【医師が解説】次世代DNA配列分析装置を用いたNIPTの検査方法

2025.07.10

はじめに

出生前検査を検討する妊婦さん

出生前検査を検討する際、検査の「正確さ」と「安心感」はとても大切なポイントです。近年では、母体からの採血のみで胎児の染色体異常リスクを推定できる「新型出生前検査(NIPT)」が注目されています。
特に、次世代DNA配列分析(Next Generation Sequencing: NGS)を用いたNIPTは、従来技術と比べて精度や網羅性が高く、世界中で標準的な手法として広まっています。※1

本記事では、NGSの仕組みと他技術との違い、検査を受ける際の注意点についてわかりやすく解説します。

NGSの仕組み──胎児DNAを高精度に読み解く技術

NGSの仕組み NGS(次世代DNA配列分析)は、膨大な量のDNA断片を一括で解析する技術です。NIPTでは、母体血中に含まれる胎児由来のcfDNA(cell-free DNA)を採取し、そこから胎児の染色体異常の兆候を調べます。
NGSではまずcfDNAを増幅し、その一つひとつを小さな断片(リード)ごとに細かく読み取ります。その後、それぞれのDNAが人間のどの染色体に属しているかをコンピュータで照らし合わせていきます。各染色体由来のDNA量を統計的に解析し、たとえば21番染色体が過剰であれば21トリソミー(ダウン症)の可能性が高いと推定されます。
この過程には、エラー補正やアルゴリズムによる統計解析が組み込まれており、わずかなDNA量でも高精度な検出が可能です。従来の検査と比較して、より非侵襲的かつ網羅的に異常の兆候を捉える能力を持つのが、NGSの大きな特長です。

NGS・マイクロアレイ・PCR──出生前検査技術の比較

DNAの解析するコンピューター 出生前検査には複数の技術があり、それぞれ特性と適用範囲が異なります。代表的な手法には、NGS(次世代シーケンス)マイクロアレイ解析リアルタイムPCRが挙げられます。

リアルタイムPCRは、特定の遺伝子や染色体領域に絞って増幅・測定する技術です。検出速度が速くコストも低いというメリットがありますが、ターゲット以外の異常は検出できないため、検査範囲に限界があります。

マイクロアレイ解析は、DNAチップを用いて数十万か所以上の染色体領域を検査できるため、微細な欠失(マイクロディリーション)や微細な重複(マイクロデュプリケーション)などの構造異常に強いのが特徴です。※2ただし、NGSに比べ検査の感度(センシティビティ)が落ちるために、cfDNAのような微量のサンプルには不向きです。
これに対し、NGSはcfDNAのような微量のDNAからでも、全染色体を網羅的に解析できるため、母体血中から非侵襲的に胎児の染色体数異常を推定するには最も適した技術とされています。

妊娠週数や体質が影響?──NGSの精度と確定診断の重要性

NIPTの留意点 NGSを用いたNIPTは高精度ですが、検査結果は妊婦の身体的条件や妊娠週数に左右される場合があります。
まず、検査が可能なのは妊娠10週以降です。これは、母体血中のcfDNAが、10週頃から一定濃度に達するためです。それ以前に検査を行うと「判定不能」になる可能性があります。※3
また、母体のBMIが高い場合、母体由来のDNAに対して胎児由来のcfDNAの割合が低下するため、検出感度が下がる可能性があります。※4双子の妊娠や月経周期が不規則な場合も、検査結果の信頼性に影響を及ぼす要因です。
さらに重要なのは、NIPTがあくまでスクリーニング検査にすぎないという点です。母体血中に流れ出た胎児のDNAを解析するため、高リスクという結果が出たとしても胎児に必ずしもその疾患があることを示す結果ではありません。そのため、NIPTで高リスクの判定が出た場合には、羊水検査や絨毛検査といった確定診断を行う必要があります。羊水検査や絨毛検査の確定診断では胎児の細胞を直接調べるため、染色体異常の有無を正確に診断することができます。
NGSによるNIPTは有力なスクリーニング検査ですが、万能ではないこと、そして確定診断と連携して初めて十分な判断材料となることを、妊婦自身が理解しておくことが大切です。

エビデンスに基づいた安心の選択を

エビデンスに基づいた安心の選択を

NGSを用いたNIPTは、胎児の染色体異常を早期に、かつ非侵襲的に評価できる有力なスクリーニング検査です。技術的には非常に高精度であり、他の手法と比較しても多くのメリットがあります。

一方で、妊娠週数や母体条件による限界、そして確定診断が必要な場面があることも、正しく理解しておく必要があります。
そして、何よりもNIPTの結果が出た後の対応こそが、妊婦とご家族にとって最も重要なポイントです。科学的根拠に基づいた検査選びと、適切な医療サポートを受けていただくことがご本人とご家族にとっての安心につながります。

参考文献

※1:Bianchi DW, Chiu RW. Sequencing of Circulating Cell-free DNA during Pregnancy. N Engl J Med. 2018
※2:Wapner RJ, Martin CL, Levy B, et al. Chromosomal microarray versus karyotyping for prenatal diagnosis. N Engl J Med. 2012
※3:Benn P, Borell A, Chiu R, et al. Position statement from the Aneuploidy Screening Committee on behalf of the Board of the International Society for Prenatal Diagnosis. Prenat Diagn. 2015
※4:Wang E, Batey A, Struble C, et al. Gestational age and maternal weight effects on fetal cell-free DNA in maternal plasma. Prenat Diagn. 2013

国内最安の費用で8項目の遺伝的疾患リスクを検査「新型出生前検査(NIPT)」

遺伝子検査専門機関seeDNAの「新型出生前検査(NIPT)」

お腹の赤ちゃんの遺伝性疾患リスクがわかる

seeDNAの安心サポート

seeDNAは、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
お腹の赤ちゃんの疾患リスクや親子の血縁関係、パートナーの浮気などにお悩みでしたら、遺伝子検査の専門家が、しっかりとご安心いただけるようサポートいたしますのでお気軽にお問合せください。

【専門スタッフによる無料相談】

seeDNAのお客様サポート

ご不明点などございましたら
弊社フリーダイヤルへお気軽にご連絡ください。


\土日も休まず営業中/
営業時間:月~日 9:00-18:00
(祝日を除く)

著者

医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)


医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。