白斑
概要
1. 概要
「尋常性白斑」とは、皮膚の一部が白くなる病気であり、肌の色素を作る細胞に問題があることにより発症する皮膚病です。
この病気は「白なまず」とも呼ばれており、マイケル・ジャクソンもこの病気にかかり、肌の色をファンデーションで均一にするのが大変だったとされています。また、マイケル・ジャクソンの父や姉も「尋常性白斑」の患者であることから、家族内での発症率が20〜30%と考えられています。
「尋常性白斑」は、日焼けやケガ、火傷などの皮膚への刺激、ストレスなどの環境要因と遺伝的要因が組み合わさることで発症しやすくなります。
厚生労働省によると、全人口の0.5%〜1%の人が発症していると考えられ、患者数は15万3千人と推定されています。(参考リンク 1)
「尋常性白斑」は人に感染するわけではなく、生命を直接脅かす病気ではありませんが、全身のあらゆる部位に生じる可能性があり、放置していると次々と白斑が生じて広がっていくことがあります。
特に、顔など人から見える部分に現れると、社会生活に心理的ダメージを負うこともあります。
「尋常性白斑」は治療が早ければ早いほど、発症年齢が若いほど治療に対して良い効果が期待できます。
このことから、遺伝子検査により、自分の遺伝子タイプを調べて「尋常性白斑」の発症リスクを知ることは、発症の予防や早期対策に役立つ可能性が期待されます。
2. 理論的根拠
アメリカのコロラド大学医学部で行われた遺伝学研究により、遺伝子「FOXP3」の周辺にあるDNA領域「rs5952553」という部位が特定され、この部位によって「尋常性白斑」を発症しやすい人がいることが分かりました。(参考リンク 2)
DNA領域「rs5952553」には、「TT型」、「CT型」、「CC型」という3つの遺伝子型があります。
Risk Alleleである「T」を持つ、「TT型」の人は尋常性白斑を発症しやすい傾向にあり、「CT型」の人はやや発症しやすい傾向があります
。日本人の遺伝子タイプには、「CT型」が48.2%で最も多く、「CC型」が35.3%、「TT型」が16.5%で最も少ないことが分かっています。(参考リンク 3)
日本人の約6割以上の人が、「TT型」と「CT型」の遺伝型を持っているため、「尋常性白斑」を発症する可能性がありますが、必ずしも発症するわけではありません
。環境要因が重なり合うことでリスクが高まるため、「CC型」の人も含めて、環境要因に留意する必要があります。
環境要因には、皮膚を刺激すること、ストレスなどが関係していると考えられています。そのため、日焼け止めを塗るなどの紫外線対策、皮膚の生成に必要な栄養を摂取すること、ストレスを溜めないようにするなどの自己管理が必要です。
遺伝子検査によって自分の「尋常性白斑」の発症リスクを把握することで、生活・環境面でのリスク管理が可能になります。
3. 作用機序
「尋常性白斑」の発症に関わる遺伝子「FOXP3」は、ヒトに共通する24の染色体のうち、X染色体に位置しています。
この遺伝子は、T細胞に発現し、リンパ節や脾臓、虫垂などの免疫を司る組織に多く存在しています。(参考リンク 4)
また、「FOXP3」は、自己免疫疾患を防止するために過剰な免疫応答を抑えることができる制御性T細胞の発達に重要な役割を担っています。(参考リンク 5)
遺伝子「FOXP3」が「尋常性白斑」に関与する直接的なメカニズムは解明されていませんが、「TT型」「CT型」の遺伝子型を持つ場合、免疫細胞が制御されずに働き続けるため、色素を産生する細胞に対して免疫細胞が制御されなくなり、メラニン色素の生成が阻害されます。
その結果、肌の色が白く抜けて白斑を呈すると考えられます。
以上のことから、DNA領域「rs5952553」は、「尋常性白斑」の発症に関係し、注目を浴びている一塩基多型(SNV)のひとつとされています。
遺伝子領域rs5952553において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC35.84%
- CT48.05%
- TT16.11%
遺伝子領域rs5952553において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- CC24.81%
- CT50.00%
- TT25.19%
遺伝子領域rs2476601において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA0.00%
- AG0.00%
- GG100.00%
遺伝子領域rs2476601において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- AA0.72%
- AG15.56%
- GG83.71%
遺伝子領域rs73456411において日本で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG100.00%
- GT0.00%
- TT0.00%
遺伝子領域rs73456411において世界で各遺伝タイプを持つ人の割合
- GG90.81%
- GT8.97%
- TT0.22%
検査の理論的根拠
体表的なDNA領域:白斑
体表的なDNA領域:白斑
白斑 に最も強く影響する遺伝子領域は、rs5952553です。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです。
-
CC
35.8% -
CT
48.1% -
TT
16.1%
他に、白斑に関わる遺伝子領域はrs2476601があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
AA
0.0% -
AG
0.0% -
GG
100.0%
他に、白斑に関わる遺伝子領域はrs73456411があります。 日本における同型の遺伝子タイプの分布は下記のとおりです
-
GG
100.0% -
GT
0.0% -
TT
0.0%
検査の根拠
今回調査したDNA領域
細胞中に存在するDNAマップの模式図
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関連遺伝子
| 関連遺伝子 | GAGE1 |
|---|---|
| 関連遺伝子 | PTPN22 |
| 関連遺伝子 | IL1RAPL1 |
参考文献
- 参考リンク1 : https://www.nanbyou.or.jp/entry/2425
-
関連遺伝子 GAGE1
- 参考リンク : 2016 Nov、Ying Jinと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide association studies of autoimmune vitiligo identify 23 new risk loci and highlight key pathways and regulatory variantsという研究によると白斑 に関連するrs5952553の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 PTPN22
- 参考リンク : 2010 May、Ying Jinと研究グループがN Engl J Med に発表したVariant of TYR and autoimmunity susceptibility loci in generalized vitiligoという研究によると白斑 に関連するrs2476601の関連性が認められました。
-
関連遺伝子 IL1RAPL1
- 参考リンク : 2016 Nov、Ying Jinと研究グループがNat Genet に発表したGenome-wide association studies of autoimmune vitiligo identify 23 new risk loci and highlight key pathways and regulatory variantsという研究によると白斑 に関連するrs73456411の関連性が認められました。