一卵性双子でもDNA鑑定で見分けられる?最新研究と解析技術を徹底解説【2025年版】
2018.05.26
最終更新日:2025.11.04
【専門家が解説】一卵性双子でもDNA鑑定で見分けられる?最新研究で分かってきたこと
DNA鑑定というと、「遺伝子が同じなら区別できない」と思われがちです。
特に一卵性双子(モノジゴティックツイン)は、ひとつの受精卵が分裂してできるため、同じDNAを持つとされています。
しかし近年、「同じDNAでも、わずかな違いを見つけて識別できる」という研究が進み、法医学や遺伝学の分野で注目を集めています。本記事では、その最新の知見をわかりやすく紹介します。
一卵性双子のDNAは本当に「同じ」なのか?
一般的なDNA鑑定で使用されるのは、STR(Short Tandem Repeat)と呼ばれる遺伝子領域です。これは個人識別や親子鑑定に広く用いられる手法で、数十カ所のマーカーを比較することで判定します。
しかし一卵性双子では、これらのSTR配列が完全に一致するため、通常のDNA鑑定では区別不可能です。
Illumina社も「モノジゴティック双子は標準的なSTR解析では区別できない」と解説しています。
Illumina社の記事を読む
超高精度ゲノム解析で浮かび上がる“わずかな違い”
最新の全ゲノム解析(Whole Genome Sequencing: WGS)では、受精卵分裂後に生じた新生突然変異(post-zygotic mutation)を検出することが可能になりました。
一卵性双子でも、発生初期にDNAがわずかに変化することがあり、その違いを高精度に読み取れば双子を見分けることができるのです。
実際、2014年には超深度シーケンシングを用いて双子を識別した研究が発表されました。
ScienceDirect論文を見る
さらに、Nature誌に掲載された2024年の研究では、一卵性双子17組の全ゲノムを解析し、片方にしか存在しない希少変異を特定したと報告されています。
Nature掲載の研究PDF
このような技術は犯罪捜査や科学研究では活用され始めていますが、コストは数十万円から数百万円に上るため、一般的な鑑定にはまだ普及していません。
企業では、Eurofins社がこの手法を利用した法科学的鑑定サービスを紹介しています。
Eurofinsの紹介記事
DNAは同じでも“使い方”が違う:エピジェネティクスの可能性
遺伝子の配列は同じでも、DNAの働き方(発現パターン)は個人ごとに異なります。
これを「エピジェネティクス」と呼び、DNAメチル化やヒストン修飾といった化学的修飾がその鍵を握ります。
一卵性双子でも、環境や生活習慣の影響でエピジェネティックな差が生じることが確認されています。
たとえば、「The Power of Two: Epigenetics and Twins」では、生まれた時点からメチル化パターンに差異があることを報告しています。
Cambridge University Press論文
また、Nature誌の「Identical twins carry a persistent epigenetic signature」では、同一双子であっても遺伝子発現制御に違いがあることが示されました。
Nature Communications論文PDF
このような研究は、双子識別だけでなく、発達・疾患リスクや環境要因の影響を理解する上でも重要です。
ミトコンドリアDNAや構造変異の解析も進展中
核DNA以外にも、ミトコンドリアDNA(mtDNA)やコピー数変異(CNV)などの解析を組み合わせて、一卵性双子を識別するアプローチも提案されています。
「Cracking the code: Can forensic genetics distinguish identical twins?」では、これら複合的手法の可能性が論じられています。
ResearchGateで全文を読む
現在の法的・実用的な課題
現時点では、日本を含む多くの国で、通常のSTR鑑定が法的DNA鑑定の標準です。そのため、双子の区別は法的証拠として認められていません。
ただし、前述のような全ゲノム解析を用いた特殊鑑定は、犯罪捜査や学術研究の分野では実用化が進みつつあります。
今後は、コスト低減と技術の標準化が進めば、双子識別も一般鑑定に取り入れられる可能性があります。
まとめ:DNAは「同じ」でも、完全に同じではない
| 項目 | 通常のDNA鑑定(STR) | 高精度ゲノム解析/エピジェネティクス |
|---|---|---|
| 区別可能性 | × 不可 | ○ 可能性あり |
| 原理 | STRマーカー比較 | 希少変異検出・メチル化解析 |
| 費用 | 数万円 | 数十〜数百万円 |
| 法的利用 | 確立済み | 研究段階・限定的利用 |
一卵性双子は「遺伝的に同じ人」とされてきましたが、実際には、”わずかな違い”が存在することが明らかになりつつあります。
科学の進歩によって、今後はDNA鑑定が「同じか違うか」だけでなく、「どの程度違うのか」まで評価できる時代が訪れるでしょう。
seeDNA遺伝医療研究所の安心サポート
seeDNA遺伝医療研究所は、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
親子や親戚との血縁関係、パートナーの浮気などにお悩みでしたら、DNA鑑定の専門家が、しっかりとご安心いただけるようサポートいたしますのでお気軽にお問合せください。
【専門スタッフによる無料相談】
著者
医学博士 富金 起範
筑波大学、生体統御・分子情報医学修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発