、球状赤血球症に関わる遺伝子領域はrs45479691があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- GG
99.9 % - GA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
他に、球状赤血球症に関わる遺伝子領域はrs77542162があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- AA
99.9 % - AG
0.1%以下 - GG
0.1%以下
他に、球状赤血球症に関わる遺伝子領域はrs964184があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
- GG
10.3 % - GC
43.6 % - CC
45.9 %
検査の根拠
ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究により、球状赤血球症の罹患リスクが遺伝子と関連していることが明らかになりました。人間のゲノムには、rs113021938という領域が存在し、その領域の遺伝子にはTとCの2種類の変異があります。Tタイプの変異を持つ人は、球状赤血球症のリスクが高い傾向にあることが分かりました。
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | LINC02571 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | ALAS2 |
| 関連遺伝子 | ABCA6 |
| 関連遺伝子 | ZPR1 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 球状赤血球症とは何ですか?
球状赤血球症(Spherocytosis)とは、赤血球膜のタンパク質(バンド3タンパク質・タンパク質4.2)の遺伝的欠陥により、赤血球が正常な二重凹円盤状から球形に変形する遺伝性血液疾患です。球形化した赤血球は脾臓で早期に破壊され、溶血性貧血・黄疸・脾腫などの症状を引き起こします。
Q2. 球状赤血球症の原因は何ですか?
原因は赤血球膜を構成するバンド3タンパク質やタンパク質4.2の遺伝的欠陥です。これらのタンパク質は赤血球の形状維持と柔軟性付与に不可欠であり、欠陥により赤血球は球形化し、脾臓で早期に破壊されます。
Q3. 球状赤血球症は遺伝子と関連していますか?
はい。ケンブリッジ大学のVuckovicらの研究(2020年、Cell掲載)により、DNA領域rs113021938が球状赤血球症のリスクと関連していることが判明しています。rs113021938にはTT・TG・GGの3つの遺伝子型があり、T型変異を持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあります。
Q4. 球状赤血球症の治療法にはどのようなものがありますか?
治療法は重症度により異なります。軽度の場合は葉酸補充などの栄養補助療法や薬物療法で管理が可能です。重度の場合は脾臓摘出手術(脾摘)が必要になることがあり、脾摘により赤血球の早期破壊を防止し、貧血を根本的に改善できます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2020 Sep., Dragana Vuckovic, Cell
- 参考リンク2 : 2016 Nov., William J Astle, Cell