下肢静脈瘤
- 下肢静脈瘤は静脈の弁がうまく働かなくなり、脚の静脈が太く広がって曲がりくねる病気で、大人の約30%に起こります。
- DNA領域rs35318931のGタイプを持つ人はかかりやすい傾向にあることが研究でわかっています。
- 適切な運動・弾性ストッキング・体重管理によって、かかるリスクを減らし、悪化を防ぐことができます。
概要
【疾患の概要】 静脈瘤(じょうみゃくりゅう)は、脚などの皮膚の下で、静脈がねじれてふくらみ、太く広がった状態のことです。 特に立ったり歩いたりすると、脚の静脈にかかる圧力が強くなり、静脈がふくらむことがあります。
【症状と特徴】 色は濃い青から紫まであり、見た目でわかりやすいのが特徴です。 静脈には、血液を心臓へ戻すために逆流を防ぐ「弁」があり、この弁が弱くなると静脈瘤ができます。 血液が逆流して静脈の中にたまり、静脈が広がってこぶのようになるのです。 脚が重く感じたり、痛みや疲れを感じたりすることがあります。 また、まわりの皮膚にかゆみや痛みが出ることもあります。 静脈瘤は血液の流れに問題があるサインのこともあり、ときには潰瘍(皮膚がえぐれて治りにくい傷)や血栓(血のかたまり)など、重い健康問題につながることもあります。
【治療と注意点】 見た目が気になるという理由で治療を受ける人もいます。 治療法は、生活習慣の見直しや特別なストッキングをはくことから、レーザー治療や手術などの医療処置まで、さまざまです。
【遺伝的リスク】 大阪大学のSakaueらの研究により、下肢静脈瘤(脚にできる静脈瘤)のかかりやすさが、rs35318931というDNA領域と関係していることがわかりました。 このDNA領域にはGG、GA、AAの3つの遺伝子型があり、Gを持つ遺伝子型の人は、下肢静脈瘤のリスクが高い傾向にあることがわかりました。
下肢静脈瘤とは何か
下肢静脈瘤とは、脚の静脈にある弁がうまく働かなくなり、血液が逆流してたまることで、静脈が太く広がり、曲がりくねる病気です。大人の約30%に起こり、男性より女性に2〜3倍多く見られます(1)。
下肢静脈瘤の原因としくみ
静脈には血液の逆流を防ぐ弁がありますが、この弁が弱くなると血液が下へ逆流し、静脈の中にたまります。その結果、静脈が広がってこぶのようになります。
- 静脈の弁がうまく働かない:弁がうまく働かなくなって血液が逆流し、静脈の中の圧力が高まります。
- 静脈の壁が弱くなる:コラーゲンやエラスチン(血管の壁を丈夫でしなやかにする成分)が弱まり、静脈の壁がもろくなります。
おもなリスク要因は次のとおりです。
- 年をとること(50歳以上でかかる人が増える)
- 肥満(体格指数〔体重と身長から計算する肥満の目安〕が30以上でリスクが約1.7倍)
- 妊娠(ホルモンの変化や、大きくなった子宮が静脈を押すため)
- 長時間立ったり座ったりすること(1日6時間以上の立ち仕事)
- 生まれつきの体質(家族に下肢静脈瘤の人がいるとリスクが約2倍)
下肢静脈瘤の主な症状
症状はゆっくり進行するため、はじめのうちは見た目の変化だけのこともあります。
- 脚の血管が青紫色に浮き出て、曲がりくねります。
- 脚の重だるさ・疲れ(特に夕方にひどくなる)
- むくみ・こむら返り(足がつる)
- 皮膚のかゆみ・色素沈着
- 悪化すると皮膚潰瘍・血栓性静脈炎
下肢静脈瘤の種類と特徴の違い
| 種類 | 特徴 | 治療の目安 |
|---|---|---|
| 伏在型静脈瘤(太い静脈の静脈瘤) | 太い静脈が曲がりくねって広がり、ボコボコと目立ちます。 | 手術・レーザー治療がすすめられます。 |
| 側枝型静脈瘤 | 太い静脈から枝分かれした血管が広がり、やや太い血管が浮き出ます。 | 硬化療法・レーザー治療 |
| 網目状静脈瘤 | 直径2〜3mmの青い血管が網目のように透けて見えます。 | 硬化療法 |
| クモの巣状静脈瘤 | 直径1mm以下の細い血管が放射状(クモの巣のよう)に広がります。 | 見た目を整える目的で硬化療法 |
下肢静脈瘤を放置するとどうなるか
きちんと治療しないと、次のような合併症が起こる可能性があります。
- うっ滞性皮膚炎(静脈の血の流れが悪いことで起こる皮膚の炎症・かゆみ)
- 色素沈着(血液中の鉄分が皮膚にたまり、皮膚が茶色っぽくなる)
- 皮膚潰瘍(なかなか治らない皮膚の傷)
- 血栓性静脈炎(静脈の中に血のかたまりができて炎症が起こる)
- 深部静脈血栓症(脚の深い静脈に血のかたまりができる病気)(肺の血管がつまる肺塞栓症につながるおそれがある)
下肢静脈瘤の治療法と予防
治療法は症状の重さに合わせて選ばれます。
- 保存的治療(手術をしない治療):弾性ストッキングをはく、運動する、脚を高く上げて休みます。
- 硬化療法(薬で静脈をふさぐ治療):薬を注射して、静脈をふさぎます。
- 血管内レーザー治療:レーザーの熱で静脈の内側を焼いてふさぎます。
- ストリッピング手術:広がった静脈を抜き取る手術です。
予防のためには、定期的な運動(ウォーキング・水泳)、長時間立ちっぱなし・座りっぱなしを避けること、ちょうどよい体重を保つこと、弾性ストッキング(脚を適度にしめつける医療用の靴下)をはくことが有効です。
遺伝子と下肢静脈瘤の関係
DNA領域rs35318931と発症リスクの関係
大阪大学のSakaueらの研究(1)により、DNA領域rs35318931が下肢静脈瘤のかかりやすさと関係していることがわかりました。
- rs35318931にはGG・GA・AAの3つの遺伝子型があります。
- Gタイプを持つ遺伝子型の人は、下肢静脈瘤のリスクが高い傾向があります。
日本人における遺伝子型分布(rs35318931)
| 遺伝子型 | 日本人の割合 | 世界の割合 |
|---|---|---|
| GG型 | 99.9% | 86.1% |
| GA型 | 0.1%以下 | 13.3% |
| AA型 | 0.1%以下 | 0.5% |
検査の理論的根拠
代表的なDNA領域:下肢静脈瘤
下肢静脈瘤に最も強く影響するDNA領域は、rs35318931です。 日本における各遺伝子型の人の割合は下記のとおりです。
- GG
99.9 % - GA
0.1%以下 - AA
0.1%以下
検査の根拠
大阪大学のSakaueらの研究により、下肢静脈瘤のかかりやすさが遺伝子と関係していることがわかりました。人間のDNAには、rs35318931という場所があり、そこにはGとAの2種類のタイプがあります。Gタイプを持つ人は、下肢静脈瘤のリスクが高い傾向にあることがわかりました(1)。
今回調査したDNA領域
細胞の中にあるDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | SRPX |
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よくある質問
Q1. 下肢静脈瘤とは何ですか?
下肢静脈瘤とは、脚の静脈にある弁がうまく働かなくなり、血液が逆流してたまることで、静脈が太く広がり、曲がりくねる病気です。大人の約30%に起こり、男性より女性に2〜3倍多く見られます(1)。
Q2. 下肢静脈瘤の原因は何ですか?
おもな原因は静脈の弁がうまく働かないことと静脈の壁が弱くなることです。年をとること、肥満、妊娠、長時間立ったり座ったりすること、生まれつきの体質(遺伝子の影響)がおもなリスク要因です。DNA領域rs35318931でGタイプを持つ人はリスクが高い傾向にあります(1)。
Q3. 下肢静脈瘤の治療法にはどのようなものがありますか?
治療法は保存的治療(手術をしない治療:弾性ストッキングをはく、運動する)から、硬化療法、レーザー治療、ストリッピング手術まで、さまざまです。軽い場合は、生活習慣を見直すことで症状をやわらげることができます。
Q4. 遺伝子検査で下肢静脈瘤のリスクは分かりますか?
DNA領域rs35318931の遺伝子型を調べることで、下肢静脈瘤へのかかりやすさの傾向を知ることができます。Gタイプを持つ遺伝子型の人はリスクが高い傾向にあることが研究でわかっています(1)。
Q5. 下肢静脈瘤は放置するとどうなりますか?
放置すると皮膚炎、色素沈着、皮膚潰瘍、血栓性静脈炎などの合併症を引き起こす可能性があります。特に深部静脈血栓症(脚の深いところの静脈に血のかたまりができる病気)は、肺の血管がつまる肺塞栓症につながるおそれがあるため、早めに医療機関で治療を受けることがすすめられます。