【医師が解説】NIPTを受けた人の体験談は?
2026.01.14
NIPT(新型出生前検査)を検討していると、多くの方が気になるのが「実際に受けた人はどう感じたのか」という点ではないでしょうか。
医師からの説明や公式情報だけでは、自分の気持ちに置き換えて考えるのが難しく、体験談を探す方も少なくありません。
一方で、インターネット上の体験談には不安を強めてしまうものや、医学的背景が十分に説明されていない情報も混在しています。
本記事では、NIPTを受けた方の体験談を紹介しながら、「受ける前に何を悩み、結果をどう受け止めたのか」というリアルな声を丁寧に整理します。ご自身が納得できる選択をするための材料としてお役立てください。
NIPTを受ける前のリアルな気持ち
35歳で初めての妊娠を迎えたAさんは、妊婦健診で医師から「年齢的にNIPTという選択肢もあります」と説明を受けたことをきっかけに、検査を強く意識するようになりました。それまでは妊娠経過も順調で、「自分には関係ない検査だと思っていた」と言います。
自宅に帰ってから情報を調べるうちに、Aさんの頭を占めたのは「結果を知ることで、もう元の気持ちには戻れないのではないか」という不安でした。もし陽性だったらどうするのか、その決断を本当に受け止められるのか。答えが出ないまま、夜中に何度も検索を繰り返したと振り返ります。
夫に相談すると、「心配しすぎじゃない?」という反応が返ってきました。悪気がないと分かっていても、決断を一人で抱えているような孤独感を覚えたそうです。
それでも最終的に検査を受けると決めた理由は、「知らずに出産を迎えて後悔する自分の姿が想像できたから」でした。AさんにとってNIPTは、不安を消すためではなく、現実と向き合うための選択でした。
NIPTを検討する段階で強い迷いや不安を感じるのは、とても自然な反応です。重要なのは「受ける・受けない」の正解を探すことではなく、自分がどこまで知りたいのか、知った結果をどう受け止めたいのかを整理することです。
検査当日から結果を待つまで
検査当日、Aさんが想像していたよりもNIPTはあっけないものでした。受付を済ませ、簡単な説明を受けたあと、行われたのは通常の採血のみ。所要時間も短く、「これで本当に分かるのだろうか」と拍子抜けした一方で、採血が終わった瞬間に現実感が一気に押し寄せたといいます。
問題はその後でした。結果が出るまでの約1〜2週間、Aさんは「待っている時間が一番つらかった」と振り返ります。日中は仕事や家事で気を紛らわせられても、夜になると「もし陽性だったら」という考えが頭を離れませんでした。インターネットで体験談を読み漁り、安心する情報と不安をあおる情報の間を行き来してしまったとも語っています。
一方で、「結果が出るまでは何も変えられない」と意識的に情報から距離を取るようにした時期もありました。Aさんにとってこの待機期間は、結果そのものよりも、自分の気持ちと向き合う時間だったのかもしれません。
NIPTにおいて、心理的に最も負担が大きいのは結果待ちの期間です。情報収集は大切ですが、不安が強まる場合は一度距離を置くことも必要です。結果待ちの不安は異常ではなく、多くの妊婦さんが同じように感じています。
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結果を受け取ったあとの本音
結果が出た日、Aさんはスマートフォンに届いた通知をすぐには開けなかったと言います。「知りたい気持ち」と「知るのが怖い気持ち」が同時に押し寄せ、数時間画面を見つめたまま動けなかったそうです。深呼吸をして結果を確認すると、「低リスク」の文字が目に入りました。その瞬間、強い安堵感と同時に、張りつめていた緊張が一気にほどけ、涙が止まらなかったと振り返ります。
一方で、安心したあとに「ここまで不安になるなら、受けなくてもよかったのでは」と自問した時期もあったそうです。しかし時間が経つにつれ、Aさんの気持ちは少しずつ整理されていきました。「結果がどうであっても、自分は逃げずに考えようとしていた。その事実が、今の私を支えている」と話します。
AさんにとってNIPTは、単に結果を得る検査ではなく、親としての覚悟を自分なりに形づくるプロセスでした。「正解かどうかは分からない。でも、あの時の自分の選択を否定する気はない」と、穏やかな表情で語っています。
NIPTの結果を受け取ったあとの感情は、結果にかかわらず複雑になりがちです。安心と同時に戸惑いや後悔を感じることも、決して珍しくありません。大切なのは、結果そのものよりも、その過程でどれだけ自分なりに考え、納得しようとしたかです。
体験談から考える、あなた自身の選択
NIPTを受けた人の体験談から見えてくるのは、検査そのものよりも、「受けるかどうかを考え、結果と向き合う過程」が大きな意味を持っているという点です。不安や迷い、葛藤を抱えながらも、多くの方が自分なりの理由を探し、選択をしています。体験談は、同じ状況にいる妊婦さんにとって気持ちを重ねるヒントになりますが、そのまま自分に当てはめる必要はありません。
大切なのは、「受ける・受けない」どちらが正しいかではなく、自分が納得できる選択であるかどうかです。NIPTは未来を決める検査ではなく、考えるための情報の一つにすぎません。迷いがあるときは、ご自身の価値観を大切にした判断をしていただければと思います。
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著者
医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system
Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。