【医師が解説】NIPTとNIPPTの違いとは

2025.10.22

NIPTとNIPPTの違いとは

妊娠中の出生前検査について調べていると、「NIPT」や「NIPPT」といった似たような名前の検査を目にすることがあるかもしれません。
アルファベット一文字違いのこの二つの検査は、実は全く異なる目的と内容を持つものです。

出生前検査を予定されている妊婦さんにとって、これらの検査の違いを正しく理解することは、適切な選択をするための第一歩となります。本記事では、医師の視点からNIPTとNIPPTの違いについて分かりやすく解説します。

NIPTとは

NIPTとは

新型出生前診断:NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing)は、「無侵襲的出生前遺伝学的検査」と呼ばれ、胎児の染色体異常のリスクを調べる検査です。母体血中の胎児由来cell-free DNA(cfDNA)を、次世代シークエンス技術(NGS)を用いて分析し、染色体異常を検出します。

一般的な検査対象は21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトー症候群)などの染色体数的異常ですが、検査機関によってターナー症候群(XO)、クラインフェルター症候群(XXY)、トリプルX症候群(XXX)、XYY症候群などの性染色体異常や、1?22番染色体の全染色体異数性なども検査可能です。

検査の特徴として、妊娠10週から実施可能であり、母体の血液採取のみ(約20mL)で行えるため、羊水検査や絨毛検査などの侵襲的検査と比較して流産のリスクはほぼありません。また、感度は99%以上、特異度も99%以上と高い精度を誇ります [1]。

ただし、NIPTはあくまでもスクリーニング検査であり、陽性結果が出た場合には確定診断のための羊水検査や絨毛検査などが必要となります。

\お腹の赤ちゃんの遺伝性疾患リスクがわかる/

NIPPTとは

NIPPTとは

出生前DNA鑑定:NIPPT(Non-Invasive Prenatal Paternity Testing)は、「非侵襲的出生前親子鑑定」と呼ばれ、胎児と父親候補の生物学的な父子関係を確認する検査です。

NIPTと同じく母体血中のcfDNAを利用し、NGSで多数のSNP(一塩基多型)を解析することで、父親候補のDNAと比較します。父子関係が肯定される場合は父権肯定確率99.9%以上、否定される場合は0%という明確な判定が得られます [2]。
親子の血縁関係を認めるための最低父権肯定確率は検査機関によって違いますが、国内では99.9%ではなく、99.99%を基準とする検査機関もあります。

なお、日本産婦人科学会は、医療目的でない親子鑑定のために羊水検査や絨毛検査などの侵襲的医療行為を行うことを推奨していません(法的措置の場合を除く) [3]。このため、出生前親子鑑定を希望する場合、非侵襲的な母体血液を用いた方法が選択肢となります。
妊娠6週頃から検査可能で、母体の血液と父親候補の検体(口腔粘膜、毛髪、歯ブラシなど)で実施できます。40%以上の出産が非婚姻状態で行われるアメリカでは産婦人科学会も推奨される一般的な検査です [4]。
養育費や相続権などの法的問題、あるいは個人的な疑問解決のために利用されています

\お腹の赤ちゃんの父親がわかる/

それぞれの検査の類似点と異なる点

それぞれの検査の類似点と異なる点

類似点

両検査には以下の共通点があります。

検査方法: 少量のDNAサンプルから膨大な遺伝情報を読み取ることが可能な次世代DNA配列分析装置(NGS)を用います。2010年頃、検査が開発された当時はマイクロアレイという検査方法を用いる場合もありましたが、現在は微量DNA解析に優れるNGSが使われています。
検査対象: 母体血中の胎児由来cfDNAを分析対象とします。胎盤から母体血中に流出したcfDNAは妊娠週数とともに増加しますが、非常に壊れやすく採血後1時間程度で分解されるため、特殊な採血管を用います。
検査に伴う侵襲度: 非侵襲的検査のため胎児・母体へのリスクが極めて低く、従来の羊水検査と比較して流産リスクがほとんどありません。

異なる点

一方で、重要な違いも存在します。

検査目的: NIPTは胎児の染色体異常の有無を評価しますが、NIPPTは親子関係の確認が目的で、胎児の健康状態に関する情報は一切提供しません。
分析内容: NIPTは各染色体由来のDNA断片量を測定して、特定の染色体に由来するDNA断片の数が通常よりも多いか少ないかを調べることで、染色体数の異常の可能性を判定します。対してNIPPTは多数のSNPを比較分析し、父親候補のDNAと比較することで、親子の血縁関係を判定します。
医療での位置づけ: NIPTは医療行為として位置づけられ、国際的に推奨される出生前スクリーニング検査です。日本医学会による認証制度も設けられ、胎児の健康状態を医学的に評価する目的で実施されています。

対してNIPPTは、医療行為ではなく親子関係の確認を目的とした鑑定サービスであり、法的・個人的理由で利用される検査です。胎児の疾患や健康に関する医学的情報は一切提供されません。

まとめ

まとめ

NIPTとNIPPTは、名称こそ似ていますが、目的も内容も全く異なる検査です。
NIPTは胎児の染色体異常を検出するスクリーニング検査であり、胎児の健康状態を医学的に評価することを目的としています。高い精度と安全性を兼ね備え、多くの妊婦さんに選択されている検査です。
一方NIPPTは、医療行為ではなく生物学的な親子関係を確認するための鑑定サービスです。胎児の健康に関する情報は提供されず、法的・個人的な理由で親子関係を明らかにする必要がある場合に利用されます。

どちらもNGSを用いた非侵襲的検査という点では共通していますが、それぞれが全く異なるニーズに応えるものです。
NIPTやNIPPTを検討される際は、まずご自身が何を知りたいのか、その目的を明確にすることが大切です。胎児の健康状態を知りたいのであればNIPT、親子関係を確認したいのであればNIPPTというように、目的に応じた適切な検査を選択していただければと思います。

本記事が、皆様の検査選択の一助となれば幸いです。

\お腹の赤ちゃんの遺伝性疾患リスクがわかる/

\お腹の赤ちゃんの父親がわかる/

【参考文献】

[1] N Engl J Med. 2015 Apr.
[2] Genet Med. 2013 Jun.
[3] 日本産婦人科学会
[4] American Pregnancy Association

seeDNA遺伝医療研究所の安心サポート

seeDNA遺伝医療研究所は、国際品質規格ISO9001とプライバシー保護のPマークを取得している安心と信頼のDNA鑑定・遺伝子検査の専門機関です。
お腹の赤ちゃんの親子の血縁関係や疾患リスク、パートナーの浮気などにお悩みでしたら、遺伝子検査の専門家が、しっかりとご安心いただけるようサポートいたしますのでお気軽にお問合せください。

【専門スタッフによる無料相談】

seeDNA遺伝医療研究所のお客様サポート

ご不明点などございましたら
弊社フリーダイヤルへお気軽にご連絡ください。


\土日も休まず営業中/
営業時間:月~日 9:00-18:00
(祝日を除く)

著者

医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)


医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。