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うつ病

うつ病のイメージ画像
  • うつ病は気分の落ち込み・やる気の低下が長く続く心の病気で、世界で約2億8,000万人がかかっています。
  • RORA遺伝子のDNA領域rs12912233のTT型を持つ人は気分が落ち込みやすい傾向があることが研究でわかっています。
  • 適切なストレスへの対処・運動・睡眠の改善・認知行動療法により、なりやすさを下げたり症状をやわらげたりできます。

概要

【概要・特徴】 人は仕事、生活、恋愛、人間関係など、いろいろな悩みを抱えることがあります。前向きになりたいと思っても深く悩んでしまい、悪い気分がなかなか抜けないこともあります。 また、状況に関係なく、罪悪感、悲しみ、絶望感、孤独感などを感じやすい性格の人もいます。性格は、生まれつきの遺伝子による気質と、育った環境や経験によってつくられます。 遺伝子と性格の関係については、アメリカ国立老化研究所の研究で、遺伝子「RORA」の特定のタイプが、気分の落ち込みやすさに大きく影響することが報告されています。 遺伝子検査で自分の遺伝子タイプを調べると、生まれつき気分が落ち込みやすい傾向があるかどうかを確認できます。

【2. 理論的根拠】 アメリカ国立老化研究所の研究で、RORA遺伝子の特定のタイプが、気分が落ち込みやすいことやうつ病と関係していることがわかりました。 「rs12912233」と呼ばれるRORA遺伝子の特定の場所は、気分の落ち込みやうつ病に関係しており、「TT型」、「TC型」、「CC型」の3種類の遺伝子型があります。 「TT型」の人は気分が落ち込みやすく、「TC型」の人はやや気分が落ち込みやすい傾向があります。 日本人の遺伝子タイプは、「CC型」が最も多く60.0%、「TC型」が33.3%、「TT型」が最も少なく6.7%です。「TT型」と「TC型」の人は気分が落ち込みやすいため、やる気が下がったり、眠りの質が悪くなったりしやすくなります。 そのせいで仕事や勉強に影響が出ることもあります。落ち込んだときの対処法は人によって違うので、自分に合った方法を見つけることが大切です。 例えば、部屋の模様替えや掃除、体を動かすスポーツ、映画や読書などの気分転換、誰かに話を聞いてもらうなどがあります。 一方、「CC型」の人は気分が落ち込みにくく、物事を柔軟にとらえ、人生の壁やトラブルを学びや成長のチャンスと考える傾向があります。 このように、自分の気分の落ち込みやすさを科学的に知ることで、ストレスへの対処法を考えたり、大人なら自分に合った仕事や役割を、子どもなら合った学習の場所や方法を考えたりするのに役立つ可能性があります。

【3. 作用機序】 RORA遺伝子は気分の落ち込みに関わる遺伝子で、ヒトの24種類の染色体のうち15番染色体にあります。マウスの実験で、Rora遺伝子は脳のプルキンエ細胞(小脳にある神経細胞)や視床下部に多くあることがわかりました。 プルキンエ細胞は、ストレスをやわらげるアミノ酸であるギャバ(ガンマアミノ酪酸)に関わる神経細胞で、視床下部は体のさまざまなはたらきを調節する場所です。 スウェーデンの研究では、体内時計に関わる遺伝子を調べたところ、RORA遺伝子が実際の患者さんのうつ病と関係していることがわかっています。また、RORA遺伝子は、気分の浮き沈みのリズムに関わっている可能性があります。 以上のことから、DNA領域「rs12912233」は、遺伝子検査で調べる遺伝子の個人差(一塩基多型)の中でも、気分の落ち込みやすさなどの性格に影響する注目すべきものの一つです。

【4. 参考文献】

うつ病とは何か

うつ病(単極性うつ病)は、気分の落ち込み・やる気の低下・睡眠の問題などが長く続く心の病気です。世界保健機関の2023年のデータによると、世界で約2億8,000万人がかかっています(1)。

うつ病の原因とメカニズム

うつ病には、遺伝子の影響と環境の影響の両方が関わっています。

  • 遺伝子の影響:RORA遺伝子など、気分の調節に関わる複数の遺伝子が関係しています。家族にうつ病の人がいると、なりやすさが2〜3倍に上がります。
  • 脳内物質の乱れ:セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミン(気分に関わる脳内物質)のバランスの乱れ
  • 環境の影響:ストレス、心の傷になるつらい体験、人とのつながりが少ないこと、生活習慣の乱れ
  • 体の要因:長く続く病気、ホルモンバランスの変化、薬の副作用

うつ病の主な症状

うつ病の症状は心と体の両方に現れます。2週間以上続く場合は、専門の医師に相談することがすすめられます。

  • 長く続く気分の落ち込み・悲しみ
  • 興味や喜びの喪失
  • 睡眠の問題(眠れない、または眠りすぎる)
  • 食欲の変化(減る、または増える)
  • 集中力・判断力が落ちます。
  • いつも疲れている・体がだるいです。
  • 罪悪感・自分には価値がないという気持ち

うつ病の遺伝子の影響と環境の影響の違い

比較項目 遺伝子の影響 環境の影響
原因 RORA遺伝子などのタイプの違い ストレス・つらい体験・生活習慣
影響の大きさ なりやすさの約40%に関わります。 なりやすさの約60%に関わります。
現れる時期 生まれつき持っています。 ストレスになる出来事の後に現れます。
対応方法 遺伝子検査で傾向を知ります。 生活環境の改善・心理療法
予防できるか 早めに気づいて予防につなげます。 環境を整えることで軽くできます。

RORA遺伝子のはたらき

RORA遺伝子は15番染色体に位置し、脳のプルキンエ細胞(小脳にある神経細胞)や視床下部に広くあります。

  • プルキンエ細胞:ストレスをやわらげるアミノ酸、ギャバ(ガンマアミノ酪酸)に関わる神経細胞です。
  • 視床下部:体のはたらき(体温・睡眠・食欲・感情)を調節する中心となる場所です。
  • 体内時計との関係:スウェーデンの研究で、RORA遺伝子が体内時計や気分の浮き沈みのリズムに関わっている可能性がわかっています。

うつ病の効果的な対処法

自分の遺伝子の傾向を知ったうえで、次の方法を組み合わせることが大切です。

  • 認知行動療法(考え方のくせを見直す心理療法):悪いほうに考えてしまうくせを見直す
  • 運動療法:週150分以上の有酸素運動でセロトニン(気分を安定させる脳内物質)が出やすくなります。
  • 睡眠改善:毎日同じ時間に寝て起きます。
  • 気分転換:趣味、スポーツ、映画・読書
  • 人とのつながり:信頼できる人への相談、カウンセリング
  • 環境を整える:部屋の模様替えや片づけで気分をリフレッシュします。

遺伝子とうつ病の関係

DNA領域rs12912233とうつ病のなりやすさの関係

アメリカ国立老化研究所のTerracciano らの研究(1)で、RORA遺伝子のDNA領域rs12912233がうつ病のなりやすさと関係していることがわかりました。

  • rs12912233にはCC・CT・TTの3つの遺伝子型があります。
  • TT型の人は気分が落ち込みやすく、うつ病になりやすい傾向があります。
  • CT型の人はやや気分が落ち込みやすい傾向があります。
  • CC型の人は気分が落ち込みにくく、柔軟に考える傾向があります。

日本人の遺伝子型の割合(rs12912233)

遺伝子型 日本人の割合 世界の割合 なりやすさの傾向
CC型 57.7% 32.8% 落ち込みにくいです。
CT型 36.5% 48.9% やや落ち込みやすいです。
TT型 5.7% 18.2% 落ち込みやすいです。

日本人はCC型の割合が57.7%と世界平均(32.8%)を大きく上回り、TT型は5.7%と世界平均(18.2%)より少なくなっています。

DNA領域rs12912233での日本の遺伝子タイプごとの人の割合

  • CC
    57.7%
  • CT
    36.5%
  • TT
    5.7%

DNA領域rs12912233での世界の遺伝子タイプごとの人の割合

  • CC
    32.8%
  • CT
    48.9%
  • TT
    18.2%

DNA領域rs12966052での日本の遺伝子タイプごとの人の割合

  • GG
    99.9%
  • GC
    0.1%以下
  • CC
    0.1%以下

DNA領域rs12966052での世界の遺伝子タイプごとの人の割合

  • GG
    67.4%
  • GC
    29.3%
  • CC
    3.1%

検査の理論的根拠

代表的なDNA領域:うつ病

うつ病に最も強く影響するDNA領域は、rs12912233です。 日本でのこの場所の遺伝子タイプの割合は下のとおりです。

  • CC
    57.7 %
  • CT
    36.5 %
  • TT
    5.7 %

ほかに、うつ病に関わるDNA領域としてrs12966052があります。 日本でのこの場所の遺伝子タイプの割合は下のとおりです。

  • GG
    99.9 %
  • GC
    0.1%以下
  • CC
    0.1%以下

検査の根拠

アメリカ国立老化研究所のTerracciano(テラチアーノ)らの研究で、うつ病のなりやすさがRORA遺伝子と関係していることがわかりました。rs12912233という場所にはTとCの2種類のタイプがあり、TT型の人は気分が落ち込みやすく、うつ病になりやすい傾向があります(1)。スウェーデンの研究でも、RORA遺伝子が体内時計に関わり、実際の患者さんのうつ病と関係していることが確かめられています(3)。

今回調べたDNA領域

細胞の中にあるDNAマップの図

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関連遺伝子

関連遺伝子 RORA
関連遺伝子 CCDC68

よくある質問

Q1. うつ病とは何ですか?

うつ病(単極性うつ病)は、気分の落ち込み・やる気の低下・睡眠の問題が長く続く心の病気です。世界保健機関によると、世界で約2億8,000万人がかかっており、遺伝子の影響と環境の影響の両方が関わっています(1)。

Q2. うつ病と遺伝子の関係は?

アメリカ国立老化研究所の研究で、RORA遺伝子のDNA領域rs12912233がうつ病のなりやすさと関係していることがわかりました。TT型の遺伝子型を持つ人は気分が落ち込みやすい傾向があります(1)。

Q3. うつ病の主な症状は何ですか?

主な症状は、長く続く気分の落ち込み、興味や喜びを感じられなくなること、睡眠の問題(眠れない、または眠りすぎる)、食欲の変化、集中力の低下、疲れやすさ、罪悪感です。2週間以上続く場合は、専門の医師に相談することがすすめられます。

Q4. 遺伝子検査でうつ病のなりやすさは分かりますか?

DNA領域rs12912233の遺伝子型を調べることで、気分の落ち込みやすさに関する遺伝子の傾向を知ることができます。日本人ではCC型57.7%、CT型36.5%、TT型5.7%の割合で、TT型・CT型の人はなりやすい傾向があります(1)。

Q5. うつ病の効果的な対処法は?

認知行動療法(考え方のくせを見直す心理療法)、適度な運動(週150分以上の有酸素運動)、規則正しい睡眠、人とのつながりを保つことが効果的です。遺伝子の影響でなりやすい人は、早めにストレスへの対処法を身につけることが予防につながります。

参考文献