うつ病
概要
1.概要
人々は仕事、生活、恋愛、人間関係など、様々な悩みを抱えることがあります。これらの悩みは、前向きになりたいと願っても、深く悩んでしまい、負の連鎖が続くことがあります。
また、状況に関係なく、罪悪感、悲しみ、絶望感、孤独感などの感情を抱きやすい性格の人もいます。性格は、生まれ持った遺伝的な気質性格と後天的な環境要因によって形成されます。
遺伝子と性格の関係について、アメリカ国立老化研究所の研究により、遺伝子「RORA」の特定タイプが人の気分の落ち込みやすさに大きな影響を与えることが報告されています。
遺伝子検査による自分自身の遺伝子タイプを調べることで、遺伝的に気分が落ち込みやすい傾向があるかどうかを確認してみることができます。
2. 理論的根拠
アメリカ国立老化研究所の研究により、RORA遺伝子の特定タイプは気分が落ち込みやすい人やうつ病と関連があることが明らかになりました。
「rs12912233」と呼ばれるRORA遺伝子の特定領域は、気分の落ち込みやうつ病に関係しており、「TT型」、「TC型」、「CC型」の3種類の遺伝子型があります。
「TT型」タイプの人は気分が落ち込みやすく、「TC型」タイプの人はやや気分が落ち込みやすい傾向があります。
日本人の遺伝子タイプは、「CC」タイプが最も多く60.0%、「TC型」タイプが33.3%、「TT型」タイプが最も少ない6.7%を示しています。遺伝型「TT型」と「TC型」は、気分が落ち込みやすいため意欲が低下し、睡眠の質が悪くなりやすくなります。
これによって仕事や学業に影響が出てしまう場合があります。落ち込んでしまった時の対処法は人それぞれ異なりますが、自分に合った方法を見つけることが重要です。
例えば、部屋の模様替えや掃除、身体を動かすスポーツ、映画や読書などの気分転換、誰かに話を聞いてもらうなどがあります。
一方、遺伝型「CC型」は、気分が落ち込みにくく、物事の捉え方が柔軟であり、人生の壁やトラブルを学びや成長と捉える傾向があります。
このように、自分の気分の落ち込みやすさを科学的に知ることで、ストレスなどへの対処方法を検討することや大人であれば人材配置の適材適所、子供であれば適した学習場所や方法を検討することが有益である可能性があります。
3. 作用機序
RORA遺伝子は、気分の落ち込みに関与する遺伝子であり、ヒトの24の染色体のうち、15番染色体に位置しています。マウス実験により、Rora遺伝子は、脳のプルキンエ細胞や視床下部に多く存在していることが明らかになりました。
プルキンエ細胞は、ストレスを軽減させるアミノ酸であるGABAに関与する神経細胞であり、視床下部は身体の様々な生理的機能を調節する場所です。
スウェーデンの研究によると、体内時計に関わる遺伝子を調べた研究でも、RORA遺伝子が臨床的にうつ病と関連していることがわかっています。また、RORA遺伝子は、気分の浮き沈みの周期に関与している可能性があることが示唆されています。
以上のことから遺伝子検査により、DNA領域「rs12912233」は、気分の落ち込みやすさなどの性格にも影響を与える注目すべきSNPの一つです。
4. 参考文献
遺伝子領域rs12912233において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC57.70%
- CT36.52%
- TT5.78%
遺伝子領域rs12912233において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC32.83%
- CT48.93%
- TT18.23%
遺伝子領域rs12966052において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG100.00%
- GC0.00%
- CC0.00%
遺伝子領域rs12966052において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG67.49%
- GC29.33%
- CC3.19%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:うつ病
体表的なDNA領域:うつ病
うつ病 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs12912233です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
-
CC
57.7% -
CT
36.5% -
TT
5.8%
他に、うつ病に関わる遺伝子領域はrs12966052があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
GG
100.0% -
GC
0.0% -
CC
0.0%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | RORA |
|---|---|
| 関連遺伝子 | CCDC68 |
参考文献
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関連遺伝子 RORA
- 参考リンク : 2010 Nov、Antonio Terraccianoと研究グループがBiol Psychiatry に発表したGenome-wide association scan of trait depressionという研究によるとうつ病 に関連するrs12912233の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 CCDC68
- 参考リンク : 2019 Mar、David M Howardと研究グループがNat Neurosci に発表したGenome-wide meta-analysis of depression identifies 102 independent variants and highlights the importance of the prefrontal brain regionsという研究によるとうつ病 に関連するrs12966052の関連性が認められました。