精巣がん
概要
1. 概要
精巣は、男性の体内にある臓器で、左右の陰嚢の内部に1つずつ存在しています。
この臓器は、男性ホルモンを分泌したり、精子を作ったりする重要な役割を担っています。精巣がんは、精巣内部にできる悪性腫瘍であり、10万人あたり1人が発症する比較的まれな病気です。
ただし、20~30歳代の男性においては最も多い悪性腫瘍とされ、若年層での発症が特徴的です(参考リンク1)。
精巣がんの発症原因はまだはっきりしていませんが、停留精巣(陰嚢の中に精巣が入っていない状態)を持つ人々は、精巣がんになりやすいとされています。
また、外傷や家族歴も危険因子とされていますが、最近の研究報告によると、遺伝子「TKTL1」が精巣がんの発症リスクにある程度影響を与えていることが明らかになりました(参考リンク2)。
2. 理論的根拠
アメリカペンシルベニア大学と精巣腫瘍コンソーシアムによって、特定の遺伝子「TKTL1」の型が、精巣がんを発症しやすい人を特定することができることが明らかになりました。
この遺伝子の中で、「rs17336718」と呼ばれるDNA領域の特定の遺伝子型では、精巣がんを発症する可能性が高いことが示されました(参考リンク1)。
DNA領域「rs17336718」は、3つの遺伝子型「CC型」「CT型」「TT型」が存在します。
このうち、Risk AlleleであるTを持つTT型は精巣がんを発症しやすい傾向があり、CT型はやや発症しやすい傾向があることが明らかになっています。
日本人においては、遺伝子型の分布が以下のようになっています。
「CC型」が81.8%、「CT型」が17.2%で、「TT型」はほぼ存在しないことがわかりました(参考リンク3)。
このため、日本人は精巣がんを発症するリスクが比較的低いと言えます。
しかし、精巣がんは若年者に発症することが多く、初期症状が痛みを伴わない陰嚢の腫れやしこりであるため、早期発見が難しいことが多いとされています。
また、精巣がんは進行が速く、全身のリンパ節や臓器に急速に転移することもあります。
以上のことから、遺伝子検査により精巣がんの発症リスクを事前に把握することで、精巣がんの早期発見・早期治療に役立つことが期待されます。
3. 作用機序
精巣がんの発症に関わる可能性がある遺伝子「TKTL1」は、ヒトに共通する24の染色体のうち、X染色体に位置しています。
遺伝子「TKTL1」のイントロン部分(遺伝子の転写後に最終的に除去される部分)に存在するDNA領域「rs17336718」は、遺伝子「TKTL1」の発現を制御することが明らかになっています。
一般的に、細胞がエネルギーを得る方法には、「解糖系」と「(クエン酸回路による)電子伝達系」の2種類があります。
正常な細胞では、酸素を使って効率的に多くのエネルギーが得られる「電子伝達系」を利用します。
しかしながら、がん細胞では、効率は悪いですが、より早くエネルギーを得られ、増殖に必要な核酸の材料も生産できる「解糖系」が優位になることが知られています。
※これを好気的解糖 (ワールブルク効果)と呼びます。
遺伝子「TKTL1」は、この「解糖系」由来の核酸を合成する経路に深く関与しており、多くのがん細胞で遺伝子「TKTL1」が発現し、予後不良に関連すると報告されています。(参考リンク4)
そして、精巣がん患者でも、遺伝子「TKTL1」が関与していることが報告され、腫瘍増殖を促進する役割を持つと考えられています。(参考リンク2)
遺伝子「TKTL1」のDNA領域「rs17336718」は精巣がんの発症リスクに関連しており、注目されている一塩基多型の一つです。
遺伝子領域rs17336718において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC99.9%
- CT0.0%
- TT0.0%
遺伝子領域rs17336718において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC88.4%
- CT11.2%
- TT0.3%
遺伝子領域rs56016578において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC99.9%
- CT0.0%
- TT0.0%
遺伝子領域rs56016578において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC97.8%
- CT2.1%
- TT0.0%
遺伝子領域rs7221274において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA65.2%
- AG31.0%
- GG3.6%
遺伝子領域rs7221274において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA36.0%
- AG47.9%
- GG15.9%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:精巣がん
体表的なDNA領域:精巣がん
精巣がん に最も強く影響する遺伝子領域は、rs17336718です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
-
CC
99.9% -
CT
0.0% -
TT
0.0%
他に、精巣がんに関わる遺伝子領域はrs56016578があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
CC
99.9% -
CT
0.0% -
TT
0.0%
他に、精巣がんに関わる遺伝子領域はrs7221274があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
AA
65.2% -
AG
31.0% -
GG
3.6%
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | TKTL1 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | CLDN14 |
| 関連遺伝子 | PPM1E |
参考文献
- 参考リンク1 : 2021 May.,Tomohiro Matsuda,JJCO.
- 参考リンク3 : DNA領域「rs17336718」の情報 TogoVar
- 参考リンク4 : 2006 Feb., S Langbein, BJC.
- 参考リンク5 : 2017 Jul., Zhaoming Wang, Nat Genet