seeDNAロゴアイコン 1型糖尿病

概要

1. 概要

「1型糖尿病」は、生活習慣病である「2型糖尿病」とは全く異なる性質を持つ糖尿病です。通常、自己免疫反応によって身体の一部が攻撃されることはありませんが、何らかの原因により免疫細胞が自分自身の臓器を攻撃することがあります。
その結果、膵臓のβ細胞が自己免疫性に破壊され、インスリンという血糖値を下げるホルモンが出なくなることで「1型糖尿病」が発症します。
厚生労働省研究班の疫学調査によると、「1型糖尿病」の患者数は約10~14万人で、1年間で10万人当たり約2.3人が発症すると推計されます。
発症するのは若年者がほとんどであり、特に女性に多い病気であることが報告されています。(参考リンク1)
遺伝的な要因は通常は関係ありませんが、最近の研究によると、遺伝子「GAB3」付近のある部位が「1型糖尿病」の発症リスクに影響を与えている可能性が高いことが明らかになりました。
若年者は定期的な健康診断などの検査を受ける機会が少ないため、発見が遅れると合併症を引き起こす可能性があります。
遺伝子検査によりご自身の遺伝子タイプを調べて「1型糖尿病」の発症リスクを知ることは、発症の予防や早期対策に役立つかもしれません。

2. 理論的根拠

イギリスの少年糖尿病研究財団による研究により、遺伝子「GAB3」近傍のDNA領域が、「1型糖尿病」を発症するリスクを高めることが明らかになりました。このDNA領域は「rs2664170」と呼ばれ、3つの遺伝子型、「AA型」「AG型」「GG型」が存在します。(参考リンク2)
Risk AlleleであるGを持つ「GG型」は1型糖尿病を発症しやすく、「AG」型はやや発症しやすい傾向があります。
日本人の遺伝子タイプは、「AA型」が最も多く65.5%を占め、AG型が30.9%、GG型が最も少ない3.6%です。(参考リンク3)
しかし、「GG型」や「AG型」の人が必ずしも1型糖尿病になるわけではなく、環境要因が重なり合うことで発病する可能性が高くなります。
1型糖尿病の症状は突然起こることが多く、口の渇きや多飲多尿、体重減少などを引き起こします。症状が進行すると、インスリンが出なくなり、高血糖による「昏睡」や「ケトアシドーシス」という危険な状態を引き起こすことがあります。
特に小児では、症状を上手く伝えることができず、おねしょ(夜尿)で気づかれるケースもあるため、早期発見には両親の協力が欠かせません。
1型糖尿病の発症リスクを早期に把握することで、生活や環境面でのリスク管理が可能となります。

3. 作用機序

「1型糖尿病」の発症に関わる遺伝子「GAB3」は、ヒトに共通する24の染色体のうち、X染色体に位置します。
遺伝子「GAB3」は、脾臓や骨髄といった組織に多く存在し、「マクロファージ」という免疫細胞の成長に欠かせない遺伝情報をもちます。(参考リンク4)
遺伝子「GAB3」が、「1型糖尿病」に直接関連する発症機序は解明されていませんが、DNA領域「rs2664170」の遺伝子型によって、遺伝子「GAB3」が過剰に発現することにより、白血球から「マクロファージ」への成長を過剰に促進させてしまうことが考えられます。
増殖した「マクロファージ」は免疫作用が活性化し、炎症を引き起こしたり、分泌した情報伝達物質がリンパ球を活性化したりすることにより、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞を破壊すると考えられます。
実際に「1型糖尿病」では、「マクロファージ」などの免疫細胞が、「膵臓のランゲルハンス島」の局所に浸潤して炎症を引き起こし、インスリンを分泌するβ細胞が機能障害に陥っているとされていることから、上記のようなメカニズムで、自己免疫性の「1型糖尿病」を発症するのではないかと推測することができます。(参考リンク5)
以上のように、DNA領域「rs2664170」は「1型糖尿病」の発症に深く関係し、注目を浴びている一塩基多型のひとつです。

遺伝子領域rs2664170において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

4.16% 32.47% 63.37%
  • GG4.16%
  • GA32.47%
  • AA63.37%

遺伝子領域rs2664170において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

10.60% 43.92% 45.48%
  • GG10.60%
  • GA43.92%
  • AA45.48%

遺伝子領域rs6518350において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

85.21% 14.20% 0.59%
  • AA85.21%
  • AG14.20%
  • GG0.59%

遺伝子領域rs6518350において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

62.73% 32.94% 4.32%
  • AA62.73%
  • AG32.94%
  • GG4.32%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:1型糖尿病

体表的なDNA領域:1型糖尿病

1型糖尿病 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs2664170です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • GG

    4.2
    %
  • GA

    32.5
    %
  • AA

    63.4
    %

他に、1型糖尿病に関わる遺伝子領域はrs6518350があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです

  • AA

    85.2
    %
  • AG

    14.2
    %
  • GG

    0.6
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 GAB3
関連遺伝子 GATD3

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 GAB3
  • 参考リンク : 2009 Jun、Jeffrey C Barrettと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide association study and meta-analysis find that over 40 loci affect risk of type 1 diabetesという研究によると1型糖尿病 に関連するrs2664170の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 GATD3
  • 参考リンク : 2015 Apr、Suna Onengut-Gumuscuと研究グループがNat Genet に発表したFine mapping of type 1 diabetes susceptibility loci and evidence for colocalization of causal variants with lymphoid gene enhancersという研究によると1型糖尿病 に関連するrs6518350の関連性が認められました。