【医師が解説】NIPTと羊水検査の違いは?

2026.01.18

妊娠中の出生前検査について調べていると、NIPT(新型出生前検査)や羊水検査といった言葉を目にされることがあると思います。
どちらも赤ちゃんの染色体異常を調べる検査ですが、その性質や役割は大きく異なります。

出生前検査を受けるかどうか、どの検査を選ぶかは、妊婦さんとご家族にとって重要な選択です。それぞれの検査の特徴を正しく理解することで、ご自身に合った選択をしていただけます。

本記事では、医学的なエビデンスに基づいて、NIPTと羊水検査の違いをわかりやすく解説します。検査を検討されている方の判断材料として、お役立ていただければ幸いです。

NIPTと羊水検査それぞれの位置付け

NIPTと羊水検査それぞれの位置付け

出生前検査は、その性質により「非確定的検査(スクリーニング検査)」と「確定的検査」の2つに分類されます。
NIPTは非確定的検査に分類されます。母体の血液中に含まれる胎児由来のDNA断片を分析することで、染色体異常の可能性を評価します。あくまで「リスクが高いか低いか」を判定する検査であり、陽性となった場合でも確定診断のためには羊水検査などの確定的検査が必要です。
一方、羊水検査は確定的検査に位置付けられます。お腹に針を刺して羊水を採取し、その中に含まれる胎児の細胞を培養して染色体を直接調べます。この方法により、染色体異常の有無を確定的に診断することができます。
つまり、NIPTは羊水検査の前段階として、リスクを評価するための検査という役割を担っているのです。

NIPTと羊水検査の違い〜精度〜

NIPTと羊水検査の違い〜精度〜

検査精度の観点から両者を比較すると、それぞれに特徴があります。
NIPTは21トリソミー(ダウン症候群)に対して非常に高い検出率を示します。大規模研究によると、21トリソミーの検出率は99.7%、偽陽性率は0.04%と報告されています(1)。18トリソミーでは検出率97.9%、偽陽性率0.04%、13トリソミーでは検出率99.0%、偽陽性率0.04%という高い精度が示されています(1)。

ただし、NIPTは非確定的検査であるため、陽性的中率(陽性と判定された場合に実際に異常がある確率)は、母体年齢や対象疾患によって変動します。35歳以上の妊婦における21トリソミーの陽性的中率は約90%とされていますが、若年妊婦ではこの値は低下します(2)。

羊水検査は染色体を直接観察するため、検出率はほぼ100%とされています。培養細胞の染色体分析により、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーだけでなく、その他の染色体異常や構造異常も検出可能です。
一方、NIPTも技術の進歩により、従来の主要トリソミーだけでなく、性染色体異数性や一部の微小欠失症候群など、検出対象となる先天異常の範囲が拡大しています。

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NIPTと羊水検査の違い〜安全性〜

NIPTと羊水検査の違い〜安全性〜

安全性の面では、両検査には明確な違いがあります。
NIPTは母体からの採血のみで実施できるため、非侵襲的な検査です。流産のリスクはなく、母体および胎児への直接的な危険性はありません。妊娠10週以降から実施可能で、身体的な負担が少ないことが大きな利点です。
一方、羊水検査は侵襲的検査に分類されます。腹部に針を刺して羊水を採取するため、流産のリスクが伴います。大規模研究では、羊水検査に関連した流産率は約0.1%程度と報告されています(3)。以前は1%程度のリスクとされていましたが、超音波ガイド下での手技の向上により、近年ではリスクが低下しています。

羊水検査では、流産以外にも羊水漏出、子宮内感染、出血などの合併症の可能性があります。ただし、適切な手技と管理下で行われる場合、重篤な合併症の発生率は非常に低いとされています。
安全性の観点からは、NIPTは身体的リスクがほとんどない検査といえます。一方で、羊水検査には一定のリスクがありますが、確定診断が必要な場合には不可欠な検査となります。

まとめ

まとめ

NIPTと羊水検査は、どちらも胎児の染色体異常を調べる検査ですが、その性質と役割は大きく異なります。
NIPTは非侵襲的で安全性が高く、高い精度でリスクを評価できるスクリーニング検査です。妊娠初期から受けることができ、染色体異常の可能性を知る第一歩として有用です。ただし、高リスクとなった場合は確定診断のために羊水検査が必要となります。

羊水検査は侵襲的検査ですが、確定診断が可能という点で重要な役割を果たします。わずかながら流産のリスクを伴いますが、確実な診断を得ることができます。
このように、NIPTと羊水検査は「優劣」で比較するものではなく、それぞれ異なる役割を持つ検査です。まずNIPTでリスクを知り、必要に応じて羊水検査で確定診断を行うという流れは、現在の出生前診断における基本的な考え方といえます。それぞれの検査の特徴を正しく理解し、ご自身の価値観や状況に合った選択をすることが何より大切です。

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【参考文献】

(1)Ultrasound in Obstetrics & Gynecology, 2017.
(2)Journal of Obstetrics and Gynaecology, 2023.
(3)Ultrasound in Obstetrics & Gynecology, 2019.

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著者

医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)


医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。

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