seeDNAロゴアイコン 静脈血栓塞栓症

概要

1. 概要

血栓は、脱水や圧迫などにより血液の流れが悪くなってできる血のかたまりのことです。
「静脈血栓塞栓症」とは、血栓が足の深くにある静脈にできる病気の深部静脈血栓症と、血流に乗り肺の動脈で詰まる病気の肺塞栓症を総称したものです。
一般的には「エコノミークラス症候群」とも呼ばれ、長時間同じ姿勢でいることが原因とされ、肺塞栓症を発症すると呼吸困難や失神など危険な病気となります。

「静脈血栓塞栓症」の発症率は、1,000人あたり1.84人と多くはないですが、加齢に伴い発症しやすくなる傾向があることがわかっています。(参考リンク1)
「静脈血栓塞栓症」は、環境要因と遺伝的要因が組み合わさって発症するもので、複数の遺伝子が関連遺伝子として報告されています。
最近の研究報告では、遺伝子「BRCC3」付近のある部位が「静脈血栓塞栓症」の発症リスクに影響を与えている可能性があります。
肺塞栓症が発症すると、血栓の大きさによっては短期間で亡くなることがあるため、日頃からの予防や早期発見が重要です。

遺伝子検査により自分自身の遺伝子タイプを調べて、「静脈血栓塞栓症」の発症リスクを知ることは、発症の予防や早期対策に役立つ可能性が期待されます。

2. 理論的根拠

アメリカのVAボストン・ヘルスケア・システムで実施された研究により、遺伝子「BRCC3」周辺の特定のタイプによって、「静脈血栓塞栓症」を発症するリスクが高まることが判明しました。そのうちの1つが「rs7051718」と呼ばれるDNA領域です。
DNA領域「rs7051718」には、「TT型」、「CT型」、「CC型」という3つの遺伝子型が存在します。日本人の遺伝子型は、「TT型」が64.5%、次いで「CT型」が31.6%、そして「CC型」が3.9%となっています。(参考リンク2)
また「TT型」は静脈血栓塞栓症を発症しやすい傾向にあり、「TC型」は静脈血栓塞栓症をやや発症しやすい傾向にあることが分かりました。ただし、「TT型」と「CT型」の人が必ずしも「静脈血栓塞栓症」を発症するわけではありません。
しかし、驚くことに日本人はDNA領域「rs7051718」において「TT型」を持つ割合が約65%であり、このことから「静脈血栓塞栓症」を発症しやすい傾向がある人種と言えます。さらに、食生活などの環境要因が重なり合うことで、発病する可能性が高くなるため注意が必要です。

例えば、脂肪分の多い肉や揚げ物、糖質の多いデザートや清涼飲料水の過剰摂取は、血液がドロドロになり血栓ができやすくなります。
このような食事を避け、普段から血栓を予防するために、EPAやDHAを含む青魚やナットウキナーゼを含む納豆などを摂取することが大切です。
また、飛行機や車に長時間乗る場合には、定期的に体を動かすことや、水分をこまめに補給するなどの心がけも必要です。これらの方法を用いて、発症リスクを減らすことができます。
遺伝子検査により早い段階で「静脈血栓塞栓症」のリスクを把握することで、生活や環境面でのリスク管理が可能になります。

3. 作用機序

「静脈血栓塞栓症」の発症に関わる遺伝子「BRCC3」は、ヒトに共通する24の染色体のうち、X染色体に位置しています。
この遺伝子は、障害やストレスなどの危険信号に反応して、炎症を引き起こすインフラマソーム(炎症を引き起こすタンパク質複合体)の活性化を調節するための遺伝情報を持っています。(参考リンク3)
ただし、遺伝子「BRCC3」が、「静脈血栓塞栓症」に関与する直接的なメカニズムは解明されていません。

しかし、長時間にわたる下肢の圧迫ストレスや、脱水などの条件が加わることにより、血栓ができやすくなり、炎症を引き起こすインフラマソームが活性化しやすくなることが考えられます。
つまり、遺伝子「BRCC3」の近くに存在するDNA領域「rs7051718」の遺伝子型で特に「TT型」を持つ人は、下肢のストレス負荷に対して、インフラマソームの活性化が制御しづらく、さらに血管内での炎症傾向が強くなり、「深部静脈血栓症」や連続的に起こる肺塞栓症が悪化すると推測されます。

以上のように、DNA領域「rs7051718」は「静脈血栓塞栓症」の発症に深く関係し、注目を浴びている一塩基多型のひとつであることがわかります。

遺伝子領域rs7051718において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

72.03% 25.68% 2.29%
  • TT72.03%
  • TC25.68%
  • CC2.29%

遺伝子領域rs7051718において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

59.52% 35.26% 5.22%
  • TT59.52%
  • TC35.26%
  • CC5.22%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:静脈血栓塞栓症

体表的なDNA領域:静脈血栓塞栓症

静脈血栓塞栓症 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs7051718です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • TT

    72.0
    %
  • TC

    25.7
    %
  • CC

    2.3
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 MTCP1

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 MTCP1
  • 参考リンク : 2019 Nov、Derek Klarinと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide association analysis of venous thromboembolism identifies new risk loci and genetic overlap with arterial vascular diseaseという研究によると静脈血栓塞栓症 に関連するrs7051718の関連性が認められました。