seeDNAロゴアイコン 心室性不整脈

概要

概要

心臓は、自分で電気信号を作り、それを心臓全体にうまく伝えるシステムがあるため、脳の指示がなくても動くことができます。
心臓の電気信号は、洞結節という場所で作られ、心筋を収縮させます。心臓の鼓動は、心筋の収縮と弛緩の繰り返しによって起こります。心電図は、心臓の電気的な活動を波形として見ることで、心拍を確認することができます。
心臓の収縮開始から終了までを「QT時間」と言います。この「QT時間」が不整脈と大きく関わっています。 現在では、「QT時間」に関わる遺伝子が複数発見されており、その中の一つである「KCNE1」の特定DNA領域「rs1805128」について説明します。

理論的根拠

「QT時間」と遺伝子の関連については、複数の研究で報告されており、その中の一つが「rs1805128」というDNA領域です。この領域は、「KCNE1」というタンパク質の遺伝子内に位置しており、こちらの遺伝子タイプが「QT時間」と関連していることが知られています。 (参考リンク1)
「rs1805128」には、3つの遺伝子型があり、「CC型」、「CT型」、「TT型」と呼ばれます。日本人の遺伝子型の分布は、「CC型」が約97.81%、「CT型」が約2.18%、「TT型」が約0.01%であることが分かっています。(参考リンク2)
世界全体の遺伝子型の分布も、日本と似た傾向を示しており、「CC型」が最も多く約98.41%、「CT型」が約1.591.53%、「TT型」が最も少なく約0.06%です。
「rs1805128」の「T型」が「QT時間」の延長に関与することが報告されており、このため、「TT型」と「CT型」の人は、「QT時間」が延長する傾向があることが示されています。(参考リンク3)
遺伝子検査でご自身の遺伝子タイプを調べることで、早期対策のきっかけ作りに役立つかもしれません。

作用機序

DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基がたくさん繋がってできています。これらの塩基の並び方(塩基配列)は、タンパク質の作成に必要な設計図となります。
タンパク質は、多数のアミノ酸が繋がってできており、タンパク質の設計図である塩基配列は、アミノ酸の並び方(アミノ酸配列)を指定しています。
遺伝子「KCNE1」中のDNA領域「rs1805128」において、塩基が「C」から「T」に変化すると、アスパラギン酸(D)からアスパラギン(N)に変化する1つのアミノ酸が存在します(D85N、Asp85Asn)。この変異がタンパク質全体の構造や活性を変化させ、遺伝子「KCNE1」の働きに影響を与えることが明らかになっています。(参考リンク3)
心筋細胞の細胞膜には、イオンが出入りする穴(チャネル)があります。心筋収縮後に、Kチャネルが開き、心筋細胞内のKイオンが外に出されることで、心筋が弛緩します。
遺伝子「KCNE1」は、このKチャネルの傍に存在しており、Kチャネル開閉のタイミングを調節することで、適切なタイミングで心筋を弛緩させ、心臓を広げることができます。(参考リンク4)
DNA領域「rs1805128」のタイプは、「KCNE1」の働きを介して心臓の拍動に影響を与え、それが心電図の「QT時間」に反映されると考えられています。

遺伝子領域rs1805128において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合

99.04% 0.96% 0.00%
  • CC99.04%
  • CT0.96%
  • TT0.00%

遺伝子領域rs1805128において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合

97.69% 2.30% 0.01%
  • CC97.69%
  • CT2.30%
  • TT0.01%

seeDNAロゴアイコン検査の理論的根拠

体表的なDNA領域:心室性不整脈

体表的なDNA領域:心室性不整脈

心室性不整脈 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs1805128です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。

  • CC

    99.0
    %
  • CT

    1.0
    %
  • TT

    0.0
    %

検査の根拠

seeDNAロゴアイコン今回調査したDNA領域

細胞中に存在するDNAマップの模式図

seeDNAロゴアイコン関連遺伝子

関連遺伝子 KCNE1

seeDNAロゴアイコン参考文献

  • 関連遺伝子 KCNE1
  • 参考リンク : 2014 Aug、Dan E Arkingと研究グループがNat Genet に発表したGenetic association study of QT interval highlights role for calcium signaling pathways in myocardial repolarizationという研究によると心室性不整脈 に関連するrs1805128の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 KCNE1
  • 参考リンク : 2022 May、Victor Nauffalと研究グループがCirculation に発表したMonogenic and Polygenic Contributions to QTc Prolongation in the Populationという研究によると心室性不整脈 に関連するrs1805128の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 KCNE1
  • 参考リンク : 2021 Nov、Stefan van Duijvenbodenと研究グループがHum Mol Genet に発表したGenomic and pleiotropic analyses of resting QT interval identifies novel loci and overlap with atrial electrical disordersという研究によると心室性不整脈 に関連するrs1805128の関連性が認められました。
  • 関連遺伝子 KCNE1
  • 参考リンク : 2022 Sep、William J Youngと研究グループがNat Commun に発表したGenetic analyses of the electrocardiographic QT interval and its components identify additional loci and pathwaysという研究によると心室性不整脈 に関連するrs1805128の関連性が認められました。