【医師が解説】NIPTでわかるトリソミーとは?
2026.01.03
NIPTを検討されている妊婦さんの多くが、「トリソミー」という言葉に不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。医療機関で説明を受けても、専門的な内容が多く、十分に理解できないまま検査を受けるか悩んでいる方も少なくありません。
トリソミーとは、染色体の数に変化が生じる状態のことです。NIPTでは主に21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)の3つを検出しますが、これらが具体的にどのような状態なのか、検査の精度はどの程度なのか、正しく理解することが大切です。
本記事では、医師の視点から国内外の学術論文に基づくエビデンスをもとに、トリソミーについてわかりやすく解説します。正しい知識を持つことで、ご自身とご家族にとって最適な選択ができるようお手伝いいたします。
トリソミーの基礎知識 – 染色体数の変化とは
正常な染色体の構成
ヒトの細胞には通常、46本の染色体が存在し、これらは23対を形成しています。このうち22対は常染色体、1対は性染色体(XX または XY)と呼ばれます。染色体には遺伝情報が詰まっており、私たちの身体の設計図として機能しています。
トリソミーとは何か
トリソミーとは、本来2本であるべき特定の染色体が3本になっている状態を指します。「トリ(tri)」は「3」、「ソミー(somy)」は「染色体」を意味する医学用語です。つまり、46本ではなく47本の染色体を持つことになります。
トリソミーが生じるメカニズム
トリソミーの多くは、卵子や精子が作られる過程(減数分裂)で染色体の分配ミス(不分離)が起こることで発生します。
通常、減数分裂では染色体が正確に分かれて、卵子や精子は23本の染色体を持ちますが、この過程で染色体対が正しく分離せず、一方の細胞に24本、もう一方に22本が配分されることがあります。24本の染色体を持つ卵子や精子が受精すると、結果として47本の染色体を持つ胚が形成されます。
母体年齢との関連
トリソミーの発生頻度は母体年齢と強い相関があることが知られています。
特に35歳以上になると発生リスクの上昇が顕著になります。これは卵子の老化に伴い、減数分裂時のエラーが起こりやすくなるためと考えられています[1]。例えば、21トリソミー(ダウン症候群)の発生頻度は、20歳の妊婦では約1/2,000ですが、35歳では約1/365、40歳では約1/100にまで上昇します[2]。
すべてのトリソミーが出生に至るわけではない
理論的には、どの染色体でもトリソミーは生じ得ますが、ほとんどのトリソミーは胎児の発育に重大な影響を及ぼすため、妊娠初期に自然流産となります。
出生まで至るトリソミーは、主に13番、18番、21番染色体、そして性染色体のトリソミーに限られています。これは、これらの染色体が比較的小さく、遺伝子の数が少ないため、生命維持に与える影響が他の染色体と比べて相対的に小さいためと考えられています。
NIPTで検出可能な主な3つのトリソミー
NIPTでは主に3つの常染色体トリソミーを検出対象としています。それぞれの特徴と臨床的な意義について解説します。
21トリソミー(ダウン症候群)
21番染色体が3本存在する状態で、トリソミーの中で最も発生頻度が高く、出生700人あたり約1人の割合で見られます[2]。
特徴的な顔貌、筋緊張低下、先天性心疾患、知的発達の遅れなどが見られますが、その程度は個人差が大きいことが知られています。医療やリハビリテーションの進歩により、現在では期待余命はここ数十年で著しく延長しています。中には80代まで生存するケースもあり[2]、多くの方が地域社会で生活されています。
18トリソミー(エドワーズ症候群)
18番染色体が3本存在する状態で、出生約6,000人に1人の頻度で発生します[3]。
重篤な心疾患、消化器系の異常、中枢神経系の形成不全などを伴い、自然流産も多いとされています。出生児の約50%が生後1週間以内に、90%以上が1歳までに亡くなると報告されていますが[3]、近年の医療技術の進歩により、長期生存例も報告されるようになっています。
13トリソミー(パトウ症候群)
13番染色体が3本存在する状態で、出生約10,000人に1人の頻度で発生します[4]。
全前脳胞症などの重篤な脳の形成異常、口唇口蓋裂、多指症、重度の心疾患などを伴います。18トリソミーと同様に予後は厳しく、約80%が生後1か月以内に、90%以上が1歳までに亡くなると報告されています[4]。
性染色体のトリソミー
NIPTでは性染色体(X染色体、Y染色体)のトリソミーも検出可能です。代表的なものとして、XXX(トリプルX症候群)、XXY(クラインフェルター症候群)、XYY症候群などがあります。
これらは常染色体トリソミーと比較して身体的・知的な影響が軽度であることが多く、診断されずに生涯を過ごす方も少なくありません。
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NIPTによるトリソミー検出の精度と限界
主要3トリソミーにおける検出精度
NIPTで最も精度が高いとされるのは21トリソミー(ダウン症候群)です。
前述したように複数の大規模研究をまとめたレビューでは、感度は99%以上、特異度も99.9%以上と、ほぼ誤判定のないレベルに近い精度が示されています[5]。
18トリソミー(エドワーズ症候群)についても非常に高い精度が報告されていますが、21トリソミーと比べると感度がわずかに低く、約97.9%とされています。
それでも特異度は99%以上と高く、結果の信頼性は十分に保たれています[5]。
13トリソミー(パトウ症候群)は、感度、特異度ともに99%以上とされる一方で、研究ごとの数値のばらつきがやや大きい点が特徴です[5]。
このため、21トリソミーや18トリソミーに比べると、検査精度に一定の課題が残ると考えられています。
NIPTは「非確定検査」である
NIPTは非常に精度の高いスクリーニング検査ですが、確定診断ではありません。陽性結果が出た場合は、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査による染色体検査が必要です。
これらの検査では胎児の細胞を直接採取して染色体を調べるため、確定診断が可能になります。
NIPTの限界
NIPTでは検出できない染色体異常も存在します。均衡型転座と呼ばれる染色体の入れ替わりで総量は変わらない異常や、モザイクと呼ばれる一部の細胞だけが異常を持つ状態の一部は検出が困難です。
また、近年では一部の微細欠失症候群を検出できるNIPTも登場していますが、すべての微細な染色体異常を網羅できるわけではなく、検査によって対応範囲が異なります。
さらに、双胎妊娠、母体の肥満などの条件下では検査精度が低下することが知られています[6]。まれに胎盤と胎児の染色体構成が異なる「胎盤モザイク」により、偽陽性や偽陰性の原因となることもあります。
トリソミーについて正しく理解し、最適な選択を
トリソミーは特定の染色体が3本になる染色体の数的異常であり、NIPTでは主に21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)の3つを高精度に検出することができます。検査の感度・特異度は非常に高く、有用なスクリーニング検査として確立されています。
ただし、NIPTはあくまでもスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。陽性結果が出た場合でも、偽陽性の可能性があるため、羊水検査などの確定的検査が必要となります。また、NIPTでは検出できない染色体異常も存在することを理解しておく必要があります。
検査結果の解釈には、母体年齢や個別のリスク要因を考慮した専門医のカウンセリングが不可欠です。正しい知識を持ち、ご自身とご家族にとって最適な選択をしていただければと思います。
\ダウン症や性染色体のリスクがわかる/
【参考文献】
[1]Acta Obstetricia et Gynecologica Scandinavica, 2023 Nov.[2]MSDマニュアル ダウン症候群
[3]MSDマニュアル 18トリソミー
[4]MSDマニュアル 13トリソミー
[5]BMJ Open, 2016 Jan.
[6]Prenatal Diagnosis, 2019 Dec.
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著者
医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system
Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。