【専門家が解説】スマホ150万倍の容量と2万年の保存寿命のDNAカセットテープ
2025.12.25
カセットテープを使ったことがありますか?ひと昔前の技術であるカセットテープではありますが、DNAを用いた最新情報処理技術により、従来のハードディスクやSSDに変わる究極の記憶補媒体が作れます。
デジタルデータの爆発的な増加に伴い、従来のハードディスクやSSDに代わる「究極の記憶媒体」として注目されているのが、生物の設計図である「DNA」です。
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「DNAカセットテープ」の誕生
中国の南科技大学(SUSTech)の研究チームが、1980年代のカセットテープの仕組みを応用した、革新的なDNAデータストレージ技術を開発しました。この技術は、従来の電子媒体(HDD、SSD)を圧倒する記録密度と超長期的な保存期間を両立しています[1]。
スマホ150万倍の容量と2万年の保存寿命
この技術の最大の特徴は、その圧倒的な保存能力です。注目する数値データと性能指標は以下の通りです。
- 記録容量: 1kmのDNAテープで約362ペタバイト(PB)。
- 比較: 一般的なスマートフォンの約150万倍のデータ量を、手のひらサイズに集約。
- 保存寿命:室温で約300年。凍結保存(マイナス20度)した場合は2万年以上。
- 耐久性: 従来のハードディスク(寿命約10年)を遥かに凌ぐ安定性。
技術的ブレイクスルー:なぜ「テープ」なのか
これまでのDNAストレージは、液体中にデータをバラバラに保存する方式であり、特定のデータを取り出すのが困難でした。今回の研究では、カセットテープの構造を模倣することで以下の課題を解決しました[2]。
- ランダムアクセス(個別抽出): ナイロン製テープ上に微細なバーコードを配置し、アドレスを割り当てることで、必要なデータのみを特定して読み出すことが可能になりました。
- 書き換え可能性: 化学的な処理により、特定の場所のDNA情報を消去し、新しいデータを上書き(再利用)できる仕組みを導入しました。
- 物理的整理: バラバラの液体ではなく、1本のテープ状に固定することで、コンピュータによるデータ管理(ファイル構造)との親和性が高まりました。
主な活用シーンとメリット
この技術は、頻繁にアクセスしないが消失が許されない「コールドストレージ」としての利用が期待されています。
- 公文書・歴史資料のアーカイブ: 数千年にわたる文明の記録。
- 科学研究データ: 宇宙観測やゲノム解析などの膨大なログ。
- エネルギー削減: データセンターの維持に必要な電力(冷却や駆動)を劇的に削減できるため、環境負荷の低減に寄与。
実用化に向けた課題
もちろん、課題も残されています。現時点ではデータの読み書きに時間がかかり、数枚の画像ファイルを復元するのに1時間近くを要します。
そのため、日常的に使うスマホのメモリを置き換えるものではなく、公文書や科学データ、家族の写真といった「めったに見ないが、決して失いたくない貴重なデータ」を保存する「コールドストレージ」としての活用が期待されています。
現在、一般普及を妨げている主な要因は以下の2点です。
- 読み書きの速度: DNAの合成(書き込み)とシーケンシング(読み出し)には数時間を要し、現状ではリアルタイムの処理には向きません。
- コスト: DNAの化学合成には高額な費用がかかるため、商用利用にはさらなるコストダウンが必要です。
まとめ:データストレージの未来
「DNAカセットテープ」は、生物学的な情報の保存方法とアナログな磁気テープの概念を融合させた、究極のバックアップ媒体です。
シリコン(半導体)の物理的限界が近づく中、このバイオストレージ技術は人類のデジタル遺産を未来へ繋ぐ有力な手段となります。
【参考文献】
[1]Live science, 2025 Dec.[2]Science Advances, 2025 Sep.
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著者
医学博士 富金 起範
筑波大学、生体統御・分子情報医学修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発