【専門家が解説】産婦人科のエコー検査で胎児の父親が誰かを確認できる?
2025.08.12
はじめに
妊娠中に「お腹の赤ちゃんは誰に似ているかな?」と考えるのは、多くの妊婦さんやご家族にとって自然なことです。
しかし、「エコー検査で胎児の父親が誰かを確認できるのか?」と疑問を持つ方もいらっしゃいます。
この記事では安心して妊婦生活を送れるように、エコー検査で得られる情報と胎児の父親の確認に関して説明します。
エコー検査の目的や検査で分かる受精日や排卵日など妊娠周期に関する情報と、親子DNA鑑定との違いを理解することで、どのようなケースに出生前DNA鑑定が必要なのかが分かります。
産婦人科のエコー検査で胎児の父親を特定できない
結論から申し上げますと、エコー検査で胎児の父親を特定することはできません。
エコー検査は超音波を用いて胎児の様子を画像化する検査であり、胎児の形態や臓器の発達、成長の様子を観察することが主な目的です。
この検査方法では、胎児の遺伝情報(DNA)を分析することはできないため、父親が誰であるかを判定することは不可能です。
◇エコー検査で父親の特定ができない理由
エコー検査が父親の特定に利用できない理由は、以下の内容が挙げられます。※1,2
■ エコー検査は胎児の形態確認が目的である
エコー検査は、妊婦さんのお腹にプローブをあてて超音波を発信し、臓器や骨、体全体からの反射波をコンピューターで画像化する仕組みです。
この画像は胎児の体の構造や動きを確認するために使われるものであり、遺伝子情報を読み取ることはできません。
■ 遺伝情報と形態は別物である
胎児の遺伝情報はDNAの塩基配列という形で細胞の中に存在しています。父親を特定するには、DNA情報を採取して分析し、父親候補のDNAと比較する必要があります。
エコー検査の画像は、DNAの情報を反映するものではないため、父親を特定する手段にはなりません。
■ 胎児の計測結果は誤差が発生する
エコー検査では胎児の大きさを測定することで、おおよその妊娠週数を推定し、受精日や出産予定日を算出します。
妊娠初期(6〜13週頃)の頭殿長(胎児の頭からお尻までの身長)測定は最も精度が高く、通常は±4日程度の誤差で妊娠週数を推定可能です。
この週数から、最終月経日を基準に約14日差し引くことで受精日を概算しますが、排卵日や周期の個人差により、性交渉のタイミングと受精日が一致しない場合もあります。
そのため、誤差の少ない妊娠初期でも±4日程度のずれが生じることがあり、父親を特定する手段としては適していません。
◇遺伝子検査とエコー検査の違い
胎児の父親を特定するには、遺伝子検査(DNA鑑定)を行う必要があります。
検査は胎児の細胞や羊水、母親の血液などから得られたDNAサンプルと、父親候補のDNAサンプルを比較することで親子関係を判定します。
エコー検査と遺伝子検査は、目的も方法も全く異なる検査です。※3
産婦人科のエコー検査でわかること・わからないことのまとめ
エコー検査で何がわかり、何がわからないのかを理解することは、妊婦生活を安心して送る上で大切です。エコー検査は、胎児の健康状態を把握するための重要な検査であり、目的を正しく理解することで、検査への不安を軽減させましょう。
◇エコー検査でわかること
エコー検査では、主に以下のような情報を得られます。
■ 胎児の成長具合: 頭の大きさや大腿骨の長さ、体重などを測定し、週数に応じた発育状況を確認できる
■ 胎児の性別: 妊娠中期以降、性器の形成が確認できれば、おおよその性別がわかる
■ 胎児の健康状態: 心臓や脳、内臓などの形態に異常がないか、羊水の量や胎盤の位置に問題がないかなど確認できる
■ 多胎児の有無: 双子や三つ子など、複数の胎児を妊娠しているか確認できる
エコー検査でわかることは、赤ちゃんの健やかな成長を見守る上で欠かせない情報です。※4
◇エコー検査ではわからないこと
一方で、エコー検査ではわからないことも多くあります。
■ 胎児の個性: 生まれ持った性格や、将来的な才能など、遺伝的な個性を判断することはできない
■ 父親の特定: 遺伝情報を分析することはできないため、父親が誰であるか判定することは不可能である
■ 病気の確定診断: エコー検査で異常が疑われた場合でも、病気の確定診断には、さらに詳しい検査が必要となる場合がある
エコー検査はあくまでスクリーニング検査であり、胎児の健康状態を総合的に把握するための一つの手段として捉えることが大切です。
父親を特定する親子鑑定の方法と注意点
もし何らかの理由で胎児の父親が誰であるかを確認したい場合は、エコー検査ではなく、専門の検査機関でDNA鑑定を実施する必要があります。
また、親子鑑定を行う場合、結果によっては家族や周囲の人間との関係性に影響を与えるリスクも存在します。
検査を行う方法とリスクを正しく知った上で、親子鑑定を行うか慎重に判断してください。
◇親子鑑定方法の種類とリスク
胎児の親子鑑定には、主に出生前DNA鑑定と出生後DNA鑑定があります。
出生前DNA鑑定: 母親の血液から胎児のDNAを抽出して行うため、胎児へのリスクがほとんどありません。
出生後DNA鑑定: 胎児が生まれてから、口内粘膜などを採取して鑑定する方法です。安全で正確な方法ですが、出産まで待つ必要があります。
DNA鑑定の検査は、検査のタイミングによって方法が異なるため、検査前に専門家やパートナーと十分に話し合うことが大切です。
◇法律や倫理的な問題への対応
親子鑑定は、家族関係や将来に大きな影響を及ぼす可能性があり、検査を受ける前に十分な検討が必要です。具体的には、以下のような問題を招く可能性があります。
■養育費や親権をめぐる法的な問題
■家族関係や婚姻関係の破綻
■当事者の精神的負担
結果によっては法的・倫理的なトラブルにつながる可能性があるため、安易な気持ちで検査を受けることは避け、専門家に相談しながら慎重な判断が求められます。※5
まとめ
エコー検査では胎児の父親を確認することはできません。
エコー検査は胎児の健康状態や発育状況を確認するための検査であり、遺伝的情報は取得できないためです。
胎児の父親を正確に特定するには、DNA鑑定という専門的な検査が必要です。
ただし、DNA鑑定には法的および倫理的な側面が関わるため、実施にあたっては十分な検討と慎重な判断が求められます。
\妊娠中に赤ちゃんの父親がわかる/
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【参考文献】
※1:日本産婦人科医会「一般超音波検査と精密超音波検査」※2:日本産婦人科医会「分娩予定日決定が肝」
※3:seeDNA「妊娠期間中にお腹の赤ちゃんの父親がわかる」
※4:日本産婦人科医会「一般超音波検査と精密超音波検査」
※5:seeDNA「法的 妊娠中の親子DNA鑑定とは」
著者
久松綾香
助産師・看護師として10年以上の臨床経験を有し、総合病院および産婦人科クリニックにて周産期医療に従事。妊婦健診や分娩介助、産後ケアに加え、不妊治療を受ける方の支援など、幅広いライフステージに対応したケアを実践してきた。アロマセラピストの資格を活かし、妊産婦に対する補完代替療法の分野にも取り組んでいる。医療と自然療法の両面から、女性の心身に寄り添うケアを提供している。