血栓
- 血栓は、血管の中に血のかたまりができて血の流れを止める病気で、脳卒中・心筋梗塞の大きな原因となります。
- DNA領域rs114209171のCC型では血小板のアポトーシスがおさえられやすく、血栓のリスクが高くなることが研究で分かっています。
- 適切な食事・運動・体重の管理と遺伝子検査の活用で、血栓症の予防と早めの対策ができます。
概要
【概要・特徴】 「将来、体にまひが出て介護が必要になるのは怖いな。嫌だな。」と考えたことはありませんか?近年、「脳血管疾患(脳の血管の病気)」は、日本人が介護を必要とする理由の第2位で、死因では第3位になっています。 脳卒中は脳血管疾患の一種で、血栓症とも呼ばれます。血栓症は、血管の中に血のかたまりが詰まり、血の流れを止めてしまう危険な病気です。 多くの場合、前触れもなく突然起こり、後遺症としてまひや言葉の障害、体を動かしにくくなる障害などが残ります。重い場合は命を落とすこともあります。血栓症は再発しやすい病気です。 血栓症の原因は、食べすぎや運動不足などの生活習慣によるものが多いですが、実は遺伝子の影響(体質)も関わっていると言われています(参考リンク1)。 自分が血栓症になりやすい体質かどうか、遺伝子検査で調べてみませんか?
【2. 理論的根拠】 脳卒中や血栓症の原因の一つに、血小板の数が多いことがあります。血小板は血を固めて出血を止める大切な役割をしていますが、固まりすぎると血栓ができて血管が詰まることがあります(参考リンク2)。 体の中では、血小板の数が増えすぎないように調整されています。その働きを担う遺伝子の一つが「FUNDC2 (FUN14 domain containing 2)」です。 「FUNDC2」は10番染色体にあり、その中のDNA領域「rs114209171」に、血栓症の起こりやすさに関係する違いが見つかりました。「rs114209171」には、「TT型」「TC型」「CC型」の3つの遺伝子型があります。 日本人の場合、遺伝子型の割合は、「TT型」が67.6%、「TC型」が29.3%、「CC型」が3.1%です(参考リンク3)。 このうち「TC型」や「CC型」では血小板の数が増えて、血栓症を起こしやすいことが分かっています。特に、日本人で最も少ない「CC型」では、心筋梗塞(心臓の血管が詰まる病気)や脳卒中のリスクがより高くなる可能性があります(参考リンク4,5)。
【3. メカニズム】 人の体には、血小板が増えすぎないようにするしくみがあります。血小板は、血液の中の刺激に反応して、アポトーシス(細胞が自ら死ぬしくみ)を起こすことで数が減ります。 このアポトーシスの量は細かく調整されていて、その役割を担っているのが遺伝子「FUNDC2」です。 遺伝子「FUNDC2」からできるタンパク質は、血小板の中のミトコンドリア(細胞のエネルギー工場)にあります。このタンパク質は、AKTというタンパク質を通じて、ミトコンドリアの膜にあるBCLxL(細胞死を防ぐタンパク質)の働きを強めます。その結果、血小板のアポトーシスがおさえられ、血小板の数が増えます。 「rs114209171」というDNA領域が「CC型」の場合、遺伝子「FUNDC2」がアポトーシスをおさえる働きが強まり、血小板の数が増えて、血栓ができるリスクが高まることが報告されています(参考リンク6)。 また、血栓症は、食べすぎや運動不足などの生活習慣によっても起こりやすくなります。 特に、脂肪の多い食事はリスクを高めると考えられています。遺伝子検査を活用して生活習慣を見直すことで、血栓症の予防につなげることができます。
血栓とは何か
血栓とは、血管の中に血のかたまり(血栓)ができて、血の流れを一部または完全に止めてしまう病気です。脳卒中や心筋梗塞の大きな原因で、脳血管疾患は日本人が介護を必要とする理由の第2位、死因の第3位です。
血栓ができる原因としくみ
血栓ができる主な原因は、血小板が増えすぎることです。
- 血小板が増えすぎる:血小板は血を固めるのに必要ですが、数が増えすぎると血が固まりすぎて、血栓ができます。
- 遺伝子FUNDC2の違い:10番染色体にある遺伝子「FUNDC2」が、血小板のアポトーシス(細胞が自ら死ぬしくみ)を調整し、血小板の数を整えます。
- 生活習慣の影響:食べすぎ・運動不足・脂肪の多い食事がリスクを高めます。
血栓の主な症状と後遺症
血栓症は前触れなく突然発症することがほとんどです。
- 脳卒中による麻痺(体の片側が動かなくなるなど)
- 言語障害(言葉が出にくい・うまく話せない)
- 運動障害(歩きにくい・手先が思うように動かない)
- 重い場合は死亡に至るリスクがあります。
- 再発リスクが高い病気です。
血栓と脳卒中の関係
脳卒中は脳血管疾患の一種で、血栓症の代表的な病気です。血管の中にできた血栓が脳の血管をふさぐことで起こります。近年、脳血管疾患は日本人が介護を必要とする理由の第2位で、死因では第3位です。
血栓の「遺伝子の影響」と「生活習慣の影響」の比較
| 比較項目 | 遺伝子の影響 | 生活習慣の影響 |
|---|---|---|
| 主な原因 | FUNDC2遺伝子の違い(rs114209171) | 食べすぎ・運動不足・脂肪の多い食事 |
| 影響するところ | 血小板の数を調整する働きに直接影響 | 血液のねばりが強くなる・血管が傷つきます。 |
| リスクの高さ | CC型の人は特にリスクが高いです。 | いくつもの原因が積み重なります。 |
| 予防できるか | 遺伝子検査で前もって知ることができます。 | 生活習慣を改善すれば減らせます。 |
血栓の予防法
血栓の予防には、次の対策が効果的です。
- 適度な運動:1日30分以上のウォーキングなどの有酸素運動
- 食事管理:脂肪をひかえ、野菜・魚を中心としたバランスの良い食事です。
- 適正体重の維持:体格指数(体重と身長から計算する肥満の目安)18.5〜24.9の範囲を目標にします。
- 遺伝子検査の活用:自分のリスクを知り、自分に合った予防策を選べます。
遺伝子と血栓の関連
DNA領域rs114209171と血栓のリスクの関係
血栓のできやすさには遺伝子の影響(体質)が関わっていることが、研究で分かっています(参考リンク1)。血小板の数を調整する遺伝子「FUNDC2(FUN14 domain containing 2)」の違いが、血栓のリスクに影響します。
- FUNDC2は10番染色体にあり、DNA領域「rs114209171」に血栓に関係する違いが見つかりました。
- rs114209171にはTT型・TC型・CC型の3つの遺伝子型があります。
- 日本人ではTT型67.6%、TC型29.3%、CC型3.1%の割合で分布しています(参考リンク3)。
- TC型・CC型では血小板の数が増え、血栓ができやすいです。
- 特にCC型では心筋梗塞や脳卒中のリスクがより高い傾向があります(参考リンク4, 5)。
日本人の遺伝子型の割合(rs114209171)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| TT型 | 76.5% | 58.4% |
| TC型 | 21.8% | 35.9% |
| CC型 | 1.5% | 5.5% |
FUNDC2遺伝子がはたらくしくみ
FUNDC2は、血小板の中のミトコンドリア(細胞のエネルギー工場)にあるタンパク質をつくる遺伝子で、次のようなしくみで血小板の数を調整します。
- AKTというタンパク質を通じて、ミトコンドリアの膜にあるBCLxL(細胞死を防ぐタンパク質)の働きを強めます。
- BCLxLの働きが強まることで、血小板のアポトーシス(細胞が自ら死ぬしくみ)がおさえられます。
- アポトーシスがおさえられた結果、血小板の数が増えます。
- CC型の場合、FUNDC2がアポトーシスをおさえる働きが強まり、血小板の数が大きく増えます(参考リンク6)。
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:血栓
血栓 に最も強く影響するDNA領域は、rs114209171です。 日本での遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- TT
76.5 % - TC
21.8 % - CC
1.5 %
他に、血栓に関わるDNA領域にはrs45479691があります。 日本での遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- GG
99.9 % - GA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
他に、血栓に関わるDNA領域にはrs4558856があります。 日本での遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- CC
42.1 % - CG
45.5 % - GG
12.3 %
他に、血栓に関わるDNA領域にはrs7279911があります。 日本での遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- GG
56.9 % - GA
37.0 % - AA
6.0 %
他に、血栓に関わるDNA領域にはrs77542162があります。 日本での遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- AA
99.9 % - AG
0.1%以下 - GG
0.1%以下
他に、血栓に関わるDNA領域にはrs738409があります。 日本での遺伝子型の割合は下記のとおりです。
- CC
33.2 % - CG
48.8 % - GG
17.8 %
検査の根拠
Evangelouらの研究(2013年)により、血栓症の起こりやすさには遺伝子の影響が関わっていることが分かりました(参考リンク1)。遺伝子FUNDC2のDNA領域rs114209171がCC型の人は、血小板のアポトーシス(細胞が自ら死ぬしくみ)をおさえる働きが強まり、血小板の数が増えるため、血栓のリスクが高くなります(参考リンク6)。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップのイメージ図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | FUNDC2 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | ALAS2 |
| 関連遺伝子 | TMEM131L |
| 関連遺伝子 | LINC02920 |
| 関連遺伝子 | ABCA6 |
| 関連遺伝子 | PNPLA3 |
よくある質問
Q1. 血栓とは何ですか?
血栓とは、血管の中に血のかたまりができて、血の流れを一部または完全に止めてしまう病気です。脳卒中や心筋梗塞の大きな原因で、脳血管疾患は日本人が介護を必要とする理由の第2位、死因の第3位です。
Q2. 血栓の原因は何ですか?
主な原因は血小板が増えすぎることです。遺伝子FUNDC2のDNA領域rs114209171がCC型の人は、血小板のアポトーシス(細胞が自ら死ぬしくみ)がおさえられ、血小板の数が増えます。さらに、食べすぎ・運動不足・脂肪の多い食事もリスクを高める原因です。
Q3. 血栓と脳卒中の関係は?
脳卒中は脳血管疾患の一種で、血栓症の代表的な病気です。血管の中にできた血栓が脳の血管をふさぐことで起こり、まひ・言葉の障害・体を動かしにくくなる障害などの後遺症が残ることがあります。
Q4. 遺伝子検査で血栓のリスクは分かりますか?
DNA領域rs114209171の遺伝子型を調べることで、血栓のなりやすさの傾向を知ることができます。日本人ではTT型76.5%、TC型21.8%、CC型1.5%の割合で、TC型・CC型は血栓のリスクが高い傾向があります。
Q5. 血栓を予防する方法は?
血栓予防には適度な運動、バランスの良い食事(特に脂肪をひかえる)、適正な体重を保つことが効果的です。遺伝子検査で自分のリスクを知り、生活習慣を見直すことで、血栓症の予防につなげられます。
参考文献
- 参考リンク1 : 2013 Jun., Evangelos Evangelou, Nat Rev Genet.
- 参考リンク2 : 2016 Jul., Seung Hee Lee, EMBO Mol Med.
- 参考リンク3 : DNA領域「rs114209171」の情報(アメリカ国立衛生研究所)
- 参考リンク4 : 2019 Sep., Qi Ma, Cardiovasc Res.
- 参考リンク5 : 2015 Apr., Marine Germain, Am J Hum Genet.
- 参考リンク6 : 2016 May., David A Hinds, Hum Mol Genet
- 参考リンク7 : 2020 Sep., Dragana Vuckovic, Cell
- 参考リンク8 : 2016 Nov., William J Astle, Cell
- 参考リンク9 : 2020 Sep., Ming-Huei Chen, Cell