【医師が解説】検査が受けられる妊娠期間より早い/遅い時期に検査を受けたら?

2025.10.09

検査が受けられる妊娠期間より早い/遅い時期に検査を受けたら?

新型出生前検査(NIPT)を検討されている妊婦さんの中には、「なぜ検査時期が妊娠10週から16週に限定されているのだろう?」と疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。つわりの症状が落ち着く前に検査を済ませたい、あるいは妊娠に気づくのが遅れて推奨時期を過ぎてしまったなど、さまざまな事情があるかと思います。

本記事では、医学的エビデンスに基づいて、NIPTの推奨時期がなぜ設定されているのか、そして推奨時期以外に検査を受けた場合にどのような影響があるのかを、分かりやすく解説します。検査のタイミングを正しく理解することで、より安心して検査を受けていただくための参考にしていただければ幸いです。

妊娠10週目以前に検査を受けたら?

妊娠10週目以前に検査を受けたら?

NIPTを正確に実施するためには、母体血中の胎児由来DNA(cell-free fetal DNA: cffDNA)の割合が最低4%必要とされています(1)。
妊娠初期におけるcffDNA濃度は週数とともに増加し、妊娠10週以降でこの基準を満たすようになり、妊娠11週から13週の時期では、胎児DNA濃度の中央値は約10%に達することが報告されています(1)。

妊娠9週以前ではcffDNA濃度が不十分なため、検査結果が出せず再検査となる可能性が高くなります。その場合、再度採血が必要となり、妊婦さんの心理的負担や経済的負担が増すことになります。

また、早期に検査を実施した場合、偽陰性率(陰性「低リスク」と判定されたが実際には異常があるケース)が上昇する可能性も指摘されています(2)。
これはcffDNA濃度が低いことにより、検査の精度が低下するためです。 したがって、妊娠10週以降まで待つことで、検査の精度を最大限に高め、確実な結果を得ることができるのです。

妊娠16週目以降に検査を受けたら?

妊娠16週目以降に検査を受けたら?

一方、妊娠16週以降にNIPTを受けることは技術的には可能です。cffDNA濃度も妊娠週数とともに増加するため、16週以降でも検査結果の正確性には大きな問題はありません。

しかし、NIPTの推奨時期が16週までとされている主な理由は、検査後の対応に関わる時間的制約にあります。NIPTはスクリーニング検査であり、高リスクの結果が出た場合には羊水検査や絨毛検査などの確定的検査を受けることが推奨されます。確定的検査の実施とその結果判明、さらにその後のカウンセリングや意思決定には数週間を要します。

そのため、妊娠16週を過ぎてからNIPTを実施すると、仮に高リスク結果が出た場合、確定的検査を経て最終的な診断が確定するまでに妊娠20週を超えてしまう可能性があります。妊娠週数が進むほど、その後の選択肢や医学的介入の余地が限られてくるため、十分な時間的余裕を持って検査を受けることが重要です。

また、妊娠後期になるほど胎児への愛着が深まり、検査結果によって重大な決断を迫られた際の心理的負担も大きくなります。早めの時期に検査を受けることで、より冷静に情報を整理し、ご家族とじっくり相談する時間を確保できます。

まとめ

赤ちゃんが生まれてくるのを楽しみにしている妊婦さん

NIPTの推奨時期が妊娠10週から16週に設定されているのは、科学的根拠に基づいた合理的な理由があります。10週以前ではcffDNA濃度が不十分で検査精度が低下し、16週以降では検査後の対応に必要な時間が不足する可能性があります。

推奨時期内に検査を受けることで、最も高い精度で結果を得られるだけでなく、その後の選択肢について十分に考える時間を確保することができます。NIPTは妊婦さんとそのご家族が安心して妊娠期間を過ごすためのサポートツールです。適切なタイミングで検査を受けることが、その価値を最大限に活かすことにつながります。

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【参考文献】

※1:Ultrasound Obstet Gynecol. 2013 Feb
※2:MedlinePlus Genetics, Bethesda (MD): National Library of Medicine (US), 2021.

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著者

医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)


医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。